第三章
第1話
クリセンマムの東には古くから続く伝統の遺跡がある。遺跡には昔から受け継がれた、民謡の歌詞を綴った石板やおとぎ話の壁画がある。だがそればかりで遺跡の発掘に駆り出された多くの若者はそ意義を見いだせなかった。
それでもトモル様の仰せだ、長老様が仰ぐご意見だと信じて遺跡を掘った。
トモルは遺跡から宝石や小金が発掘されると民に振舞った。民はそれを喜んで売って街は潤いを見せた。トモルはその中で青い宝石を見つけると職人に磨かせた。職人は言った。
「その石はあれに似ていますね」
トモルは整った眉を挙げてその話を聞いた。職人は続ける。
「その石、あの伝説のおとぎ話に出てくる少女の首飾りにそっくりですな」
「あの、伝説の少女?」
まさか、とトモルは脳裏にアシュガの言葉をよぎらせた。職人はまだ話を続けようとする。
「もういい、わかった。ありがとう。これはミチルに送るよ」
ミチルの名前を聞いて大喜びをする宝石職人に多額な金の鉱石を渡して店を出た。トモルは思う、どうすればいいのだろうかと。そしてそれが運命ならばととうとう追い詰められてしまった。
★
トモルは机に向かっているミチルの姿を見て声を上げそうになったが古き記憶がよみがえり声を伏せた。ミチル、と声をかける。ビクリ、とミチルの肩がはねた。トモルはミチルの肩に手を置いて子供をなだめるように言った。
「小説はうまく進んでる? 」
ミチルは驚いた顔をしたがやがて穏やかに
「うん、久しぶりに書いたけど順調よ。早く書き上げたい。生きているうちに書いた中で一番と思える作品を」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます