第31話 レヴェルに足りないもの 後編

「はぁはぁ、マジでキツイ……あと何分、はぁ、はぁ」

「蓮、しっかりペース考えないとやばいぞ?」

「てめぇのせいだろうが、はぁ、パブロォ」

「おー怖い怖い。えっと…本当に十周差つけるってお前何もんだよ」

「高い飯のためだ……」

そう、俺はあのあと最初から全力を出してパブロに十周差をつけたのだ。

いや、マジで十周差付けた時点で達成感が凄かったよね……そしたらパブロの野郎「終わるまでその差が保たれたらいいな」なんてことを抜かしやがったのだ。

その後は想像どおり、体力の有り余ってるパブロに「おいおい、離されるぞー」と精神的な攻撃を受け続けるという地獄が待ってたのだ。

絶対次の試合パス回してやんねぇからな……あーやばい、足もうパンパンだ。

「お前らーあと5分だー。ラストスパートを駆けろー」

「「おっす」」

監督の声が聞こえた途端、チームメイトは一気に走るスピードを速める。

「速え……」

「じゃあ、俺も上げるから蓮。がんば」

「は?……えっと、九周差になっても美味しい飯は……」

「じゃあがんば!」

パブロがいい笑顔と手のグッドを残し一気にスピードを上げる。

「えっ、その反応……残り5分、体力はもうない。ふぁーぁあ。限界を超えろ。いける、まだいける」

パブロに越されてたまるかァァァァァー。

5分後、やはりと言うべきか。俺はパブロにあれからニ周巻き返され、俺とパブロとの差が最終的には八周差となった。

「………クソがっ」

「本人が目の前にいるのに悪口を言うな、悪口を」

「これが大人のやり方か……ホントクズだな」

「おいおい、蓮さん?尖り過ぎじゃないですか?これでも二周りは年齢離れてますよ?」

「チッ」

「えぇ……そんなに美味しいものが食べたかったのかよ……」

「先輩(笑)の金で食う飯は旨いだろうよ」

「わぁーったよ。今度良い店に連れてってやるよ。俺もここに越してきて長いからな。地元の人しか知らねぇような名店に連れてってやるよ」

「……」

「え?無視?ここで無視か?」

「……」

「じゃ、じゃあ二回良い店に連れてってやるよ」

「……」

「え?二回でも無視?俺はお前の心にどれだけの傷を負わしたんだよ……えっと、3回?」

「……」

「無視か……」

するとそこにクック監督が近づいてくる。

「赤井、最初飛ばしすぎて最後めちゃくちゃバテてたな。ただ、それ続けていったら最後もバテなくなるくらい体力付くからキツイだろうけど頑張れよ。」

「はぃ」

蓮が顔を俯いたまま返事をする。

「疲れてるのか……。よし、今度俺がオススメしたい店ランキング第1位なんだけど高すぎてコーチ陣としか行ってない店に連れてってやるから頑張れ」

「はい、監督。そこにいる。自称古参フォワードとは違いますね!」

蓮が一気に顔を明るくして返事をする。

「自称古参フォワード?ああ、パブロのことか。まぁ……試合に出てるけどそこまで結果を出したかと言われると、ミッドフィルダーで出してた気が」

「か、監督。蓮の話はいいですから。次の練習いきましょう。いい感じに休憩も出来ましたし」

「そうか。よし、じゃあ蓮はあともう少し休んでていいぞ。お前らー集まれー」

監督が去っていく。

「蓮、お前……」

「先輩!僕、先輩の苦しんでる姿が見たいので頑張ってくださいね!僕はもう少し休んでから行くので!」

「めちゃくちゃいい笑顔してやがる……このあとの練習がシュート練習で人数が少ないほどキツイのを知ってやがるからか……」

「がんば!がんば!パブロ!」

「はぁ、まぁ今度俺が好きな店に連れてってやるから。すぐに来てくれよ」

「言質取ったからな。監督に良い店に連れてって貰えるラッキー」

「ラッキーって……まぁ、コーチ陣が行ってるとこ本当に凄いらしいからな。まぁ、蓮。ドレスコードとかあるかもだけど頑張って来いよ」

「おうともさ!じゃあ、シュート練行くか」

「ああ」

そしてチーナ戦に向けての練習は続く。

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