第2話

クリセンマムでは14歳になると宙舟という飛行石で浮かぶ小さな舟に乗り旅をするという風習がある。王族の子孫も同様に旅をするのだがトモルはハーレクインに飛行して来た。


 ハーレクインではクリセンマムの金貨も通用しない。その為にハーレクインでは価値のある宝石を売る商売をしていた。そんなときに出会ったのがミチルだった。



 ミチルはトモルの手にしていた宝石を輝いた瞳で手に取りその笑顔を見せた。すっかりこころ奪われたトモルはその中でとっておきの黄金色に光る宝石をただであげてその日から二人仲良く遊ぶようになった。


「ミチル、ミチルはこの世で一番魅力的な女の子だよ」


 そう言ってはミチルの手を取りキスをして商いも放り投げて一晩中遊んだ。ミチルも次第にその甘い言葉に幼いながらに心ときめかせていた。星が輝く中、ミチルは言った。


「トモル、トモルの国はどこにあるの?」

「向こうさ」


 トモルはそう指を天に伸ばした。


「お空、お空にあるの? 」

「違うよ、あの向こうさ」


 へぇとミチルは草むらに頬杖をつき星を眺めた。


「ミチル、ミチルは将来何がしたい? 」

「ミチルはねぇ、素敵な物語を書きたい」


 ミチルは首を横に振った。


「ミチルはねぇ、素敵なお話を自分で作りたいの」

「じゃあ、とっておきの話をいつか見せてよ」


 トモルは空に光る流星を掴むように手を伸ばすと、少し悲しい顔をした。


「ミチル、俺はもうそろそろ違う国へ行かなければいけない」


 ミチルはわっと声を出した。


「トモル、トモルはどこかへ行っちゃうの? 」

「うん、でも必ず迎えに来るよ」

「迎えに来たら、ずっとここで暮らせる? 」


 トモルは困ったように笑って言った。


「俺はクリセンマム」の王になって、ミチルは后妃になる」


 后妃の意味はミチルにはわからなかったが頷き、二人の小指は絡まった。その意味はミチルが大きくなってようやくっわかったのだ。

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