第10話 十
(如何したのかしら? 何故何も喋らないの?)
そろそろ痺れを切らしているのですからミミリィは微笑んでいる。
「その、ですわね、恋人になるのですし、服を返して頂けませんかしら?」
「ああー!! 忘れていたぜ!!」
そう言ってサインデルドは慌てて部屋から出て行くとミミリィの洋服を持ってくるのです。
そして、ミミリィの前に差し出すと服を着るように促してくるのです。
ミミリィはその言葉に従い、着替え始めるとその様子をじっと見つめてくるのです。
流石に恥ずかしいし、見られたくない気持ちもあるので
早くこの場から離れたいと思っているミミリィなのです。
それから数分後、着替え終わるとサインデルドの方を見てこう呟くように口を開くのです。
「もう大丈夫ですよ」
「おお~!!!! 似合っているぞ!」
「それは良かったですね」
「それでこれから俺はお前の事を呼び捨てにしてもいいかな?」
「えぇ、構いませんよ」
「じゃあ、遠慮なく呼ばせて貰おう! ミミリィ」
「はい!?」
いきなり呼び捨てられる事に対して驚くミミリィは唖然としてしまうのです。
しかも何気に馴れなれしい態度を取るサインデルドに対し、苛立ちを覚えるのです。
「あのさ、私の呼び方だけど、もう少し考えてくれても良くない?」
「ん~別に構わないんじゃないか?」
「私は全然良くありませんけどね」
「まあまあそうつべこべ言わずに仲良くしようではないか」
そう言われるととても嫌な感じがするのですから
ミミリィはこの宿屋から出ようとすると後ろを振り向けば、
サインデルドが後を付いて来ているので溜息を尽いているミミリィ。
「如何して私の後を付いて来るのかしら?」
「そりゃ勿論、ミミリィと一緒に居ようと思ってだよ」
「どうしてそうなりましたかね?」
「だって一緒に居る方が楽しいじゃん」
「楽しくないんですけどね」
「またまた~冗談を言うんじゃねえよ」
「本当なのに……」
呆れるような表情を浮かべながらも溜息をつくミミリィは宿屋を出ると
何処へ行くかも決めていないし、目的地もないのですが、取り敢えず歩き続ける事にしました。
暫く歩いていると大きな広場に出ると其処では沢山の人々が行き交っていて、
賑やかな雰囲気があるのです。
そんな人々を見ながらミミリィは溜息を吐きつつ、歩いていくと一人の女性が近づいてきて、
声を掛けてきたのです。
「ねぇ、そこの綺麗なお嬢さん、少し宜しくて?」
「はい?」
「貴女の事が気に入ったんだけど、どうかしら?」
「いえ、結構ですけど……それにしても凄いわよね、 大勢の人が行き来していて、
活気があって、見ているだけで楽しそうな雰囲気だし、でも、
私なんかよりももっと素敵な女性は大勢いると思うし、 だから、ごめんなさい、お断りします」
「ふぅ~ん、そう言う割には顔が赤いけど、照れてたりするの?」
ミミリィは顔を赤くしながら俯いて、小さく首を振る。
すると女性の方はニヤリとした笑顔を見せてきてこう言う。
「可愛い反応をするのね、ますます好きになったわ」
ミミリィは困惑しながらもその場から離れようと早足で歩くが、
そんなミミリィの後を追いかけていく女性。
「ちょっと待ってくださいまし、まだ話は終わっていないのに逃げるとは酷い方ですこと」
「すみません、急いでおりますので、これで失礼致します」
「待ちなさ~ぃ!!!」
大声で叫ぶ女性の声を無視してミミリィはそのまま走り去る。
暫く走っていると疲れたのか、足を止めると肩で呼吸をしながら、
膝に手を当て、 苦しむミミリィはこう言う。
「はぁはぁはぁはぁ、一体なんだったのでしょうか?」
ミミリィはそう言いながら先程の事を思い出すと、
突然の出来事だったので驚いたと同時に恐怖を感じた。
ただでさえ恋人のサインデルドに付き纏われているのに、
更に見知らぬ女性にまで追いかけられる始末。
ミミリィは心底うんざりするのです。
こうなると本当に如何したらいいのか分からなくなるのですが、
兎に角今はお屋敷に戻る事を最優先にするのですが、 そんな時、
目の前に二人の男性がミミリィの前に現れるとこう言う。
「お姉ちゃん一人かい、俺達といいことしないか」
「そうそう、俺達は優しいから安心していいよ」
「御免なさい、貴方達とお付き合いしているお暇はないわね」
ミミリィはそう言うとお屋敷へ戻るのですけれど、
お部屋へ着くなりベッドにうつ伏せになる。
(サインデルドという変な人と恋人になるし、如何しようかしら?
此処は別れて新しい相手を探す方が賢明ですわね)
ミミリィはそう考えるとベッドから起き上がり、 衣服を脱ぎ、
下着姿になるとそのままベッドに横になり、眠りにつく。
翌日、ミミリィは目を覚ますとベッドの上で上体を起こすと辺りを見渡す。
昨日は見知らぬ男性二人に襲われそうになったので、
今日は一人で行動しようと心に決めるとベッドから抜け出すと衣服を着て、
お屋敷を後にしようとするのですが、そんなミミリィの傍に近寄ってくるサインデルドがいるのです。
ミミリィは警戒するようにサインデルドを見るのですが、
サインデルドはニコニコと笑いながらミミリィに話しかける。
「おはようございます、今日も美しいよな」
ミミリィは無視をしてお屋敷を出ようとしたのですが、 サインデルドはしつこくついて来てくる。
「如何して貴方が此処にいるのかしら? 待ち伏せでもしていたのかしらね?」「そうだな、ミミリィが心配になってな」
「余計なお世話ですわね」
「そう言うなよ、俺とミミリィは恋人同士なんだからよ」
「誰が貴方の恋人ですか?」
「俺とミミリィは愛し合った仲じゃないか」
「貴方と私がいつの間にそのような関係になったというのかしら?」
「俺がミミリィに告白して、ミミリィは受け入れてくれただろ?」
「恋人にはなりましたけれど、もう恋人をやめさせて頂きますので」
「そう言うなよ、俺とミミリィは相思相愛の間柄だ」
「勝手にそう思い込まないで欲しいわね」
ミミリィはサインデルドにそう言うと、 サインデルドはミミリィの腕を掴むと強引に引っ張っていく。
「ちょ、止めてください、離して下さい」
「嫌だなぁ、俺はミミリィと離れたくないんだよぉ」
「私も嫌です、お願いです、手を放して」
「駄目だ、絶対に嫌だ」
「困った人です事」
ミミリィはサインデルドに腕を引っ張られながら、 引き摺られていると、
サインデルドはミミリィにこう言い放つ。
「ミミリィは俺の物だ、誰にも渡さないぞ」
ミミリィはサインデルドの言葉にイラっとするのですが、我慢して黙っている。
「俺はミミリィを愛しているんだ」
(私の事を愛しているですって? 何を言っているのかしらこの人は!)
そう思っているとミミリィはサインデルドの頬を右手で平手打ちすると
パァンっと響くような音がしておりサインデルドは痛がっている顔をしているのだった。
「うぐっ!」
「私も好きでもないし、興味もありませんから、勘違いしないようにして貰えませんかね?」
「ミミリィの奴、本気で怒らせてしまったな」
「自業自得です」
「ミミリィは怒った顔も素敵だよな」
「……」
ミミリィはサインデルドの発言に対して無言でいるのですが、
サインデルドは懲りずにミミリィの身体に触れようとする。
「ミミリィ、好きだ」
「触らないで!」
ミミリィはサインデルドの手を振り払う。
「ミミリィのいけず」
「……」
ミミリィはサインデルドを無視するように歩き出す。
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