依頼、フロストドラゴンの卵



 バージョン2はお金が節約できるようで、結構かかることが判明した。


 収納空間内は、時間こそ経過していないので、時間経過によるコストは発生しない。


 しかし、それでも、100本もの時空剣を実体化させておくとなると、10,000ララを剣に変えた状態をキープしていることになる。


 ゆえに口座のお金が減ってしまう。


 ──────────────────


 残高

 3,101ララ


 ──【時空剣】


 技名:抜剣

 コスト:-100ララ

 備考:異界に返還すると+100ララ


 技名:装備

 コスト:-10ララ/毎秒

 備考:装備中、継続して魔力消費

 

 技名:収束重撃波・小

 コスト:-8,000ララ


 技名:収束斬・小

 コスト:-1,000ララ


 技名:抜剣・射出

 コスト:-150ララ 

 備考:異界に還元すると+100ララ


 技名:収納

 コスト:-1000

 備考:1m四方の永久空間を異界に開く


 ──────────────────


 口座にはララが入ってるほど良い、とゴールドに言われた。

 なぜなら、彼が暗黒界で運用して増やしてくれるからだ。


「もっとララ入れないとだな」


 俺はさらなるララを求めて、夜、ノエルの稽古が終わったあと、騎士団本部へと赴くことにした。


 ここでは公的なお金で報酬が支払われる、騎士団クエストが受けられる。


 騎士団クエストは報酬が安いので、クエストをやりたい者は、騎士団本部ではなく、みんな冒険者ギルドへと行くのが常だ。


 ここはもっぱら、休暇中の騎士に、騎士団側が仕事をさせるさいの面目として使われる事が多い


 とはいえ、スミヌスが『インチキ野郎』と言いふらしてるせいで、ギルドではなかまがあつまらない俺として、ここは副業にはありがたい施設だ。


「あの」


 俺は騎士団本部1フロアの窓口で居眠りしてる受付嬢に話しかける。

 

「むにゃむにゃ?」

「騎士団クエスト受けたいんですけど」

「っ!? 騎士団クエストの受注ですか!? つまり暇なんですね?!」


 受付嬢が、がばっと顔をあげる。

 

 彼女は震える手で、ある紙をカウンターを滑らせて差し出してきた。

 瞳は涙でうるうるしている。


「ぐすんっ、あ、あの、このクエスト……」

「いきなり、なんですか」

「こ、これをやって欲しいなぁって……」

「これしかないんですか?」

「いえ、ほかにもありますけど……これやってくれる人がいなくて……やってくれたら、私が助かるって言うか、嬉しいと言うか…」


 クエスト用紙をとりあえす受け取る。

 手書きで書かれていて、正式な依頼書には見えない。

 

「調査場に置き忘れた、フロストドラゴンの卵回収? え、こんなクエスト民間人にやらせようとしてるんですか……?」


 明らかに難易度が高そうだが。


「お願いしますッ! なんでもしますから!」

「どうしてそこまで」

「それ調査現場に忘れて置いてきたの、私なんですよ……今はその時に足を怪我して、受付係してますけど、その卵が見つからなかったら、きっと私、団長に使えない子だって思われちゃいます……!」


 話を聞くと、どうやら彼女の手による自作クエストらしい。

 よくみたら完了した依頼書の裏紙を使って書かれている。


「これやって何の得が俺に……報酬も安いし」

「お金なら払います! 私は、これでも騎士団なので貯金はあるんです! お願いします!」

「……これやったら、普通のクエスト出してくれますか?」

「だします、だしますとも! わざわざ騎士団の窓口にくる変わり者さんにふさわしいクエストを!」


 仕方ない。

 これをこなさないと、普通の騎士団クエスト出来ないだろうし、騎士団の貯金は信用できる。それに、可哀そうだしな。


 俺は渋々ながら、クエストを受ける事にした。



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