記憶の行方

 その男は死んだ。


 トラックの下敷きになって死んだのだ。


 なぜこんなことになったのだろうか。


 男は自らの身体うつわを眺めながら考えていた。


 男のそばには一台のバイクが転がっている。


 そばには血のついたナイフ。


 なぜそんなものがあるのだろうか。


 だれかを刺したのか。


 それとも


 刺されたのか。


 男は何度も記憶を辿る。


答えはでない。


死ぬときは走馬灯のように記憶がかけめぐるというが、男の中の記憶は真っ白なままだった。








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