5ー4
ていうか内巻きだな。
『佐藤さん、こんにちは。『今日は誘ってくれてありがとう。嬉しいわ』』
誰だ、佐藤。やっぱり違うかな。知らない人だな。
この高城のような声も含めて……。
お礼言ったぞ? 嬉しいとか言ってるぞ?
知らない人だな。影武者かな?
知らない天丼だ。よくある。
『あはー、あたしも嬉しいよぉ〜。初めてだよね? 一緒に遊びに行くの!』
『ええ』
『高城さんはお家の事情とかで、なかなか外出できなかったこと知ってるからさー。仕方ないんだけど、ちょっと寂しいとも思ってました! えへへ。もう今日はねぇ、行きたいとこいっぱいあるよー』
『お手柔らかにお願いしますね?』
『うん! ……それでなんだけど……』
流石友人。二文字じゃない返しパターンもあるんだな。
雑踏の騒がしさに紛れないように、耳に手を当てて向こうの会話に集中する。
……それでなんだよ? あくしろよ。
しかし内巻きが続きを話すよりも早く、またもや人垣から抜け出した誰かが二人に近付いていくのが見えた。
今度は集団だ。
「敵影4」
『……』
呆れてるのかな? 喋れないのかな?
『うぃーす、モカっち、どうなった?』
『やあ、高城さん』
『モカぁ、とりまどっかに入らん? 暑いよー』
それとも高城的にもそう判断したのかな?
高城ではない声を時計が拾ってきた。
日陰を求める振りをして、高城に近付くことにした。声と人物を一致させるために。内巻きを含めた五人が見える位置へ。
近付いてきたパリピ共は知ってる顔も含めた四人。その馴れ馴れしさから内巻きの知り合いか何かだろう。
『……もう〜、今から言うとこだったのにー。……まだ分かんない。あっち行っててよ』
とりあえず一人は見たことある奴だった。
というか生徒会長やん。
新しく近付いてきた四人の内訳は、男三、女一と偏ったものだったが……不思議なことに高城と内巻きを含めると数が合う。
いや合コンやん。
生徒会長もTシャツとジーパンというどっかの工作員と同じ服のセレクトのようなのだが、タイトなスタイルにネックレスや時計といったアクセが存在の違いを主張している。おいおい、それじゃ
連れている他の男達も似たり寄ったりな格好をしてるのだが、何故か印象が被ることはない。服のセンスとキャラの違いからだろうか? 一人はチャラそうで、一人は悪そうな感じ。
内巻きこと佐藤さんは、ワンショルダーの半袖Tシャツにチェックのショーパン。肩掛けの小さなバッグに涼し気な黒のミュールと、如何にもなビッチ。
追加の女の子も、オフショルダーのミニワンピースにキャップという『私陽キャです』感が凄い。今年のこの陽キャがビッチの上位に食い込みそうな勢いだ。そんなのあればだが。
傍目にはいいと思う。どんどんそういう格好してくれ。
しかしこれはあれだ。きっとあれ。
友達の友達が付いてきちゃったとかそういうパターン。
ヲタの集まりに非ヲタ連れてくるよりはマシかもしれないが、気遣い感がパない。もう別の日にしようよって誰か言ってよって思うよ。少なくとも俺は嫌だ。せめて連絡入れろよ、行かないから。そうなる。
陽キャともなると違うんだろうか?
少し気まずそうな内巻きさんに、笑顔固定の高城さん。思わず敬語になってしまう。
うーむ……距離があるから分からない。オコなのかどうか訊いてみようか? 返事はないだろうけど。
『……高城さんと遊べるのが嬉しくって……それでちょっと……』
モゴモゴ喋る内巻き。流石にマズいことしたかなー? ぐらいには思ってるらしい。
『だから……高城さんがもし良かったらなんだけど……皆で遊ばないかな〜……って。良かったら……なんだけど』
やべぇ。もう見てらんないよ。オーケーの指示出すよ。
『……ええ。勿論よ』
おっと?
『ほんと?!』
ほんと?
高城にしては珍しく妥協してると思われる返事だ。
内巻きのこと友人って言ってるだけあって大切にしてるのかもしれない。
ただノートのページが埋まること不可避。
やっぱり月曜は休みにして欲しいなぁ……。
無事に高城の同意を得られたことで合流する四人。既に知り合いという距離感からか、生徒会長が高城の隣を陣取っている。
『ねえー、どこ行く?』
『ラウワン?』
『バカ。あちぃーのに、あんなとこ行きたくねえっつーの』
『あ! あたし高城さんと行きたいとこリストあるから! それ優先で!』
『佐藤は高城さんと仲良かったんだな? 意外だったよ』
『フッフッフー、これでも友達歴長いよ!』
『ふふ』
ふふ入りましたー。
内巻きと高城を中心に歩き出す陽キャ集団を横目に、とりあえず自販機を探すことから始めて欲しいと願う。
み、水を……。
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