第7話 誰が、どんなふうに語ってきたか
教習は、翌日の午後から開講することになりました。
とりあえず講師は私、教室は海碧屋の休憩所、そして生徒として、わらびさんの他に、ショート君も参加することになりました。この、中学生オペレーター候補は、ロボット作りが始まってから、一度一通り講義はしています。前回の復習、兼、助手として今度は参加したい……と彼は殊勝なことを言ってくれました。実際講義が始まってみれば、ショート君は船大工さんに呼び出されて、機体の調整等でちょくちょく抜け出すことになりました。クーラーの効いてないプレハブだから、朝からじゃなくてよかったよ、とわらびさんは言います。教室のコンディションの悪さもありますが、昼間は私が出張で塩釜に行ったり大船渡に行ったり、なかなか時間が取れないのです。
初日は夕立が降ったせいで、ムシムシと湿気はひどかったものの、気温が落ちて過ごしやすかったです。いつもの麦茶では味気ないからと、ショート君はパウダー式のスポーツドリンクを持ってきていました。彼のアドバイスに従って、梱包の半分ほどを水に溶かすと、グレープフルーツの爽やかな香気がたちました。
「さて。最初は座学です。というか、しばらく座学です。いや、ぶっちゃけ、オペレーター養成の八割近くの時間を座学にあてる予定です。知識確認のための小テストこそしませんが、居眠りだの途中退席だのは厳禁です。ある程度、ロボットそのものに対する知識がないと、アクシデント等に対処できないと思うので、まずは、搭乗用人型ロボットとは何か? という話から始めるんですけど。ま。原論とか、基礎論にあたる部分です。ううん。……どっから、始めたものやら」
「はーい。社長さん。もったいぶってないで、ちゃっちゃと始めてよ。時間がもったいないじゃない。せっかくのゲーターレード、ぬるくなっちゃうでしょ」
「はい、はい。ショート君のほうは、ついこの間まで小学生だった男の子なわけで、マンガやアニメの搭乗用人型ロボットに対する知識が豊富にありました。けど、いい年した女性であるわらびさんになると……」
「その、いい歳って、なによ」
「言葉のアヤです。というか、わらびさん、自分が、あんまりロボットアニメとかに興味ない人だってこと、まず、認めてください」
「いや。それを言うなら、大丈夫だし。あーし、心は男子小学生だし。胸の奥底には、かわいいホーケイのオチンチンが生えてるし」
ショート君が、ブーッと勢いよく、スポーツドリンクを吹き出しました。
「……まあ、そこまで言うなら。マジンガーℤから始まる搭乗用人型ロボットアニメの歴史や、ガンダム等の出現によるリアルロボットの系譜等、こまごました『流れ』についての説明は、省きましょう。講義一回目のテーマは、誰が、どんなふうに語ってきたか、です」
「目的語は、その、搭乗用人型ロボットを、だよね」
「そうです、わらびさん。最初に、アニメやマンガということに触れましたが、そもそも搭乗用人型ロボットの存在そのものが、最初に描写されたのがフィクションの世界であるという、当たり前について、確認しましょう。必ずしも少年向けエンターテインメントに限らず、大人向けの小説等を含めた、サイエンティフィックな物語、要するにSFの世界です。主人公たちがどんなきっかけでロボットに搭乗するか、とか、そのロボットは敵と戦う上でどんな武器や必殺技やギミックを持つか、とか、パイロットたちのトラウマは……等、ロボットそのものより、ロボットSF固有のテーマが、最初のロボットSF評論の中心話題としてありました。誰が語っているのか? その創作物の消費者、という常に、どんな評論にも登場する人たちを除けば、この段階に特徴的な評論者、『語る人』はプロデューサーにあたる人です。彼は、作品の質そのものだけでなく、売行きや消費者の反応も気にする人です。つまり、ロボットSFが男子小学生にウケる部分に、最も関心があり、語りたがるひとです」
「当たり前じゃないの?」
「当たり前です。でも、それが重要です。これから、次々に『語る人』のことを語っていきますが、『語る人』たちは、他の『語る人』たちが出てきても語ることをやめません。今の例でいえば、他の『語る人』が幾人も出てきても、プロデューサーその人が、自分の立場から語ることは止めない、ということです。つまり、段階がどんどん先にいくにつれて、語る人たちは、単調増加していくということです。さて。この、プラモデルや漫画本を売るための語りが変化する……いや、新たに他の評論家が参戦する画期的な事件がありました。リアルロボット系アニメの登場、具体的に言えば、ガンダムから始まる、『戦闘以外』のロボット描写にもこだわるようになったロボットSFの登場です。リアルロボット以前との顕著な差異は、ウィキペディア等、ネットにも大量の資料があるので、ここでは詳しく触れません。今、講義している内容に沿っていうと、このリアルロボットSFの登場で、『語る人』に仲間が加わりました。まず、その一。ディレクターにあたる人です。プロデューサーと違って、作品内容の担保を任されている彼は、ロボットそのものの在り方にこだわり、語ります。先ほど、戦闘うんぬん、ということを語りましたが、もともとのロボットアニメのメイン消費者、男子小学生の観点からすれば、たとえば、搭乗用人型ロボットの発進シークエンスあたりまでならともかく、パイロットの養成課程や消耗品パーツの換装、ロボットそのものの生産工程など等の『面白さ』は少しく難しいと思われます。そう、ディレクターという新しい『語り手』の参戦に伴い、創作物の消費者にも、このカウンターパートにあたる新規の語り手が参加することになります。具体的に言えば『大きなお友達』、大人のSFファン、ロボットオタク等と言われる人たちです」
「僕は、小学二年生くらいのときでも、リアルロボット好きだったです……」とショート君がつぶやきました。まあ、機械いじりが好きな少年も少なからずいるわけで、「努力・友情・勝利」以外にもロボットアニメの価値を見出す、マセた男の子もいるということなのでしょう。
「リアルロボット系アニメの出現によって、ディレクター以外にも、もう一者、評論に参加する人が出てきました。いや、出てくるという言い方は、正しくないのかもしれません。これまでも人知れず語ってはきたけれど、注目はされてこなかった。リアルロボット系アニメの出現によって、語り口がよりリアルになり、耳を傾ける人が出始めた。そんな語り手がいます。軍事マニアの人たちです。前二者の語り手、プロデューサーとディレクターの人たちは、まず語るべき作品、アニメや漫画等があって、ロボットを語ります。他方、軍事マニアの人たちは、基本的に、前提となる作品抜きの想定をします。つまり、現代の、今現在の兵器体系に搭乗用人型ロボットが加わるとして、どーなるとかと想定するのです。皮肉なことに、リアルロボット系アニメが出現したからこそ、軍事利用可能かどうか、真剣に検討してもいいんじゃないか、となったのに、ロボットの可能性がリアルに検討できるようになったからこそ、今現在の兵器体系・搭乗用人型ロボット技術では、兵器体系への参画は難しいんじゃないか、という論議になっているようです。たとえば、戦車の代わりにするとしても、体高が高すぎて敵方砲弾の恰好の的になってしまう、とか、コックピットの高さが高すぎれば、転んだ時に、二階建てや三階建てのビルから転落したのと同等の衝撃がパイロットに加わってしまう、などなどです。最初のところで説明した通り、リアルロボット系アニメは、戦闘以外のロボットの詳細を描くことから始まったのですから、現実の兵器体系へ組み込むのが難しいという検討結果は、皮肉なことかもしれません。
では、ここまでのまとめ。
その一。ロボットSFは、ロボット描写のリアリティが増すごとに、プロデューサー、ディレクター、そして軍事マニア等、それぞれの『語り口』が違う語り方をする人が、増えてきた。
その二。この評論に参加する人たちは、搭乗用人型ロボットが出てくる物語という商品作品から、ロボットそのものへと、語りのウエイトを移してきている」
「ねえ、社長さん。プロデューサーとか、ロボットファンとか、そういうのが、ロボットの操縦と何か関係があるわけ?」
「一般的なロボットうんぬんというより、海碧ロボットの存在意義と関係あるんですよ、わらびさん。先は長いんですから、あせらず講義は聞いてください。
さて、この語り口の変遷ですけど、実は文芸批評が形成・成立したときと話の流れが似ています。国語の教科書的には、小林秀雄の項目に、批評という分野を作った……と紹介されていて、こういう分野があるんだな、と知る人が大半だと思います。で、この『批評』、成立以前はというと、作品への寄り添い方が、今、搭乗用人型ロボットの語り方で説明している、プロデューサー的なところから、始まりました。要するに、作品が面白いか面白くないか、売れるか売れないか、作品宣伝と野次馬的関心がないまぜになったような語りから、評論はスタートしたのです。芥川賞直木賞を皮切りに、各種文学賞が整備されるようになったころから、ディレクター的な関心の評論が増えてきます。要するに、売行きうんぬんの前の、作品の良しあしです。いかに人間が描けているか、要するに登場人物のリアリティうんぬんという語り方は、今議論している流れでいうと、いかにもディレクター的なのです。そして、批評というジャンルの成立、小林秀雄になると、作品自体から離れ、語ることを、語るようになる。搭乗用人型ロボットの語りに比すと、軍事マニア、のポジションです。文体、という言い方をしますが、ロボットアニメの文脈から外れてしまったロボット同様、関心の矛先が、全く明後日のほうに行きます。90年代にかけて批評はどんどん先鋭化、現代思想の代替的になっていき、柄谷行人を頂点に、折り返しを迎えます。ロボットの語られ方、いや在り方も同様であって、リアルロボット的リアリティが頂点を極め、現実への可能性の検討がすみずみまで終わったところで、次の段階にいくことになります。そう、これは、それ以前の語りの範疇とは違った次元の話です。
すなわち、脳内シュミレートがいくら精緻を極めたところで、しょせんフィクションはフィクションに過ぎません。ノンフィクションの世界、そう、実際に乗れる搭乗用人型ロボットが現実のものになるのに至って、新しい語りの地平が切り開かれることになるのです」
「……僕が前に聞いた講義では、そういう話は、しなかったですよね」
「中学生には、まだ難しいかなと思ったから。ま、ショート君、分からない部分があるなら、遠慮なく質問してください」
「はーい。社長さん、いーい? 男子小学生向けロボットアニメ……ええっと、リアルでないロボットアニメのうちは、確かに、搭乗用人型ロボットって、戦闘向けだったかもしんないけど。その後、リアルロボットになってからは、戦わないロボットだって、出てきてるんじゃないの? 例えば、パトレーバーの警察ロボットとか、アニメじゃないけど、アメリカのSF映画『エイリアン』シリーズとかでも、それっぽい、作業用ロボットとか、出てきてるじゃない」
「ああ。戦闘用ロボットの亜種ですね。需要なポイントなんで、最後にまとめてお話するようになると思います。あ。あと、付け加えておくなら、今、こうして説明している、ロボットアニメの発展と、ロボットと評論の歴史というのは、かなり図式的に、本当の歴史の流れには目をつむって、まとめあげたものだ、ということを、心にとめておいてください。さきほどは、少年向けロボットアニメ⇒プロデューサー⇒リアルロボット系アニメ⇒ディレクターと、直線的に話が流れてきてますよ、的に講義をしましたけど、実際の流れはというと、かなり紆余曲折していますから。たとえば、リアルロボット系アニメが出てくる前から、ディレクター的な評論はありました。また、ロボットが転んだら、三階建ての高さのビルから落ちるのと同じ衝撃、というのは、軍事マニアというより、柳田理科雄という人の、『空想科学読本』あたりが初出じゃないかと思われます。あくまで、パイロット教習のために、かなり乱暴に枝葉を切り落として講義をしているんです。この分野で、もっと興味関心があるなら、『ウソも方便』まじりの、このダイジェスト講義は、いったん忘れてください。まとまった良本は少なからずありますから、あとで紹介しますよ。ええーっと……本論のほうは、どこまでいったんでしたっけ」
「搭乗用人型ロボットが、現実に出てきましたって、ところです」
「はい。そうでしたね。ショート君、よく覚えていました」
「一回、講義、受けてますから」
「……リアルロボットという言い方は、すでにロボットアニメのうちでリアリスティックな機体に与えられる名称として定着してしまっていますので、これと区別するために、クラタスやi-footだのの、実現化された搭乗用人型ロボットのほうを、便宜上、ノンフィクションロボットと呼んでおきましょう。さて、このノンフィクションロボットの登場によって、搭乗用人型ロボット評論に、新しい語り手が登場してくるとともに、従来の、プロデューサーやディレクターと言った人たちの語りが、少し変容……限定化してきました。
まず、新しい語り手、です。実際にロボットを設計製作した・しつつある工学者・研究者・発明家・町工場の社長さんたちと言った、エンジニアの人たちです。雑誌やテレビのインタビューでは、取材者のひとたちがうまく誘導等をしますので、彼らはフィクション上のロボットのことも、語ります。けれど、他の、プロデューサー等SFロボットを前提とした評論者と違うのは、彼らが、数学や物理学・工学の言葉、数式等を駆使して、ロボットをロボットたらしめる知見を語ることができる、ということです。以前、リアルロボット系アニメ出現時、従来の少年消費者たちでは面白さが理解できないディテールが増えるだろうという話をしましたが、エンジニアたちが語ることは、さらに一段、語りへの参加者を選別することになります。もちろん、数学や物理学の言葉を、普通の会話的に翻訳したあとの評論も、あるでしょう。しかし、いずれにせよ、彼らエンジニアと同じ土俵で語るには、ロボットにまつわる物語的な面白さというより、自然科学的・工学的な面白さを理解できる資質が必要になるでしょう」
ちなみに、時系列に沿って、これらの語られ方を追っていくと、マジンガーℤが70年代(プロデューサー的評論に相当)、ガンダムが80年代(ディレクター的に相当)、搭乗用でない、人型ロボットの出現が90年代(ホンダのアシモなど)、そしてi-foot等、搭乗用ロボットの出現が00年代です。
「プロトタイプの搭乗用ロボットが複数出回る今日このごろには、さらに新しい語り手が加わりました。パトロン、スポンサー等、資金を出し、同時にノンフィクションロボットの産業化をもくろむ人たちです。大企業、たとえばホンダやトヨタといった超巨大大企業は、自分たちで金を出して自分たちでロボット製造をしているので、スポンサー的な声明が大きく聞こえるわけではありません。今、このパトロン的スポンサー的評論の仕方をしているのは、実はエンジニアの人たちです。彼らは、研究や製造開発の資金を得んがために、スポンサーの人たちに向かって、実績や可能性の宣伝をして回っているのです。完成したロボットたちもあくまで試作機段階であって、未だにお金を産む段階ではないという相互了解があるからこそ、スポンサーさんたちは、あまり自分からやかましくは言わない……評論が活発にならないと言えます。この、スポンサーからみで、評論に真剣味が増していっているのは、同じロボットでも、搭乗用人型ロボットではなく、およそ人型はしていないけれども遠隔操作が可能なロボット、そして、人型ではあるけれど、搭乗できない、等身大のアンドロイド・ガイノイドといった機体の数々です。
契機はそう、東日本大震災です。
さきほどの時系列的図式にそって説明していけば、10年代こそ、このパトロン的スポンサー的『語り方』が、加わってきた時期と言えるでしょう。ちなみに、この語りの最大勢力は今現在、日本政府であり、特に経済産業省とその外郭団体であり、そして最大のスポンサーは、日本国民自身です。民間のプロジェクトが官営団体に吸い上げられたり、遠隔操作移動式のが福島原発の高放射線領域調査等に投入されたりしているのは、言語化していないメッセージであり、納税者の無言の圧力にたいして、結果で示そうとしているのだ、といえなくもありません。
さて、ここで……アンドロイドや遠隔操作移動式ロボットの話が出ましたので、ついでに、ちょっと寄り道していきましょう。
お話を簡単にするために、今まで語ってきたロボットたち、搭乗用人型ロボット、等身大人型ロボット(アンドロイド)、そして遠隔操作移動型ロボットに加え、従来、工場で使用されてきた機械の発展形、以前と同じ機械でも、コンピューター等『頭脳』がついて『スマート』になった機械類を、産業用ロボットと呼んでおくことにします。ベルトコンベアーにそって並んでいる機械類を、単なる機械でないロボットと呼ぶ場合、どこからがロボットで、どこからがロボットでないか線引きが必要ですが、まずその基準の話。ここでは、労働者が監視すること以外の操作はせずとも、ある程度自立的に労働者の作業を代替する機械、ということにしておきましょう。日本政府は、産総研のHRP-4C等等身大人型ロボットでのデモンストレーションをしていますが、ロボット政策室等の発表広報等を閲覧するに、政策対象として、ロボット側からの分類で見れば、アンドロイドタイプというより、遠隔操作移動型ロボットや、産業ロボットをターゲットにしているように思われます。急速に力をつけてきた中国への対抗という対外競争的要因の他、労働者肉体的負担の軽減等が主な理由として挙げています。では、先にあげたロボットの四類型、搭乗型人型ロボット、アンドロイド、遠隔操作移動型、そして産業ロボットのいずれもが、たとえば経産省のロボット戦略にそうものなのか、考えます。おそらく、すべて、という答えは間違っているだろう、というのが私の推論です。
経営者が会社(たとえば、海碧屋のような製造業で工場運用)を経営する際、一般的に念頭に思い浮かぶリソースとして、人間労働力、設備機械、そして資本という三要素があります。各々のロボットの導入は、これらリソースの節約・開発発展、そしてアウトプットの質・量ともの向上のためになされる、というのを前提条件として、考えていきます。
まず、人間労働の代替として、産業用ロボットが投入されるというのは、今更説明するまでもないことでしょう。ここで、他の類型的ロボットとの比較で言えば、おそらく産業用ロボットは、同一作業工程の反復という点においては、アンドロイドタイプのものより、作業スピードや作業密度、作業コスト節約や、こなせる工程の複雑さにおいて、優れているだろう、と推測できます。これは、汎用タイプの機械と特化タイプの機械を同一条件で競争させた場合、つまり機械の調達運用コストや投入される電力やエンジン等の動力源が同一種だった場合、余分な機能にリソースを割かない分、特化タイプのほうが高いパフォーマンスを発揮するだろうという、当然の推論に基づくものです。
遠隔操作移動型ロボットの強みは、生身の人間が作業困難な過酷な環境でパフォーマンスできること、です。作業自体は人間労働力とほぼ変わらないか、その延長か、時には人間には及ばない簡単な部類のもの、である可能性もあります。災害派遣や発掘探検等、その本来的な使用法をされる場合ではなく、これが工場経営等に導入される場合、設備投資の代替や補助になっていることに、気づいてください。
では、余談のまとめ。
要するに、搭乗用人型ロボットと、他のロボット比較をする前の、お話のまとめ。
その一。産業用ロボットは、人間労働の代替たりうる。アンドロイドタイプより、効率がよい。
その二。遠隔操作移動型ロボットは、設備器具の代替補助たりうる。ただし、工場等人為的に環境制御が可能な場以外では、この限りではない」
「はーい。しつもーん」
「わらびさん、どうぞ」
「えーと。その二、なんですけどお。分かりにくいって言うか、ショート君には、難しすぎるんじゃ」
「一般的なロボットアニメファンには、つまらなく難しい議論になってしまう、というのは、なにも、この工場経営リソースの代替要素、という説明からだけでなく、リアルロボットの説明からノンフィクションロボットの説明に移った時点で、そうなんだと思いますよ。サイバネティックス等、通信工学や制御工学を一から説明するとしたら、いったい、いつになったらロボット操縦の『そ』の字にたどりつくんだって話になっちゃいますから。スポンサー的パトロン的語り方についての説明もそうで、経済産業白書の解説みたいな政策一覧や企業のロボット導入例までやったら、お尻がムズムズして座ってられないんじゃ」
「あーしが、お尻、ムズムズするのは、水もしたたるイイ男を見つけたときだけだって」
「はい、はい。その話は、あとからにしましょう。ショート君も首をかしげていますので、まとめのその二、遠隔操作移動型ロボットが設備器具の代替補助になりうる、というのに関して、一例、あげておきます。そうですね。ここは女川で、原子力発電所の町なので、そこから、一例を。原発の燃料はもちろんウランで、実際に制御棒に入れるのは、ペレットという、人間の人差し指くらいの太さの円筒形のブロックです。で、このペレットを作る工程を考えます。ウラン鉱石を生成して、イエローケーキという粘土状の塊をつくり、それを焼成するんですが、このプロセスで大変な放射線が出てしまうのだ、と仮定します。A社では、従業員の安全や環境汚染を考慮して、厚さ一mの鉛の壁で覆ったラボを作り、その中でマスター・スレイブハンドを使って、安全に、直接人間が接触することなく、イエローケーキを練ることにしました。けれど、設備投資をケチることにしたB社のほうは、障壁がいっさいない、むき出しの家屋の中で、同じプロセスを敢行することにしました。もちろん、厚さ一mの鉛の壁が必要なくらい、放射線が強いのですから、普通に労働者は近づけません。そこでB社は、代替手段として、遠隔操作移動型ロボットを使い、百メートルも先から操作して、従業員を仕事につかせたのです」
「でもさ。長さ百メートルもする土地を買うくらいなら、厚さ一mの鉛の壁のほうが、安くね?」
「海碧屋の、この工場から、女川原発までちょうど八キロの距離です。で、その女川原発の隣に十坪ほどの土地を買ってプレハブを建てて、そこまで電波を飛ばして作業させるっていう手も、ありますね。まあ、普通に放射線は漏れちゃいます。経済学の用語では、外部不経済、なんて言い方をします。まあ、でも、プレハブの周りの人が困るじゃないか、なんていう質問はナシですよ。あくまで、遠隔操作作業ロボットが、設備器具の代替になりうる、という例として考えだした、架空の会社なんですから。環境制御費用とバーターで、遠隔操作移動ロボット導入の可能性がある、という事を言いたかったのです。
さて、産業用ロボット、遠隔操作移動ロボットときたので、今度は等身大人型ロボット、アンドロイドを工場に導入する例を考えてみましょう。サイズや、できうる作業の可能性を考えると、これこそ人間労働の代替の本命みたいに思えますけど、実は違います。先ほど産業用ロボットの項目で説明した通り、人間労働の代替として効率アップするには、おおよそ人間の形態とはかけ離れた、たとえばアームと間接部だけから成っているような、特化型ロボットのほうが向いているのです。
では、アンドロイドを経営に導入する意味が那辺にあるかと言えば、おそらく資本に対して代替的に働くのだろう、と思われます」
「社長、資本ってなんですか?」
「うーん。中学生のショート君に対して、簡単に説明するのは難しいですねえ。とりあえず、会社を経営するときに使うオカネ、あるいはそのオカネで買ったモノ、くらいに考えてて下さい。
さて、この資本代替的生産要素というのは、前二者に比して、具体的なカタチをとらないぶん、理解が難しいと思われますので、説明のためにサブカテゴリを設けます。
作業空間(土地、建物)、工数、そして技術革新の体現化。まあ、資本とは何ぞや、という知識をもっていれば、いくらでも考えられます。方法論は今から具体的にやってみせますので、頭の体操のために、あとで自分で考えてみてくださいね。
では、まず、作業空間です。海碧屋は、水産関係の資材製造が本業ですけど、説明を分かりやすくするために、純粋の水産会社なのだ、とします。まず、ホタテの加工販売をするために、産業用ロボットを購入して、そうですね、たとえば50坪の敷地に、20坪の設置面積をとって、ロボットを導入するとします。三陸では夏が一番水揚げが多いんですけど、養殖ホタテというのは、一応年がら年中出回ってはいます。産業用ロボットは、休日も夜間も関係なく、人間の何十倍ものスピードで、何十倍もの精度で作業をし、会社は人間労働メインの時と比べ、利益を上げているのだ、とします。次に、海碧屋がホタテ以外の海産物加工も扱う事にした、とします。例えば、1月から3月までは牡蠣、4月5月にシラス、6月から8月まではホタテで、9月から11月まではサンマ、12月にタラ、というふうに。最初に、産業用ロボット導入の際に説明したセオリー通りにいけば、各々の海産物、つまり牡蠣やシラスやサンマ当に特化した産業用ロボットを工場に導入すればいい、という結論になります。でも、考えてみてください。今、この想定上の海碧屋の工場には、すでに、50坪の敷地に20坪のロボットが置いてあるのです。ホタテ用ロボットを移動して、新しい、たとえばサンマ用ロボットを設置するのにオカネがかかりますし、また、移動したホタテ用ロボットを、次の年のシーズンまで保管しておく倉庫だって、必要となります。取り扱う海産物の種類が多くなればなるほど、それに特化した産業用ロボットの数は多くなり、その分、保管や設置に要する土地建物は多くならざるを得ない。他に売って金銭回収できない設備投資等のことを、埋没費用といいますけど、疑似・埋没費用とでも言うべき、休眠中はムダな時間ムダなスペースをとり続ける産業用ロボットが増えていく」
「はい、しつもん」
「わらびさん」
「一つの分野に特化じゃなく、3つか4つくらいの分野でも対応できる、産業用ロボットとかは?」
「今現在、いくつかの分野で実現されてはいますね……有名な例は、自動車製造です。分かりにくいですけど。フォードが初めてベルトコンベア式に自動車製造を始めた時は、ライン一本につき、一車種でした。でも、トヨタがカンバン方式をはじめとして製造ラインに改革を加えて、ライン一本で、複数の車種生産が可能になっています。一般に、在庫を持たない部品調達方式を指して、日本的生産様式の強さ、特長とみなす経営研究が多いですけど、個人的には、こちらの、複数の製造に対応する産業用ロボット、というか機械の組合せによる多品種少量生産のほうが、『日本株式会社』の強さの源泉ではなかったのか、と思います。蛇足的に付け加えますけど、製造ライン上の機械のすべてが複数対応型の産業ロボットというわけではありません。今まで二時間もかかっていた自動車型枠プレス交換を、二分で交換できるようになった等、実際の革新的発明のいくつかが組み合わさって、複数種類生産への道を開いたのです。
さて、ここで注意事項をいくつか述べます。
その一。産業用ロボットの話をしているはずなのに、いつの間にか自動車製造ラインの話をしている?
回答一。自動車製造ラインそのものを一つの産業用ロボットとみなして、解説を読み直してください。
その二。自動車でできるなら、水産会社でだって複数対応産業ロボットでの対応が可能では?
これに対しては、二つの回答があります。
回答二の一。規模の経済が働かない例である。
自動車会社がしている複数種類生産は、複数といっても同じ自動車なのだから作業工程上、共通の内容が多く、多種対応用の機械部分のパーセンテージは小さい。他方、水産会社の加工工程は、たとえばホタテとサンマ等の加工では、全く違った作業工程をしている。仮に、カローラの生産工程を1000、ハイエースの生産工程も1000とし、同一生産ラインで生産するとして、重複部分を共用するとすれば、この生産ラインにおける工程は、というか産業用ロボットに課せられる工程は、単純合計の2000になるわけではなく、重複部分を数えない、1200とか1500とか、小さめな数字になるだろう、ということです。他方、水産会社におけるホタテとサンマの場合、共通する作業工程は全くないので(というか、そういう設定なので)、ホタテの生産工程を100、サンマの生産工程を100とした場合、重複分の除外というのができないので、単純合計の200になるだろう、ということです。さきほど、海碧屋工場の敷地50坪ロボット20坪の話に戻れば、カローラ・ハイエース系なら工程節約につき産業ロボットの敷地も節約できて、増加分含めても25坪とか30坪くらいで間に合うけど、ホタテ・サンマ系統なら、結局合計の40坪近くが必要になって、わざわざ複数作業方式の産業ロボットにしたメリットはないんじゃない? ということです」
「なんだか、分かりにくっ」
「ははは。話の流れとはいえ、魚介類と自動車を、ゴッチャにしてしまいしたからね。じゃあ、カローラ・ハイエースの代わりに、ビンチョウ・サバ系として、説明しましょう。どちらもれっきとした魚類で、紡錘形の形をしており、フィレにするのに、三枚に下ろしたり、頭をちょん切ったり、ハラワタを取り除いたりする作業はよく似ていて共通化できる。他方、ホタテとサンマは、二枚貝と魚類なので……」
「おーけ。それなら、分かった、ような、気がする」
「では、続けましょう。
回答二の二。自動車会社のほうは、巨大な装置産業だから。
ホタテがダメだから、サンマ、サンマがダメならサバの機械丸ごと交換……というのは、比較的産業ロボット交換費用が安価だからできることであって、一つの車種を選ぶという意思決定が企業の存亡に関わるような業種では、新たな製造ラインを構築する費用より、複数対応対応型の産業ロボット導入のほうが好まれるだろう、ということです。この、車種決定うんぬん、というのは、ハルバースタム著『覇者の驕り』あたりを読んだら理解できるだろう、と思います」
「なんだか、勉強ばっかりで、いつになったらロボットの運転にたどりつくの?」
「まあまあ、わらびさん。もう少しで前半ぶんは終わりますから。
ええっと。いま想定している水産会社で、産業用ロボットが導入しにくい理由の、補足です。自動車の製造というのは、まず、販売会社が顧客から確定的な注文を受けて、カンバン方式で下請け部品会社からパーツを確実に調達し、製造原価に確定的な利益を上乗せして、月賦だの現金だの支払確定後、納車する。自動車製造は、工具部品からカネの流れまで、だいたいは確定済できれいに流れていきます。ところが、これが水産関係になると、どこまでいっても不確実性がつきまとうんです。まず、商品の仕入れと販売、つまり工場にモノが入ってくるときと出ていくとき、どちらも市場での競りにかかります。今話している想定上の海碧屋なら、たとえば、女川地方卸売市場の競りで魚介類を仕入れ、東京築地に……じゃなく、今は豊洲か、豊洲の中央卸売市場に出荷する。で、実は、このとき、いつでも魚種が一種類しかないか、というと、そういうことでもありません。複数の魚種が常に同時に出回るのが、逆に、普通なのです。寒流系の親潮と暖流系の黒潮が交わる、世界三大漁場の一つである、ここ三陸では、特にこの傾向が強いです。それで、たとえば、今、女川魚市場で、ノリとワカメとカキとホタテが同時に水揚げされてきているとします。ある日はワカメとカキの相場が軟調で、仕入れ値が安くついた半面、豊洲の市場ではカキとホタテが高値取引の状態にあるとします。水産会社経営者としては、仕入が安く売値が高いカキをメインで扱い、余力があれば仕入の安いワカメか、売値の高いホタテも扱えば利益が出ます。また次の日には、女川魚市場扱いの魚種は全面高値になり、他方、豊洲では残念ながら全面安、そしてわずかながらホタテだけが相場崩れず踏みとどまっている、という状況になったとします。水産会社としては、ここはグッと我慢して、ホタテだけを加工出荷して、赤字をできるだけ出さないように、しのぐ……こんな感じで、同じ工場経営といっても、水産会社は、というか仕入販売に不確実性が高い会社では、自動車会社等とは全く違った収益構造なため、生産決定のプロセス自体が大いに違ってくるのです。極端な話、仕入販売双方の相場に合わせ、毎日、加工する魚種を変える、というのが、水産会社経営の秘訣になると言えます。
さて、こんなふうな水産会社の場合に、産業用ロボットの導入するとして、どんな形になるのか? ということです」
「ええっと……特化型はダメで……複数対応タイプもダメで……」
「なんにでも対応できる汎用型、というのが正解です。ただ、もちろん、今想定している産業用ロボットのうちで、そういうのはありません。ということは、当たり前に考えていけば、結論は一つ。そもそも、産業用ロボットを導入しない。とにかく、人間労働にだけ頼って、仕事をしましょう、です」
補足が二つあります。
一つ目。OECD諸国を対象とする労働生産性調査について。日本では大企業に対して、中小零細企業の労働生産性が著しく低い、ということが判明してますけど、じゃあ、その労働生産性向上のために産業用ロボットを導入すればいい、という対策は短絡的に過ぎるだろう、ということ。産業用ロボット導入が可能でも、あえて労働集約的な生産プロセスのままにしておくことで、利益を確保するやり方だってあるのです。
補足その二。前々から注意はしてきてますが、ここで取り上げている、毎日アラカルト生産する水産加工会社は、あくまで解説のための理念上の産物であります。実際、魚種ごとにみるに、ガリバー企業と呼べるくらい市場占有率の高いタイプの水産会社は、産業用ロボットや機械類を導入しているのが普通です。これは、市場での力関係を利用して、本来不確定な仕入販売ルートを安定させるスベを心得ているのが大きい。例えば、市場を通さない相対取引のルートを持っていたり、自分でも漁業や水産養殖をやって直接原材料の確保ができる、等。また、この想定では、どんな魚種も好きなだけ仕入できるという前提でしたが、実際には魚種ごとに買受人免許があり、また、水産会社ごとに販売ルートの強みがあったりで、朝三暮四的に次々に加工する魚種を変えているような水産会社は、実際にはありません」
「なんだか、搭乗用人型ロボットが、全然出てこない……」
「余談の入口のところまで、お話を戻しましょう。ええっと。経営効率を上げるために、人間労働を産業用ロボットに置き換えるのはセオリーだけど、そこには落とし穴があって、必ずしも効率経営にはつながらないよ、でした。じゃあ、それでも、人手不足等の理由で、なんとかしたい……あるいは、産業用ロボット導入の死角を埋める形で、機械類を導入したい。
で。答えは、アンドロイド、等身大人型ロボットの導入こそ、その答えだろう、と思われます。まあ、背理法というか消去法というか、特化タイプがダメだから、汎用タイプという後ろ向きの選択ではありますが」
「はい、しつもん」
「ショート君」
「資本のはなし、です」
「……そうでした。資本の代替を説明する上で、作業空間、工数、技術革新の体現化というサブカテゴリを考えました。作業空間については、今説明した通りです。産業ロボットに比して、一つだけの作業工程特化では負けてしまうアンドロイドタイプだけれど、汎用タイプであり、また、もともと人間タイプのロボットだから、ソフトさえ入れ替えてしまえば、たいていの作業はこなしてしまうよ。この特性のために、人間労働のみの代替としては産業ロボットに負けるけど、人間労働プラス機械の代替としては産業用ロボットに勝るよ、だから作業空間を節約できるよ、でした。
次に、工数というのは、アンドロイドの人間労働に対する強み、そして作業用ロボットに対する強みがどこにあるか、です。まず、どんな生産プロセスでも、同一の生産ラインなら、人間労働だろうが産業用ロボットだろうがアンドロイドだろうが、同じ工数であることを確認しましょう。つまり、パートのおばちゃんだろうがベルトコンベア式ロボットだろうが、そしてアンドロイドだろうが、サバを三枚に下ろすときには、同じ回数だけ出刃包丁をふるう、ということです。で、この工数、作業方法論の記憶と実行において、アンドロイドは、他二者に勝る形態を有します。まず、記憶について。これは、コンピューターのソフトを入れ替えればいいアンドロイドや産業ロボットが、人間に勝るのは言うまでもないことでしょう。そして、実行のほう。産業用ロボットのほうは、アームや関節から成る『手』は、特化している作業以外は苦手としていて、できる作業の種類は限られている、つまり、こなせる工数の数は限られる。つまり、実行に関しては、アンドロイドや人間労働のほうが勝ります。それで、記憶と実行、双方を考えれば、等身大人型ロボットは、こなせる工数の種類について、ダントツに多いだろうと、考えられます」
「はい、しつもん」
「わらびさん」
「工数って、要するに、作業の数のことを、言うんでしょ? なんで、種類の話が出てくるの?」
「実は、念頭においていたのは、労働経済論における、単能工と多能工の関係です。産業用ロボットは、人間単能工の上位レベルの置き換え、つまり、ハイパー単能工と言えなくともありません。また同様に、等身大人型ロボットのほうは、人間多能工の高度化、ハイパー多能工と言えるでしょう。人間単能工と人間多能工を比較した場合、どんな作業領域でも、多能工は単能工に勝るのに、機械化された多能工と単能工の場合、必ずしも、どんな場面でも、多能工のほうが優れているとは言えない、というのは、面白いパラドクスかもしれません。ともあれ、人間労働の単能工から多能工への訓練養成が、資本節約的に働くように、ハイパー多能工は、それをも上回る資本節約になるのだろう、ということが言いたいのです。このハイパー多能工敵特質は、なにも、ルーティン的な作業工程にだけ、発揮させるわけではありません。技術革新の体現化と言った、ドラスティックな作業内容の変更についても、切替時間の速さや対応できる作業内容の多様さという点で、他を凌駕するのです」
「はい、しつもん」
「わらびさん」
「作業空間の時の解説に比べて、最後は無茶苦茶端折っちゃってるじゃん。社長さん、疲れた?」
「まあ……本筋とはあんまり関係のないところですからねえ……」
ここまでの、まとめです。
ロボットの四類型を考えた場合、産業用ロボットは人間労働の代替に、遠隔操作移動ロボットは設備の代替に、そして等身大人型ロボットは資本代替的に働ける。また、遠隔操作移動ロボットには、工場導入のみならず、他の用途でも活躍できる。
「……ここで、悲しい事実を告げなければ、なりません。我らが搭乗用人型ロボット、海碧ロボットとして実現させようとしている種類のロボットは、実は、工場作業等では、どんな生産要素の代替にもなりえないのです。ついでに言えば、工場以外での産業用重機・機械類、たとえば荷役用途や建機用途作業機械の代替にもなれません。
20年代に入った現時点で、搭乗用人型ロボットに向く産業……いや、より正確に言えば、代替に向く現業は存在しないのです」
「えっ……」
「趣味とロマンと少年の冒険心。現代、いや現在において、搭乗用人型ロボットの存在意義は、それだけだろう、というところで、今日の講義をおしまいにします」
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