第2話

と考えたが、なにも思い浮かばなかった。



次の日の朝、昨日と同じく通学路を卓也と二人で歩いていると、学校の近くでまたなにかを感じて立ち止まり、振り返った。


すると昨日の女がいた。


ぎょろついた目を小刻みに動かしながら、視線を下にしたまま歩いている。


俺は言った。


「おい、またいるぞ」


「ほんとだ」


俺と卓也が学校に行く時間はランダムだ。


お互いにそんなことに几帳面ではない。


それなのに昨日とほぼ同じ場所に、昨日と同じ女がいるのだ。


卓也が言った。


「うーん、偶然だろう。あいつ、こっちを見てないし。こっちを気にしているようにも見えない」


「そうだな」


俺はそれだけ言うと、歩き出した。


そのまま立ち止まって見続けていると、それだけ女がこっちに近づいてくるし、自分を見ている俺にも気がつくだろう。


それはどっちも嫌だ。


あの女、とにかく不気味なのだ。


かかわりたくはない。


「そうだな」


卓也も歩き出し、俺と同じことを言った。

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