6.5-3:ナンディナの証言

 GM : 当然ながら、リズとアルの姿がその場から消えた後、ディナは当惑して周辺を探し回りました。しかし、いくら探しても見つかるはずはなく。時間だけが過ぎていきます。



 混乱のさなか、騎士としての徹底した訓練が彼に冷静さを取り戻させたのか。あるいは生来の生真面目さがそうさせたのか。

 しばらく後に「任務を優先すべきだ」と我に返ったナンディナは、その場に倒れ伏していたリコリスを背負って騎士団に合流。部下にリコリスを預け、騎士団の指揮に戻った。


 本土からの情報とレイダーの記憶から『ライオネット・ティア』と推定された吸血鬼は、レイダーとナンディナの連携によって討たれた。しかしレイダーはその戦闘で重傷を負い、戦線離脱を余儀なくされたという。

 それ以降、戦線における指揮のトップは、実質ナンディナが務めることとなった。



 ナンディナ : 「もともと、あの館で襲い掛かってくる敵はライオネットと、皆さんが最初に戦っていたルーンフォークのみでしたので、屋敷の鎮圧は滞りなく終わりました」


 シエル : 『手が空いていた部下にリコリスを預けた』、この表現にめっちゃ嫌な予感がするんですけど。


 ナンディナ : 「ただ、ディナはリズ……殿から聞いた『緑髪の男』の情報が気にかかり、鎮圧後もまずは屋敷の探索を優先しました」

 「それで、お聞きした通りの風体の男を、発見することはできた、のですが……」

GM : ディナは一瞬口ごもり、「後ほどご説明いたします」と呟きます。


 アル : もったいぶりますね~。

 ナンディナ : だって本題じゃないし!

 アル : そういえば、オーウェン先生って元からルフラン島の人でしたっけ?

 シエル : そこら辺わかってないんだよね。


 ナンディナ : 「いずれにせよ、我々は館を鎮圧することには成功いたしました」

 「ただ、厨房から火が出ておりまして。山火事ならぬ森火事になりかけておりましたので、それの鎮火に手間取り……すべてが終わったのは夕方頃でした」


 アル : GMさんがまた森を焼いてます!

 SGM : 癖になってるんですね。

 GM : 未遂じゃん!!!


 本キャンペーンのGMは森を焼きがち、という説が、極一部で何故かまことしやかに囁かれている。


 リズ : そんなによく焼くんですか(笑)

 GM : 焼いてないもん……毎回未遂だもん……。

 ソレル : 墓と本は焼いてたことあるね。


 ナンディナ : 「その後、鎮圧が終わったと判断した我々は近場に天幕を張り、休息をとることにしました」

 「そしてセルフィが伝えてくれた情報を元に、数名の精鋭を地下室に送り出しました」

 アル : 「それで、どうだったんですか……?」地下室に充満した匂いを思い出しなら

 ナンディナ : 「……誰も、帰ってきませんでした。――代わりに屋敷から、魔神が溢れ出してきたのです」


 正確な時間は覚えていない。

 ただ、夜の闇の中から突如として、つんざくような悲鳴と轟音が響いた。

 ナンディナ達が天幕の外に飛び出した時にはすでに、周囲は魔神で溢れていたという。


 シエル : 現代で屋敷の地下の扉を開けていた戦犯がいましたね?(一同笑)

 アル : え? 誰ですか、そんなことやったの? ←(覚えていない)

 シエル : そっか忘れてるんだ。よし、バレてないな!

 GM : 何言ってるんですか。確かに扉は開けましたが、何もせずに閉じたじゃないですか。

 ソレル : 渾身の「まだダメ……(絞り出すような声)」がね。(一同笑)



 大量の魔神を相手取った戦闘は、数時間にも及んだ。

 多くは低級の魔神であったが、なにせ数が多い。

 いつしか何体かの魔神が防衛戦を抜けて、街に辿りついてしまったのだ。

 ここまでか、と誰もが最悪の事態を覚悟した、その時であった。


 歩み出たカルミアがルフラン神への祈祷を行った瞬間、魔神達が跡形もなく消え去ったという。



 ナンディナ : 「……ディナはあいにく、その現場を直接目にはしておりませんが」

 ソレル : カルミアの方を見てます。

 アル : 「カルミアさんが……ルフラン様に……」

 リズ : 「そう、なのですか? カルミアさん」

 カルミア : 「……わたくし、が……」ぼうっとした様子で呟く。


 ナンディナ : 「……実際、魔神は跡形もなく消え去ったのです。それ自体を疑っている訳でもありません」

 ナンディナ : 「敬虔な信徒の祈りが神に届き、奇跡がもたらされた。素晴らしいことだと思います」


 ナンディナの視線は、カルミアを捉えている。まるで見定めるかのように。


 ナンディナ : 「でも。だったら、どうしてあなたは『覚えていない』と証言したのですか?」

 カルミア : 「……それは……本当に、覚えていなくて…………」

 ナンディナ : 「……本当に? 本当のことをおっしゃってください」


 嫌な沈黙が流れる。

 その静寂を打ち破ったのは、小さな挙手だった。


 アル : 「それ、ちょっとだけならぼくが分かるかもです……」

 ナンディナ : 「……アル殿?」

 アル : 「前のループの時、ぼくにはずっと『助言者』がついてました……ぼくの姿をして、この人の言うことに従ってれば全部がうまくいく、そう思っていた存在が」


 ナンディナ : 「……助言者……?」

 アル : 「ぼくはその『助言者』の正体は分かりません……ルフラン様かと思ってましたけど、今は違うかもとも思います」

 ソレル : いぶかしげ。

 アル : 「その言うことにぼくは従ってたんですけど……15年前のカルミアさんもぼくと同じ『助言者』の言うことを聞いてたみたいなんです」


 GM : あ、アルさん。今のとこ大丈夫ですが、あの公開条件はまだ続いてますのでお気をつけてください。

 アル : は、はい。

 シエル : なんなんだ一体……・


 ナンディナ : 「……そう、でしたか。それでは、ディナがした対応は間違ってなかったのですね。お嬢さん」

 リズ : 「対応と言えば。あの、神官にこれをいうのはなんなのですが、シエルさんのご遺体はどうなさったのですか? 蘇生は行いましたか?」

 ナンディナ : 「ああ、はい。丁重に埋葬させていただきました」


 GM : きょとんとした顔で返答してきます。騎士団に蘇生の選択肢はなかったのでしょう。

 ソレル : お墓はどこに?

 GM : 尋ねれば分かりますが、ルフラン島の共同墓地に埋葬されたようです。


 ナンディナ : 「その、シエルさんはですね。彼にはノスフェラトゥの僕だったのではないかという懸念が……あったはあったんですが……」

 ソレル : 「あぁ……」

 アル : 「そういえば……」

 ナンディナ : 「遺体には罪はないという話になり、ちゃんと丁重に葬送させていただきましたので……!」


 リズ : そりゃ生き返らせませんね。

 シエル : 何も言い返せない。

 GM : さて。ナンディナは大体話し終えた顔をしています。なにかあればどうぞ。


 アル : 「そういえば、屋敷にいた緑髪の人の話をしていましたけど、その人は……?」

 ナンディナ : 「(目をそらす)……その、あまり気持ち良い話ではないのですが。お聞きになりますか?」

 ソレル : 「聞いときたいな、私も」

 アル : 「は、はい……」ちょっとおじけづくけど。

 ナンディナ : 「……では、お伝えいたします。我々が発見した時には、ですね」

 

 ナンディナが言うには、発見時には既にオーウェンは死んでいたという。

 現場の状況から見るに、彼岸花の毒による服毒自殺ではないかと思われるそうだ。


 ナンディナ : 「ただ……死因を確認する前に魔神が出てしまいまして、後には残骸しか残らず……」小声。

 アル : 「そう……ですか……」

 ソレル : 「オーウェン先生が、そんな……」

 リズ : 「ああ、その方が前にお世話になったという先生だったのですね。リコリスさんはその後は?」

 GM : ではその名前を聞くと、ナンディナの顔がちょっと引きつります。


 ナンディナ : 「リズ、謝らなくてはいけない。知り合い、みたいなものだったんだよな?」

 リズ : 「ええ、まあ、一応……(仲間の昔の恋人というくらいには)」

 シエル : 恋人()


 ナンディナ : 「そこのお嬢さんのだんまりについて、ディナ達が困惑したのはその件についてなのだ」カルミアを見て。

 カルミア : 「……違います」

 ナンディナ : 「そうだな。君が本当に『あの時』、ルフランの儀式を行っていたのであれば、君は容疑者から外れる。なのに君が覚えていないというから、我々は君を監視し続けなくてはいけなかった」

 カルミア : 「嘘はつけません、覚えていないんです。でも、あたしじゃない……」


 シエル : 容疑者?


 ナンディナ : 「……魔神騒動の直後、騎士団の中で」

 「心の底から忸怩たる思いだが、不祥事が起きた」

 アル : 「不祥事……?」


 ナンディナ : 「尋問のために確保していた銀髪の女性。君たちがリコリスと呼んでいた方は……」


 「亡くなってしまったのだ。隔離していたはずの、イグナチオ別邸の中で」

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