第6話

するとあの女がこっちに向かって歩いて来るのだ。


――おいおいおいおい。


俺が黙って女を見ていると、卓也が言った。


「おい、走るぞ」


そして走り出した。


俺は卓也を追いかけながら言った。


「おい、どうした」


「どうしたも、こうしたも。このままだったらあの女、お前の家まで来るんじゃないのか」


そうか。俺の家まで近い。


あの女が俺の家を知っているかどうかはわからないが、知っていないとしたら俺の家を知られてしまうことになる。


それはまずい。


あんな不気味な女に俺の家を知られるなんて。


俺は思わずスピードを上げた。卓也を抜いてしまった。


「おい」


そう言いながら卓也もスピードを上げた。


そして俺の家に着いた。


振り返ったが、女はそこにいなかった。


「じゃあな」


そういうと俺は急いで家の中に入った。

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