6.5-5:死人の夢

 君は、暗闇の中にいる。

 あらゆる感覚は、水中のようにおぼろげだ。音も、光も、皮膚感覚も、すべてがゆらゆらとして曖昧である。


 そんな中に、気が遠くなるくらい長い時間、一人でいた気がする。

 ……ふと、目の前に何かがあることに気が付いた。

 瞬き数回後、視界だけが少しだけクリアになった。


 目の前にいるのは、氷の塊だ。

 その中に、黒髪の女性が眠っている。

 ――瞬きをもう数回だけした後、君はその女性に奇妙な既視感を覚える。


 誰かに、そっくりだ。

 誰か――シエル・ツィカーデ――そう、君自身にそっくりだ。


 それに君が気が付いたとき、不意に、耳元で鮮明な声が聞こえた。


 女性の声だ。



 「いっかいめ」



 そう聞こえた瞬間、君の意識は急速に浮上する……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る