第7話 王都レガリア
私たちは数日かけてようやく王都レガリアに到着した。
入門料を払って城下町に入る。
すると大通りはカノンとは違った活気に包まれていた。
「すごー」
「おい、口開いてるぞ」
「おっと」
思わずポカンとしていたのを注意される。
「じゃあ私はここで」
早い所宿屋を探さないと安いところはすぐに埋まってしまう。
「は?」
「え?」
「何言ってんだ?このまま城行くぞ」
「え、でも宿探さないと……」
王都の宿は高そうだ。という私の心配をよそにヒイロは言った。
「んなもん城に泊まればいいだろ」
「え」
「はい、僕もそれがいいと思います」
「ええええ」
シナリオに無かった展開に私は思わず叫んでしまった。
ゲームでは城下町から城に通っていたし、それがまさか城に直通なんて思わないでしょ。
「いちいち宿屋に行くの面倒だろ?」
「あ、来てくれるつもりだったんだ」
「おう」
これもちょっと予想外で嬉しかった。
特に断る理由も無いので素直にお城に招かれることにする。
********
なんと城門はヒイロの顔パスだった。
私なんて何も聞かれなかったよ。大丈夫か警備。
ヒイロについて城に入ると騎士らしき人が駆け寄ってくる。
「王子!お帰りなさいませ!」
「あぁ今帰った」
「ではこの後王に謁見されますか?」
「そうだな。一度風呂に入ってから行く」
「かしこまりました。では執事長に連絡しておきますね」
「そうしてくれ」
なんかやり取りだけ見ると本当に王子様なんだなって思う。
かっこいい。
普段の態度が王子らしくないっていうのもあるけど。
「おい、変な事考えてないか?」
「いえ何も?」
私の答えにハァとため息をつくとヒイロは私を指さした。
「こいつは客人として扱え」
「ちょっと指ささないでよ」
「はい。ではお客人の案内は私がいたしますので」
「というわけだ。後でここに集合な」
そう言ってヒイロは先に歩き出してしまう。
それについてユウトも行ってしまった。
「扱いが雑になってきてない……?」
思わず呟くと騎士のお兄さんが噴き出した。
「いや、すみません。王子にそこまで言う女性は初めてで……」
「まぁ相手は王子様ですからね」
私は最初から知っていたけど知らない人からしてみればただの冒険者だ。
「では案内しますのでついてきてください」
「お願いします」
騎士のお兄さんに先導されて私も歩き出す。
長い廊下をずっと歩いて階段を上って更に歩いて、ようやく客間に到着する。
「城が大きいので部屋も多いんですよははは」
とは騎士のお兄さんのセリフ。
コンコンとノックして中に入れば二人ほどメイド服を着た人が作業していた。
「あら、アレン様どうなさいました?」
「ヒイロ王子のお客人だ。湯あみと身支度をしてホールに来させてくれ」
アレンと呼ばれた騎士のお兄さんは私を指して言う。
ん?湯あみ?
もしかしてお風呂がある?
「かしこまりました。さぁどうぞこちらへ」
メイドさんに導かれてドアを二回ほど通ると浴室につく。
そこには浴槽が完備されていた。
「お風呂だ!」
私が言うとメイドさんはフフフと笑って浴槽にお湯を貯め始める。
この世界、お風呂は娯楽のため普通の宿にはないのだ。
だからこっちの世界に来て初めてのお風呂になる。
日本人としてちょっと嬉しい。
「さぁ貯まる前に体を洗ってしまいましょう」
ん?
「あ、いや。自分で出来ますよ?」
「いえいえ、これも仕事の内なので」
いい笑顔でメイドさんが迫ってくる。
「いやほんとうにかんべn」
問答無用で剥かれました。
「あぁあああー……」
まさか女性に服を剥かれて体を洗われる日が来るとは思ってもみなかった。
しかも今まさにドレスとやらの着付けをされている所である。
これも断ったが「お客様にそんな恰好させておけません!」とか言われて強制的に着せ替え人形になった。
今着ているのは黒髪に映える赤色のドレスでふんわりスカートが可愛らしいやつだ。
もうこれでいいから解放してくれないだろうか。
髪の毛まで編み込まれてしまって本当どこのご令嬢ですか状態だよ。
「うん、完璧!」
「久しぶりに本気出したわ」
久しぶりに本気とは()。
疲れ切った私はようやく解放される。
部屋を出ると肩を震わせているアレンさんがいた。
この人ずっと聞いてたな。
「笑うなら笑ってください」
仏頂面で言えばブハと噴き出す。
「ご、ごめんごめん。まさかあそこまで無抵抗だとは思わなくて……」
「どうしたらいいかわからなかったんですよ」
女性相手にどう逃げたらいいかなんてわからない。
「でも可愛くなったね」
「そうですか?」
「うん。さぁ王子たちが待ってるだろうから行こうか」
アレンさんに連れられてもと来た道を戻って行く。
最初に皆と別れた所につくと二人はすでに待機していてヒイロが不機嫌そうに待っていた。
「遅いぞ」
「まぁまぁ女性の身支度は時間がかかるものって言いますからね」
「こっちも大変だったのよ……」
「?ご苦労だったなアレン。戻っていいぞ」
「ハッ」
返事をするとアレンさんは仕事に戻って行った。
「まぁなんだ。豚に真珠か?」
「喧嘩売ってる?」
「ヒイロ様!うろ覚えの言葉を使うのはやめてくださいぃ」
「悪かった!似合ってる!」
「う、うん。ありがと」
急に素直に言われると照れる。
しかもそれを言ってくれたのが推しだから嬉しさ二倍だ。
「いいか?これから王に謁見する。俺はそこでお前を聖女として紹介するつもりだからビシっとしていろ」
「え?うん。わかった……え、謁見?私も行くの?!」
「聖女と勇者の話をするのに連れて行かなくてどうする」
呆れたように言われてしまった。
いやまさか心の準備もなしに謁見することになるとは思ってもみなかったよ。
普通にお城だやっほーいとか思ってた。
「さぁ、行くぞ」
「えぇええ」
こうして有無を言わさず連れて行かれることになったのだった。
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