帰り路
ta-KC
帰り路
「お邪魔しました!!」
「気を付けて帰ってね」
〈僕〉は友達の家族に挨拶して家を出る
「じゃーなー」
友達が窓から言ってくれる
「ばいばい」
手を振り道を歩き始めた
小学校からの幼馴染
家族絡みで付き合ってるせいか
かなり帰りが遅くても特に心配もなく
家を行き来するそんな仲
「寒っ!!早くかえろ」
独り言を言いながら家へと急いだ
友達の家から〈僕〉の家までは約10分ほど
小学校の学区ないの付き合いだから家は近い
しかし、今は晩秋
夜はかなり冷える
少しでも早く帰りたい
心は急ぎ近道へと足を向ける
病院の裏・・・駐車場を横切る道
本当に少しの時間を縮める道
それでも寒さから身を避けるための貴重な道だ
タッタッタ
夜の病院の駐車場には〈僕〉の足音だけが響く
「はは。気味悪いな」
つい言葉がこぼれた
何か別の音をまぎれさせないと
気味の悪い空間
さほど大きくない駐車場だが通り抜けるまで遠く感じる
出口の方に病院の裏口があり
そこからいろいろなモノが出入りする
噂に聞くところ死んだ人もここから出され
葬儀場などに運ばれるとか・・・
しかし、長年ここを通ってるがそんな光景は見たことない
すこし歩数を多く速足で出口にむかう
空は満月、この駐車場の雰囲気をさらに不気味にする
(なんだろ?なんか嫌な感じだな今日は・・・)
歩きなれたこの道も今日はどこか違う・・・
そんな予感が頭をよぎる中、出口はすぐそこっだった
カチャ
病院の裏口が開く
「え?」
驚きそのドアに目を向ける
するとそこから茶色のコートをきた女性が
スゥっと出てきた
「!?!?!?」
驚き声を上げそうになるが何とか抑える
カッカッカ
靴を鳴らし〈僕〉が歩いてきた方向へ歩いていく
その姿を立ち止まりそうになりながらも横目で見る
(人間だよな?びっくりした・・・)
確認しながら滅多にない出来事に驚いた
時間は22時とっくに病院は閉まっており人の出入りなんて
滅多になかったのでただただ驚いた
しかし、明らかな人の姿、そして足音
よく言う幽霊という存在とは違うことに安心した
顔は見えなかったが姿が見えた足もある・・・
(大丈夫、大丈夫・・・)
自分に言い聞かせて病院の駐車場を抜ける
あと少しの帰り道、残りの道を急ぎ家に帰った
翌日
「昨日さ、あの病院の裏から人出てきてマジでびっくりしたわ」
友達になんとなく報告した
「マジで?あの時間に?それ幽霊じゃない?」
笑いながら友達が言う
「いやいや、それはないは!だって足あったし!」
「足あったっていつの時代の幽霊だよ~今どきは普通に歩くから」
再び笑って返してきた
「いや、姿も見えたし人だから」
〈僕〉も笑いながら返した
「へぇ~でもあそこマジで幽霊のうわさあるからな~」
友達はすこし真面目なトーンで話始めた
「俺の家の隣あの駐車場の入り口のところ、あそこにアパートあるだろ?」
「うん」
友達の問いかけに返事をする
たしかにすぐ横にアパートがあるが空室が目立つそんな場所
「あそこ人入ってもすぐ出ていくんだよね、幽霊出るから・・・」
「確かに有名だけど噂だろ?」
学校では有名な話よくある怪談の一種だ
「いや、マジなんだって。俺聞いたからあそこの住人の話!」
「マジで?そんなの初めて聞くけど?」
噂はよく聞くが具体的な話はあまり聞かないしかも友達からは初めてだ
「いや、あまり言う機会なかったし話しても信じないだろ?」
「そんなことないけど・・・」
その言葉にかぶせるように友達が話始めた
「一回あそこの住民の人が挨拶に来たんだ家に。滅多に挨拶とか来る人いなかったから珍しいなって思って見てたんだ~数日後にたまたま挨拶する機会あったから挨拶したら、その人の顔が真っ青だったんだ」
「・・・」
「でそこの人一か月たたないうちに引越ししたんだ。でお母さんが聞いたのはその人隣の部屋からの騒音で眠れなくノイローゼになって出って行ったって・・・でもその人の部屋の隣って誰もいなくてしかもその隣の部屋は病院の面している部屋だったんだって・・・」
「・・・・」
「な?幽霊が出ったって話じゃないけど信憑性あるだろ?」
「・・・でもな~よくある話な気もするけど」
友達の真面目な話にすこし茶化したように返す
「はぁ~やっぱり信じないよな~まぁ、俺も信じてるわけじゃないけど初日は腰の低いいい感じの男の人だったのにあの変わりようはすごかったけどな~」
友達はため息交じりに答えた
「ふーん、でも今回は違うだろ?あんなにはっきり見えたら霊能者でしょ!」
「たしかに」
お互いに笑いながらこの話は終わった
結構長いことあそこの駐車場を近道にして、あそこの怪談じみた話はよく聞くでも
やはり噂話の域をでない話でしかない怪談話にさほどの信頼はせず
お互いの暇を埋めるそんな話の一つというところにとどまった。
そんな日から数日後
学校の帰り友達の家による
少し遊んでこの日は夕方ごろに家を出た
「お邪魔しました!!」
「またな~」
友達に見送られて家路につく
また、いつものように近道のために病院の駐車場を横切る
いつかの出来事などもう忘れて、時間も違うので特に警戒することなく歩く
出口近く全く意識してない病院側すると
カチャ
胸が跳ね上がる
すぅ
茶色のコートを着た女性が出てくる
(!?デジャヴ??)
見たような景色に驚きを隠せない
また顔を確認することは出来ず髪の長いその後ろ姿をみて
妙な不安感が頭を回る
カッカッカ
またあの靴の音を鳴らし〈僕〉が来た道を逆へと歩く
その姿をジッと見つめる
今は夕暮れ17時を過ぎたころ・・・
この前に見たときよりは人の出入りはあってもおかしくない時間
だが、なぜか奇妙な感覚が残る
今までこのドアから出入りする人は見たことなかった
昼間は搬出などあると聞いたが学校の時間で見ることはない
そしてこの短期間で同じ人を見ることになるなんて・・・
(新しく働いてる人なのかな?)
奇怪なことに〈僕〉はあまり考えると怖くなりそうなので
現実味のあることに置き換えて心を落ち着ける
看護師さんなら時間がバラバラなのも有りうる
そう、これは偶然・・・
友達があの日恐怖をあおるようなことを言ったから
少し敏感になってるだけ
(そう偶然、偶然・・・)
心で唱えて出口へと向かう
あの時と同じ早歩きで敷地内から出る
「ふぅー」
息を少し長めに吐き出した
そして、大きく空気を吸い込み
深呼吸をする
少しパニックになりかけた頭がすっきりする
それを感じたので家へと歩を進めた
夕暮れの風景は少しづつ闇に浸食されている
心なしか暗くなるのを嫌いほんの少し
歩くスピードを速める速足まではいかないにしても気持ち早く
そんな程度だ
道には人はおらず街灯に灯がともり始めた
「・・・」
タッタッタ・・タタタ
またスピードを上げる
(早く帰りたい・・・)
何となくいつもの帰り道が不気味に見える
いつもは人がいないこと日が暮れることなど気にしない
だが今日は無性に気になる暗くなるのが怖かった
カッカッカ
「!?」
聞き覚えのある音に振り返る
カッカッカ
茶色のコート羽織った髪の長い女性
先ほどすれ違い反対方向に進んだのになぜ?
一度止まった足を再度家の方向に向けて走る
顔は確認できない
だから尚更怖い
どうして引き返してこっちの道に来るのか?
こちらの方向は住宅街で特に何があるわけでもないのに・・・
すこし走ったあとT字路を左に曲がる
自分のうちはあと少し、もしこの辺に用があったとしてもここまでは・・・
カッカッカ
カッカッカッカッカ
(マジかよ!!こっちに来るのかよ!!)
女性の足音が妙に響きその姿が曲がり角を曲がってくるのは確認した
急いで家の玄関に立つ
ドアに手をかけて回す
ガチャガチャ
鍵がかかってる
(こんな時に!!)
急いでカバンを探る
カッカッカっカッカッカ!!
音が勢いを増す
慌てながらもなんとか手に鍵の触感を感じそのまま引き抜き
玄関の扉へと差し込む
勢いよく扉を開けて外を確認することなく閉める
バン!!!
・・・・
「はぁはぁはぁ」
呼吸がいつも間にか荒くなっている
さすがに家までは・・・
だが、今は家に〈僕〉一人
本来ならだれかいてほしかったが鍵が閉まっていたということは
誰もいないということ母は買い物父は仕事で遅いということなのか?
どちらにしてもタイミングが悪い
扉にはのぞき穴があるが正直確認する勇気はない・・・
「部屋・・・行こう」
恐怖を消すため声を出す
しかし、うまく声が出ない
根本的に言葉がうまく出せなかった
今まで感じたことない、経験したことないこと
もしあれが幽霊でも仮に人間でも怖い・・・
とりあえず鍵をしっかりかけ自室という安全地帯へ
もちろん自分の部屋も鍵をかける
「早く・・・早く帰って来いよ・・・」
弱気になる心布団を頭からかぶり防衛する
物質的な防御はなくても心を守ってくれる
「一人でいるのは厳しいな。。。友達に来てもらうか?もしくは電話だけでも!!」
スマホを手に取りパスワードを入れて通話アプリを開く
スースースー
画面をスワイプし
友達に電話をする
♪トゥントゥントトゥントゥントトトン♪
(早く!たのむから早く!!)
♪トゥントゥントトゥ・・・
出た!!
「なぁ!!実はヤバいんだ!!だからいぇ・・・」
「・・・ワタシノコト・・・ミエルンダネ・・・・」
「はあ!!」
あまりの驚きにスマホを落とす
いや、それは投げ捨てるに近かったかもしれない
スマホの方を見て固まる
友達の声が聞こえるはずが・・・女の人声・・・
しかもはっきりと・・・
呆然とする中スマホを見ていると声が聞こえる
「おぃ?どぅし・・?きこぇ・・・?」
聞きなれた声友達だ!!
「ヤバい!マジでヤバいんだ!!頼む家来てくれ!!!」
鬼気迫る〈僕〉に圧倒されたのか、もしくはこの異様な空気が伝わったのか
友達は数分後家にきた
「家の前に女いなかったか?」
「いや、誰も・・・女に何かされたのか?」
「いや、なんというか・・・」
ことの本末を話す
「・・・・・」
「信じられないかもしれないけどホントなんだ!!電話した時も女の声が聞こえたんだ!」
「・・・う~ん、あそこの病院マジでいるんだな・・・」
友達は納得したように話す
「まぁとりあえず、帰りの近道は当分やめた方がいいかもな」
友達が続けて話す
「その幽霊も見てくれる人いたからついてきたとかさ!気にしすぎると余計悪いぞ、そういうのは。だから当分近道やめて今日のこと忘れ・・・まぁ~怖いお化け屋敷に行ったみたいな程度でとどめてさ!」
友達は精一杯の励ましを言葉にしてくれた
家族が戻るまでの間友達は一緒にいてくれた
恐怖は徐々に薄まりなんとかパニック状態から抜けた
・・・
あの日から学校帰り友達の家に行っても近道はせずに少し遠回りして帰ってる
あんなでたらめな話を信じてくれた友達はもっと心を許せるそんな存在になった
いまだにあの出来事がなんだったのか、そしてなんの意味もしくは伝えたいもの
そういうものがあったのか?・・・
忘れられない、理解もできない、はなれない声、異様な風貌、考えたり衝撃で残っているものはたくさんだ、しかし深く考えず〈僕〉の日常に戻りたいと思う
遠回りした道、突き当りによく使っていた病院駐車場の出口が見える
いくら避けても近所、見ないということ不可能。
でも、道を変えてから変わったことはないので安心している
前方に通る向ける人がいる
「やっぱ、あそこ便利だからな~」
お気楽に通り抜ける人をみてつい言ってしまった
その様子を見て自分の行く先に進路をとる瞬間
カッカッカ
(!!!)
聞き覚えある音に体が反応して振り返る
そこに茶色のコート髪の長い女が先ほどの人の後ろをついていってる
「あっっ」
抑えきれず声が出る
すると女はこちらに顔を向けてきた
前髪が長く口元しか見えない
(また?また!?あぁぁぁ!!!)
頭の中が悲鳴を上げている中
女は
口元しか見えない顔を
ニタァー
っと口元をゆがめて
さっき通り抜けた人の方へ歩き出した。
帰り路 ta-KC @take0520
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます