7-3:ようこそ鬼子の庵へ

 戦闘である。敵はシランと、「じいちゃん」と呼ばれた狼の2体。

 狼がやや前方に位置している。


 戦闘準備。

 PCたちが可能性付加を使用する中、シランも自身に《可能性付与》を使用した。


ソレル : 「やっぱり、契約者なんだ」

シエル : 「契約者ならやっぱり使ってくるよね!」


 魔物知識判定と先制判定は危なげなく、PC先攻で戦闘が始まった。

 狼はヴァルグと呼ばれる幻獣、シランはドルイドであることが判明した。


■1R目:PC側

 まずシエルが【フィールドプロテクション】を使用。

 続くアルが練技と【パラライズミスト】を使い、狼に攻撃し、命中。

 リズは【ショットガンバレット】をシランと狼両方に命中させ、ソレルはシランに《挑発攻撃Ⅱ》を当て、挑発に成功した。

 ハンサもシランに攻撃を当てるも、シランの防護点は9点。物理攻撃でダメージを与えるのは難しいかもしれない。


■1R目:エネミー側


 GM : シランは自分とじいちゃんに【ウィングフライヤー】、【ビッグディフェンダー/ディノス】、【リプロデューサー/ブラッディーペタル】を使用します。


 森羅魔法。

 ドルイド技能によって使用できる、莫大なMP消費と強力な効果が特徴的な魔法だ。

 いや本当に強いんだよ。なんでこれが全部補助動作なんだ。


GM : 《マルチアクション》でソレルに攻撃しますが……威力表ファンブルか。仕方ないのでソレルに【コングスマッシュ】です。


 これも森羅魔法。

 必中の物理ダメージを与える攻撃魔法だ。強い。

 これでソレルのHPは半減。

 続くじいちゃんはアルに全力攻撃を行い、HPの1/3程度のダメージを与えた。


リズ : 「くっ流石に、強いですね……!」

シラン : 「……これでも、かなり、手加減してる……」

アル : 「先手とられてたら本当にあぶなかったです……」

ソレル : 「私たちだってこれで終わりじゃないよ!」

シエル : 「皆、回復するよ!」


 2R目でシエルの【キュアウーンズ】。専業神官の面目躍如である。

 シランの森羅魔法はどれも強力だが、その多くは防御に関するものだ。シエルの【キュアウーンズ】の回復量に勝る火力を引き出すことは難しい。

 4ラウンドに続く戦闘の末、じいちゃんが倒れシランのHPも瀕死になった時点で、PC側の勝利となった。




シラン : 「……止め」

リズ : 「勝負あり、ですね」リロードしながら。

ソレル : 「ん。ありがと」

アル : 「よかったです……最後まで戦わないで済んで……」

シラン : 「十分、強い。これなら、迷宮を使っても大丈夫そうだ」


シエル : 「とりあえず回復してから話そうか」

シラン : 「…………」じっとシエルを見上げる。

シエル : 「もちろんシランちゃんもだよ」

シラン : 「……違う。ひとつ言っておくとすれば……」


シラン : すっと目をそらして

 「お前たちの言う『壁』とやらに関しては、現時点では張られていないことを前の周回で確認している。今夜中なら自由に動けるはずだ」

 「ついでに言えば、兄さんは今の時刻だと陣の屋に向かっている」

 「……会いたいなら会いに行けばいい」


シエル : 「それって、今ならリコリスに会いに行けるってこと!?」

シラン : 「そうだ。回復はこちらでする。行きたいならいけ」

リズ : 「ああ、今度こそ元カレの……」

アル : 「お噂はかねがね……」


シエル : 「教えてくれてありがと、ちょっと逝ってくるね!」

リズ : 「今アクセントがおかしくなかったか?」

ソレル : 「私たちには救えないものだから……」

シラン : 「……別に、行きたいわけではない奴らは、ついてこい」そういって、くるっと背を向けて歩き始めます。


リズ : 「いや、というか、この男、死んだことによる何かは起こっていないのかを確認すべきなのでは?」

ソレル : 「あー」

シエル : 後ろの会話をスルーして走り出してますね。(一同笑)

アル : 「えっと……もういないみたいですけど……」


リズ : 「死んでも、治らない……」

ソレル : 「また今度でもよくない? リコリスに会えるチャンスも少ないだろうし」ため息。

リズ : 「まあ、本人もいないですし、そうするほかないですね」

ソレル : 「恋はなんとやら、だよね」


アル : 「っていうかどうして死んじゃってるはずのシエルさんが一緒に……」まだ疑問。

リズ : 「ご主人様にはーこれから懇切丁寧にご説明させていただきますね!」

アル : 「は、はい。よろしくおねがいします……?」

ソレル : 「という訳で私たちはシランに着いていくね」




GM : では、まずはシランについてくる組から描写しましょう。


 すたすた歩くシランについていく一行。

 森の中をしばらく進めば、枯れた木々の立ち並ぶ場所にたどり着く。

 ソレルは一度来たことがある、「鬼子の庵」だ。


ソレル : 「あ。ここかー」

GM : ただ、建物の様子だけはその時と若干様子が違って……建物の壁に、交易共通語でなんかいろいろ書いてあります。

 「死ね」「鬼は消えろ」……など。誹謗中傷の落書きが建物の壁に大量に、顔料のようなもので書いてあるようです。


シラン : 「……はあ。少し離れるとすぐこれだ。掃除が面倒だな……」

アル : 「……」悲しそうな顔

リズ : 「見るに堪えませんね」

ソレル : 「なんか前来た時と雰囲気違うけど?」

シラン : 「まあ、よくあることだ」


GM : シランはため息をつきますが、面倒そうな顔はするものの、それ以上の反応は示しません。


 扉を開けて冒険者たちを招き入れながら、シランはぼそりと囁いた。


シラン : 「ようこそ、”鬼子の庵”へ」

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