第9話

「何を企んでいる・・・・・・」

 

 一歩一歩、トモルは近づいた。アシュガはまっすぐその瞳を見る。


「企んでいません、強いて言うなら」


 トモルはアシュガを睨んだ。アシュガが何と言うかわかってしまったのだ。


「強いて言うなら、なんだ」


 アシュガは笑った。


「いえ、なんでも。私は、ミチルの病気を治すためだけにやって参りました」


 トモルは息をのんだ。


「ミチルを、ミチルを治してくれるんだな? 」


 ええ、とアシュガは笑って見せた。トモルはため息をついてアシュガにクリセンマムでの医師の資格を授けた。アスターにはミチルの使いとしての称号を。




 その夜、トモルはミチルの眠っている顔を見つめた。


「ミチル、俺は怖い。ミチルを失うのも、誰かに奪われるのも」


 そしてその額に唇を寄せて、愛しさを瞳に浮かべた。


___そこに誰かの足音が近づいてくる。トモルは振り向く。アシュガだった。

アシュガはミチルのもとへたどり着くと、携えた医療器具を使って検診を始める。


「ミチルの病気は一体なんなんだ」


 アシュガはぶつぶつと何かを唱えるだけで、答えない。


「なんなんだ」


 はっきりとアシュガは言った。


「舟来りし頃、少女吐血せん」

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