第17話 試合前の取材

「蓮くん、すまないが取材を入れてもいいか?」

「は?今ですか?」

「ああ、デビュー戦30分前の今だ」

「俺めちゃくちゃ緊張してるんですけど……」

「だからこそだよ。試合までにその緊張ほぐしとかないと本当に転ぶぞ?」

「また緊張すること言わないでくださいよ、リーナさん…」

「まぁ、もう百瀬さん来てるから、インタビュー受けろ」

「は?」

「えっと……赤井選手、こんにちは。取材に来たモデルの百瀬玲奈です。今日はよろしくお願いします」

そこにはめちゃくちゃ美人の人がいた。

……いや、奈津ねぇと楓といつも過ごしてますけどそれでもまぁ……美人な人ですね……。

やべぇ、語彙力が……。

まさにこの時、蓮は玲奈に一目惚れしてしまったのだろう。まさに玲奈が前回テレビ越しに見ていたように…

「ふぅ……。赤井蓮と言います。じゃあ今日はよろしくお願いします。えー百瀬さん」

「はい、赤井選手。試合への意気込みをお願いします」

「はい、デビュー戦なのでまずは自分の役割をして、出来れば得点を取れるよう頑張りたいです」

「私と同じ歳だなんて信じられません……」

「ちょっとだけ大人と過ごしてる時間が長いだけですよ、信介君と同じでね?」

「あっ、やっぱりあの人と友達なんですね……今めちゃくちゃ良い笑顔してましたよ……」

「ありがとうございます。美人の人に褒められて嬉しいです。他に聞きたいこととかありませんか?」

「えっと……連絡先?」

「えっ?全然良いですよ、是非あいつの恥ずかしいところでも教えてあげましょう」

「あっ、いや。ありがとうございます」

「全然。じゃあ、自分は少しアップしに行きますね」

「えっと、スタメンでは……」

『CF、Number10、REN.AKAIー』

「え?」

「俺、今日スタメンなんですよ、デビュー戦スタメン出場。勝てたら試合後、負けたら明日でお願いしますね」

「え、えっと。夢の舞台、頑張ってください」

「夢の舞台……そうですね、頑張ってきます。いい感じに緊張も解けました。百瀬さんありがとうございました。」

「えっと、こちらこそ急な取材を受けていただいて……」

「では、ハットトリックでも決めて百瀬さんにカッコつけちゃいますね」

「本当に言った……神崎さんが赤井選手はハットトリックでも決めるって言うって予言してました……」

「いや、これは電話で話しましたよ。まぁ、百瀬さん、レヴェル対オリンピア、スペインリーグ第一節をお楽しみくださいね。多分リーナさんが案内してくれると思うので」

「えっと、わかりました」

そして俺は、部屋から出ていく……。

緊張したァァァ。やべぇよ、俺。めちゃくちゃ大人ぶってんじゃん。何?大人と過ごした時間が長いだけですよって?頭大丈夫か?まぁ、いいや。ガチで得点決めて百瀬さんと少しでもいいとこ見せよう。なんか知らないけど連絡先も交換できたし……ん?なんで俺は百瀬さんの連絡先を持ってるの?まぁ、持ってても連絡出来ないけどね?

「はぁ、ちょっと走るか……」

「おーい、蓮。」

「ん?ナルダ、どうした?」

「お前遅いんだよ、監督がアップしろってうるさかったぞ。まぁ、取材のせいだろうとは言ってたけど」

「あぁ、すまん。じゃあ少し走るか」

「さっき散々走ったけどな、俺ら」

「取材受けて体が冷えた」

「動かないとそうだよな……お前今日の戦術頭に叩き込んでるか?」

「ああ、カウンター重視、前線は積極的にプレスをかける、ディフェンスもセーフティじゃなくてアグレッシブ気味、俺を中心にして攻め込むだろ?」

「ああ、俺と蓮はデータが少ないからな。マークされないだろうっていうよみからだ。まぁ、オリンピアだし蓮にはマークが一人ぐらい付きそうだけどな」

「どうにか振り払うよ、そんなことより、スルーパス頼むぞ」

「ああ、完璧なの渡してやるから。走りきってゴール決めてくれよ?」

「ああ、大丈夫だ。ちょっとカッコつけたいしな」

「ああ、百瀬?だっけか……美人だったなぁ……」

「ナルダ、手を出すなよ?」

「出すかよ、怒るな蓮。俺は仲間の女には手を出さねぇよ」

「ならいいんだが」

「そもそもまだ百瀬さんはお前の女じゃないだろうが」

「シーズンオフに告るよ」

「お前まだ会ってほとんど経ってねぇよな?」 

「運命を感じたんだよ……」

「運命って……まぁ、その人に彼氏とかがいないのを祈れよ」

「ああ、そうだな……」

まずは試合を頑張らないと始まらないからな……。それにしても夢の舞台か……いい表現をする人だな、百瀬さんって。

「ナルダ、頼むからお前の実力をだしきってくれよ?」

「はっ、俺は元ユニゾンの下部組織に居たんだぜ、大1番には慣れてるって」

「だから、俺にあんなパスを……」

「どうかしたか?」

「いや、意外にとナルダが頼もしく感じたからな、よろしく頼むよ」

「おう」

…………………………………………………………

次回ようやく試合、レヴェル対オリンピアへ

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