憧れの青い制服
丁度、1年前の事……。
「失敬、リウ・セグラージ君だね?」
突然家にやって来たその初老の紳士は臙脂色の外套を翻し、薬局の店番をしていた僕に向かって、一通の手紙を差し出した。
「……最高の学術機関で……有意義な青春を過ごしてみないかね?」
その手紙を手に取りーー
【イクスガロゥ皇立学院 入学推薦書】
僕は目を疑った。
イクスガロゥって……あの超名門の……。
手紙に記された文字を何回か繰り返し見て、僕は思わず老紳士に向かって尋ねてしまう。
「…………
口髭を撫でながら、老紳士はニコリと笑った。
「
****
「はぁ!《イクスガロゥ》に!」
「そりゃあ大したもんだ!」
「将来はお役人かな?」
「頑張って勉強して来るんだぜ!」
僕の街から空港までは、カスバー(魔力を動力源に動く公共の乗り物)に乗っておよそ2時間ーー。
「はいっ!頑張ってきます!!」
退屈かと思っていたカスバーの車内も、僕の制服を見て興味本意で寄って来るおじさんやおばさんと話をしていると、あっという間だった。
正直……喋り足りないとも思った。
『主も律儀よな……いちいち相手をするとは……』
脳内でアウルの呆れた声が響く。
(良いじゃないか。減るもんじゃなし)
『そんなに暇なら、2千年前の私の……このアウルゼファーの驚天動地の武勇伝を……!』
(それはもう何回も聞いた)
『むぅ…………』
…………。
人と話をするのは好きだ。
人の笑顔を見るのは好きだ。
改めて、僕はここに居て良いんだ……そんな気分になる。
「………………」
反対に……蔑み、嘲りは……嫌いだ……。
例え、僕に向けられた
『む?主、そろそろ着くぞ?』
アウルに気付かされ、僕は車窓を眺める。
透き通るオーシャンブルーのナムネア海に掛かる長大な大橋の、その先。
大小様々な飛空挺が停泊する、白く輝く
****
《注:リオ視点》
「イクスガロゥ学園都市行きの飛空船は1時間半後に出航します。チケットをどうぞ!」
「あ、ありがとうごぜぇます……」
「良き
「はぁ……!ご、ご丁寧に……」
お
故郷の【フルイ村】から深夜カスバーを乗り継いで乗り継いで丸2日……!
もう深夜カスバーには乗りたくねえです……!座席が硬ぐで……お尻が割れるかと思いました……!
「はぁ……!凄えです……!」
それにしでも、都会の空港は凄えです……!風吹けば吹っ飛んじまうフルイ村の停車場とは……あの掘っ建て小屋とは比べ
見渡す限りの人、人、人……!ヒューマンだげでなく、背広を着たハイエルフや、忙しそうにカスバーに乗り込むドワーフの人達でいっぱいです!
あ!空港ロビーのでっがい時計の下で、ダークエルフの二人組が大道芸をしています!
こんだけの人、村祭でも見る
「はぁ……!気持ちええ……!」
空港のガラス天井から注ぐお日様が暖かいです!
本当に夢のよう!
村で弟の世話しながら薪割ってた
村に侵入したはぐれ
憧れの《イクスガロゥ》に入学出来るなんて!
この青い制服を着た
嬉しぐで……嬉しぐで……
「邪魔だっ!!」
「あうっ!?」
……いきなり後ろから突き飛ばされて、
足が痛いです。膝を擦り剥いてしまいました。
ああ……!お
「おいっ!その見窄らしい青服……平民だなっ!?」
「え……!?わ、
痛みに何とか耐えて
イクスガロゥの赤い制服……つまり……貴族の人達です……。
「お前の所為でこのボクの制服にシミが付いたぞ!?どうしてくれるっ!?」
シミ!?シミなんで何処にも…………あ!
確かに、男の子の制服の胸ポケットの所に小さなシミがあります。
多分……今男の子が持ってるタンブラーから溢れたジュースが付いたんでしょうか……!?
「あわ……あわわ……ご、ごめんなさい!」
「謝って許されるか!?このクソ平民がっ!!」
ひい!こ、恐いです!
いつの間にか、
「ねえ聞きました?わたす……ですって!」
「田舎者ですわ……汚らわしい!」
「何でこんな田舎者がイクスガロゥに入れるのかしら!?」
「学園まで臭くなるわ!あーやだやだ!ただの平民ってだけでも腹立たしいのに!」
ど、どうしよう……!みんな怒ってる……!
お
続く
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