第32話 乙女ゲーの世界は萌えだらけだと思った??
魔王が討伐され世界は平和になった。
それからしばらくして人間と魔族の間で和平協定が締結される。
締結から半年後、シルヴァ王子の戴冠式とキャロさんとの結婚式が行われることになった。
未だに慣れないドレスに身を包み式に参列する。
この晴れやかな日にはリンドも魔族代表として出席していた。
「この晴れの舞台を伝説の聖女と勇者たちに見守られている事を嬉しく思う」
そうレスタルヴァ王シルヴァは言う。
「これからは魔族との交易も始まり今まで以上に目まぐるしい時代になるだろう。だが、私には支えてくれる皆がいる。皆とは国王として歩む道を一緒に進んでいけたらと思う」
参列する重鎮たちから拍手が巻き起こる。
「「「国王陛下万歳!!」」」
参列者全員で万歳コールをした。
もちろんヒイロも私も参加している。
シルヴァ陛下の横に立つキャロ様はとても美しくて眩しかった。
いつか私もあんなふうに純白のドレスを着ることになるのだろうか。
そう、婚約は発表されたがまだ結婚はしていないのである。
戦後処理で忙しくそんな暇がなかったからだ。
今回の挙式は戦後処理などが一段落したから行われた。
ちょっとだけ手を繋いでデートをしたりしたがもちろん手出しはされていない。
それが少しもどかしく感じたりする。
キャロ様がブーケトスをするらしく未婚の女子たちが群がり始めた。
「ほら、さくら行って来い」
そう言ってヒイロに背中を押される。
結婚することが決まっているのにブーケトスに加わっていいのだろうか?
そう思いながらも群れの中に入り込む。
すると投げられたブーケが綺麗な放物線を描いて私の手にブーケが収まった。
「え」
呆然とする私に対して周りから拍手が贈られた。
「次はあなたの番ですわね」
そう言ってくれたのはエリザだった。
私はようやく嬉しさを感じて微笑んだ。
式の後は城の庭園で立食パーティが開かれた。
皆思い思いの場所へ行ってダンスをしたり食べ物をつまんだりしている。
私はブーケを片手に庭園の隅のベンチに座っていた。
ヒイロは知り合いに挨拶をしに行ってしまった。
「聖女サマなーにしてんの?」
そう言って近づいて来たのはリンドだった。
「聖女サマって言わないでよ」
「はは、悪い悪い」
リンドは笑って私の隣に腰掛ける。
「お嬢様達の相手はいいの?」
そう問いかけると気まずそうに視線を逸らされた。
さっきまでリンドはとっかえひっかえダンスに誘われていたのだ。
「……貴族の女子の相手って大変なんだな」
「リンドってば顔がいいからだよ」
「仮面でもつけてくればよかったなー」
本気でそう思っているように言う。
顔がいいというのもあるがリンドが言い寄られているのは魔族の次期王様になるからである。
結局トップを失った魔族たちは英雄であるリンドを頼ったのだ。
頼み込まれて王になることになったと聞いた時はヒイロと一緒に笑った。
「お前たち二人っきりで何してんだ?」
「おっと、旦那サマの登場だ」
知り合いへの挨拶が済んだのかヒイロがやってくる。
私の隣を譲るようにリンドが席を立つ。
「お前その軽口少しは直せよ」
ヒイロは呆れたように言って私の隣に座った。
「はいはい、じゃあ俺は行くね」
そう言ってリンドは人ごみの中に消えて行ってしまう。
意図的に二人きりにされてしまった。
「……」
「……」
特に話すこともなくお互い黙り込む。
「……なぁ」
「なに?」
「俺はさくらを幸せにできてるか?」
急に聞かれてぽかんと口を開けてしまう。
何を言いだすのかと思えばそんな事か。
私は体で答えるようにヒイロの手を握る。
「……幸せだよ」
「そうか」
納得したようにヒイロは言った。
「俺が今よりもっと幸せにする」
だから、と言葉を区切る。
「俺と結婚してほしい」
そう言って私を抱きしめる。
「う、うん」
ドキドキしながら答えると周囲から拍手が巻き起こった。
そういえば人がいっぱいいるんだった。
恥ずかしくなってヒイロから体を離す。
するとヒイロの顔が耳まで真っ赤に染まっているのが見れた。
その様子に思わず笑ってしまった。
「わ、笑うなよ!」
「あはは、ごめんごめん」
きっとこの先もこうして笑いあっているのだろう。
それを幸せと感じた。
だから
「これからもずっと愛してる」
「あぁ、俺もだ」
私たちはどちらともなくキスをした。
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