6.5-6:そして三度、幕は上がる

 次の瞬間、全身に、凄まじい圧がかかっていることを認識する。

 圧によって身体中が殴りつけられるような痛みともに、轟音が耳をつんざく。


 叩きつけるような雨の音と、ごうごうと唸る水の音。

 

 こんにちは、また会ったね。

 濁流です。


 アル : ひぃん。

 リズ : 「死ーぬー!!!」


 GM : あ、シエルさん。

 シエル : はい。

 GM : 貴方も、意識が急浮上した、と思ったら濁流です。

 シエル : はい。


 シエル : 「......え、え、……はああああああ????」

 ソレル : 「もう慣れちゃったかも……(種族特徴:優しき水)」

 アル : 6レベルになりましたから、補助動作で獣変貌します!


 冒険者達は川の真ん中で、半ば折れている倒木にかろうじて引っかかっている状態だ。

 筋力でなんとかして這い上がらなくては、流されてしまうだろう。


 GM : なんだか見たことある状況ですが、冒険者Lv+筋力で目標値20の判定をどうぞ。


 ソレル : 私は優しき水の効果で、ひとりは助けられるんだよね。シエルを助けるよ。「やっぱりいた!!」と手を掴む。

 シエル : 「そ、ソレル!?」

 リズ : 「ご主人様……! 今度こそ、生き残りましょう!!」気合を入れて濁流にあらがう。

 アル : 「わふっ!」


 ……が、駄目……! アルとリズのふたりは、どちらも達成値18。


 ソレル : 「あの主従二人は……」

 シエル : 「一瞬短い悲鳴が聞こえたような……」

 ソレル : なら……【アライ・シージ】だ。

 GM : ほう!


 【アライ・シージ】。

 ルフラン神のプリーストにのみ扱える、特殊神聖魔法のひとつだ。

 その効果は以下の通り。


○レベル2:アライ・シージ

対象:1体全 射程/形状:2(30m)/起点指定 時間:一瞬 抵抗:消滅

消費mp:3

「術者が同陣営だと認識している」キャラクター1体を、自分と同一座標に呼び寄せます。

※GMメモ:「レスキュー」の呼び寄せに主動作が必要になった代わりに、数拡大できるようになったようなものだと思うと使いやすいかと。ちなみに、術者が同陣営だと認識していればエネミー側でも(抵抗を抜けば)手元に呼べます。



 ソレル : 「みんな同じ仲間、だから」

 「【アライ・シージ】!」


 GM : 素晴らしい。では、アルさんとリズさんのおふたりは、その魔法によって倒木の上に一瞬で転移します。


 リズ : 「――げほげほ、助かりました……ありがとうございます」

 アル : 「こんな魔法使えたんですね、ソレルさん……けほっ」

 ソレル : 「うん、生きてるから大丈夫!」

 「(なんか、最初にリコリスにあった時のこと、思い出しちゃうな)」

 リズ : 「さて、誰か歩いてきますかね……?」


 シエル : 「いや、ちょっと待って、僕まだ事態が飲み込めてないんだけど……。」

 リズ : 「あ、生き返ってる」

 アル : 「生きてますね……!」

 シエル : 「なにまるで人が死んでたみたいな言い方」

 ソレル : 「後で話すから」


 GM : いや、お見事。本当にお見事。――とこの場で思っているのは、GMだけではなくてですね。


 「……驚いた。やりすごしたか」


 倒木近くの川岸の辺りから、声が聞こえた。

 振り向けば、ひとりの女性が目を丸くして佇んでいることに気付く。


 シラン : 「――そこのエルフ。ならば聞こう」

 「お前、これで何回目だ?」


 そう問うてきたナイトメア――シランの背格好は、女性のそれであった。


 リズ : 女の子ですね!

 シエル : つまり……リコリスは男ってこと!

 リズ : いやっふーーーー!

 シエル : これさ。三つの滝付近に、偶然三人がそれぞれ通りすがっていたってことだよね?


 にわかに盛り上がるPL陣。大体お察しの通りではある。


 ソレル : 「私は、これで3回目」

 「約束通り、会いにきたよ。シラン」


 GM : シランはその言葉にすっと目を細めて、首を細めます。そして、彼女の隣に佇む狼が遠吠えを上げる。


 オォ――ン――……


 見覚えのある島の風景に、狼の遠吠えが響き渡る。

 冒険者達は三度、この島へ降り立った。

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