第2話 私の身体は高い、ハズ…。



「救世主様、今日はもうお疲れでしょう、今晩はこちらに泊まって下さい。色々なことは明日が来てからに致しましょう」



えぇ、泊まるぅ…??と私自身、こんな男共のわんさか居る場所で、わけ分からんイケメンに言われるがまま、それに従うことを拒否・・・、したいのは山々だが、大切な熊五郎の事を想うと・・・。



「騎士団で出す食事で宜しければご用意できます。 それと、一応、お偉い様がお泊まりになる為の部屋が御座います。 お部屋では洗濯も出来ますし…、湯も浴びれますので…」

「あっ、はい、じゃあお言葉に甘えて・・・」

「う"わんっ!」



違うし!

熊五郎のためだし!

わりと快適そうだからとか思ってないし!



言い訳しながら連れてこられた部屋は、正直めっちゃ快適。


うわ~~~、実家より過ごしやすい。

落ち着くかどうかは別としてだけど。



「取り敢えず汗をお流し下さい、それからご飯を食べましょう。 私は直ぐ外に控えております」

「え、直ぐ外って、覗く気?」

「い、いや…! お部屋の外ですとも…!流石に女性に対し、そんな事しませんっ!」



ふんっ!と強気で言ってくるイケメンはちょっと可愛い。



「ならいいけどぉ~。・・・まぁ、ありがと。 そう言えば、名前、聞いてなかった…」

「ザック・ランドンと申します。気軽にザックと。 救世主様の、お名前は伺っても?」

「・・・福野 鈴音。わたしの事も、すずねって呼んでいいよ。」

「すずね…。 珍しい名前ですね」

「・・・ちょっと照れる」



勿論、珍しいって言われた方じゃなくて、名前を呼ばれた事ですよ?

なんだかんだイケメンですから。



「さっ!ベイビー、私の可愛い くまちゃん! 先ずはお前から洗うぞ!」

「う"う"わぁあん・・・!」

「だめっ!おっ前、脚とか汚っちゃねーだろう!胸の毛にも土飛び散ってんだから! あーらーうーのーー!」

「くうぅうん!」

「そんな声出したってダメっ!」



そんな私達をみてザックは、クスクスと笑い「魔物とそんな風にじゃれあってるなんて、流石 救世主ってだけありますね…!」と言う。


いやいや、さっきからなんか熊五郎の事、言ってるけど…。



「魔物じゃないし…!この子は…!愛犬の熊五郎ですっ…!」



てか魔物って…!と言うツッコミはさておき、とりあえず愛犬であることを主張。

しかしザックは不思議そうに首を傾げた。



「愛犬・・・?犬・・・? 犬、とはもっと、小柄で、可愛らしいものじゃあ・・・、」

「ぐぬぬぬ・・・、悪かったですねー!雑種でぇ~~!! お前は都会の高層マンションのペット可の住民か!」

「は…、えぇ…?も、申し訳、ない…?」

「もー、いーもーん!お風呂入るんだから…!出てって出てって!」



「ほらほら…!」と捲し立てて、部屋の外に出した。



そして拒否し続ける熊五郎を引っ張って、手際よくわしゃわしゃとシャンプー。

なかなか慣れたもんでしょ?

これでも美容師目指してますからねぇ~。

え、トリマーの間違いじゃないかって?

ちっさい頃からやってたから慣れてるんです!犬も人も大体一緒…!!



さてさて、私も ひとっ風呂、いや、ひとっシャワー?浴びたところで、あれ、着替えの服・・・。と気が付く。

流石に山を歩き回った散歩服は着たくない・・・。


ホテルみたいにベッドの上に用意されて…!・・・ない…。

じゃあじゃあ、このクローゼットの中に…!・・・ない…。


うーーん。まぁ~、ザックに聞いてしまった方が早いか!



そう思って「ねぇねぇ、着替えの服って何処かにあるんですかねぇ?」とドアに近寄りながら話し掛ける。

熊五郎は可愛いから、私の後をちゃーんと付いてきて「え?もう出る?部屋出る?」みたいな顔。

げへへ、お前はホントに可愛いねぇ。


・・・・・・


・・・・・・・・



・・・・・・・・・・って…!!


返事は!?



「ねぇ!着替えの服!!」



シーーーーン。ですよ。

え?待ってるって言ったクセに!

おいおい、ちょっとちょっと~~~~



そぉっと、部屋のドアを、少ぉーしだけ開けてみる。

すっぽんぽんだからね!見られたら大変!


って、こら!

熊五郎っ…!

鼻先でドアをグイグイ抉じ開けようとするんじゃないよ…!



「ん? もう終わりまし・・・・・・・・・」

「アっ・・・」



ぶんっ…!と顔を背けたって事は、何かしら見られたって事ですかねぇ!?えぇ!?そうなんですかい!?



「な、なな、なん、何を・・・!?」

「あ、あぇっ、あ~っと、着替えの…、服が、何処カナぁ~??って・・・」

「クローゼットの引き出しです…」

「アっ、は~~い…」



防音性能良すぎか!この部屋っ・・・!!

めっちゃ側に居たよ!!


あーあ。

金でもせびりて~。とか思いながら引き出しを開けた。

3種類ぐらい着替えの服があって、そこから一番無難な膝丈キャミソールワンピを選んだ。


わぁ~~、まるでユニクロのブラトップワンピ~。

着やすさ抜群かよ。


はいはい。

これでやっと、準備おけですー。



って、やっとこさドアを開けるも、また、ぶんっ…!と顔を背けた。

何故。



「そ、そそ、それは下着ですっ…!」

「えっ、コレ下着!?じゃ、どれ着ればいいのよ!!」

「全部です!!」

「全部かい!!」




ザック氏「女性に対しそんな事しません!」

わたし「自ら見せに行く」


うん。

何かごめん。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る