警告と助言 前編

「お前は、陰陽師か?」と男が近づいて語りかけてきた、

「誰だ?」

「名乗るほどのものでもないが、変な見つかり方をしてトラブルになるのも嫌だったのでな挨拶させてもらった」

と男はいうので、

私は呪を唱える「乾坤帝位 検出妖邪」

すると男の姿がぶれ、妖気が漏れる「お前ぬらりひょんか?しかも関西出身ではないだろ?」

「ご明察だ」

「何のようだ?他地方にいる奴ら見つけたら処理するのが基本なんだが?」と答える

陰陽省には話のわかる妖怪や半妖など、霊的なものに通じる人でない物に対してある種の方針を定めている、(人ならざるもの、妖怪、半妖は各地方を自由に移動する分には黙認し、その地方から移動する場合のみ確認し、必要に応じて対応せよ)というものがあり、このぬらりひょんは静岡県に基本住んでいる妖怪で、東海地方から関西に出てきているため、今回はその方針に引っかかるのである。

「そこまでぬしらの約束事は厳しくなかったはずではないか?」

「ああ、ただ確認は必須だそれによっては判断が変わる」

「そうか、今回は逃げてきた闇からな、死にたくはなかったのでな」

「静岡から逃げてきた?死にたくないので?」

「そうだ」とぬらりひょんは苦々しい顔をしながら答える。

(闇かもしかして今回の神眼がみたものはそれか?‥)

「それは人が内包している状態のものか?」

「そうだ、あの人間はかなり危うい状況にいる、すでに弱いものや浮遊霊の一部は食われた」

「食われただと?、それはつまりすでに妖怪化してるってことか?」

「いや、まだ宿主が寝静まった後に勝手に動いてるにすぎない、あいつはまだ朝日に耐えられない、だがいずれ宿主も喰らい出てくる」

「それはどれくらいだ?」

「はっきりとはわからぬが、一月もかからんだろうな」

「お主がもしかして対処に行くのか?」

「ああ、なぜだ?」

「お主に内包してるものに似たようなものを感じる、おそらく近づけば向こうから探しにくる」

「それは好都合だ処理がしやすい」

「そんな甘いものではない、それをお主は薄々気づいているのではないか?」

「忠告しておく、あれにお主の素顔を晒せば面倒なことになるぞ?」

「ぬらりひょんともあろう高名な妖怪にそう言われるとはな‥」

と少しため息を吐きながら、

「ありがたく忠告は頂いとく、とりあえず事情が事情だ今回は好きにしたらいいが誓約だけ結んでくれ」

「よかろう、我 瓊主権左郎闇が消えし暁には、住処に帰ると陰陽師に誓い、破れば死を持って償うなり」手を出したので、

人差し指をぬらりひょんの手に当て

「誓約を承認し、陰陽師八雲もここに誓願するこの請願の元なんじ権左郎の身柄を保障し、人に迷惑をかけない限りは人の約束事をなんじに当てはめぬと誓う」

「誓約符呪法印」と唱えると光の輪がぬらりひょんと私それぞれの腕にハマるように消えていく。

「ではわしはこれにて消えよう」

「ああ、じゃあな警告を感謝する」

「なに、住処を失うのは嫌なのでな」

と言い残すといつも間にかぬらりひょんは、姿を消した。

「まさかな、忠告を受けるとは‥」とため息をつきながら、レジで会計を済ませていると、スマホが鳴る。

画面を見ると(先輩ラテ頼んだんやつもうできるので早く)

と山口からのメッセージだ。

「お気楽だなw」と思いつつレジでお会計を済ませ、山口の待つスタバに向かう。

●スタバ店内

「先輩〜!!こっちですよ!(^^)」と満面の笑みで巨乳を揺らしながら私に手を振る山口、若干値踏みする視線と男の恨みつらみの念が吹き荒れたので無視して、山口の席に向かい、チョップをかます、

「いたーい!!なにするんですか!?」とほおを膨らませ怒るふりをする山口

「お前みたいにスタイル含め目立つ女はすぐ分かるからわざわざ大声で呼ばんでよろしい」

「ええ‥、そんなあたしが美人だなんて」とニヤつき笑いをかます山口

「美人とは言ってないが」というも、自分の世界に入った山口にはすでに聞こえていない。

ため息を吐きつつ、机のラテを手に取り飲みながら徐ろに

「さっき、ぬらりひょんがわざわざ俺に声をかけてきた」

「ぬらりひょんですか?関西の?」

「いや、今から行く静岡在住のやつだ」

「えっ!それって指針に抵触するので判断が必要では?」

「話を聞くと、今回の闇について詳しく警告してくれた上に自分から誓約を結ぶって言ったので、見逃した。」

「今回の件が片付き闇の気配が消えたら帰ると誓約したし気にするな」

というと、珍しく困惑した表情を山口は見せたので、

「山口分析官、陰陽師八雲の名の下に誓約したそう本部には報告したらいいこれは命令だ」と命令することにした。

「わかりました」と山口は応じる

「先輩どうします?わざわざ警告があったってことは応援呼びます?」

「いやいい、地将を呼ぶほどでもない。仮面かなんか顔を隠すものがあればいい」

地将とは、12地将のことをいい、日本の最高位の陰陽師は霊災害対策基本法制により36神将と定められその中でも、最高位を12神将、第一位を12天将とし、各地方守護担当の陰陽師として、12地将という存在が細かく分けられている。

12神将は文字通り、最強の12人の陰陽師でありそれぞれ劇的な特化型の陰陽師多くそれぞれ専従任務についている、12天将はそれを補うバランス型や戦闘特化型などの陰陽師が12人揃い日本全国を飛び回る、12地将は打って変わり1人で地将という場合もあれば、5人で1人というものや、守り特化の陰陽師など様々な陰陽師がいるそれが12地将と呼ばれる存在となり、神将・天将・地将つまり天地人の概念を取り入れたのがこの36神将という制度である。

「なんでです?」

「顔を隠すことを勧めるとやつに言われた」

「だと、現地で半面か、お面用意しましょうか?」

「そうだな頼む」

「わかりました」というと、スマホを持って山口は店の外に出る。



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