6.5-2:本当にいろいろあった
冒険者たちは、不意に食喜が緩んだのを感じた。
肌を刺すような冷気は消え、生暖かい風が頬を撫でる。
GM : あなたがたはループ前にたどりついた、海岸洞窟に戻ってきています。
ソレル : 「戻ってきた……の?」とりあえず周囲を見回す。
リズ : 「(ふらりとポシビリタスを構えながら)また、ここからなんですね」
ソレル : 「あ、手元にないと思ったらリズがもってたんだ」
リズ : 「はい。すみません。契約者となってしまいました。色々あって」
本当にいろいろあった。
ソレル : 「そっか。ごめんね、巻き込んじゃって」
リズ : 「いえ。死ぬのは怖くありませんから」
ソレル : 「私がもっとしっかりしてたら……って、もう契約終わってから言っても遅いよね」歯噛みします
ソレル : 「きっとリズが契約したってことは、それなりの理由と意志があるってことだもん。それは尊重するよ」
リズ : 「ありがとうございます。あとで、すべてお話いたします……お時間かかりますけど、呆れずに聞いてください」
ソレル : 「わかった。大丈夫だから」
リズ : 「……さて、なんか一人で頭ぶち抜かれていた神官はどうなりましたかね?」
ソレル : 「えっ?」
GM : それではあなたがたはそんな話をしながら、意識的にか、無意識的にか、いずれにせよあたりを見回すことでしょう。
ソレルとリズ。
倒れ込んでいるアル。
冒険者たちを見て、怯えたように後退りするカルミア。
GM : 以上になります。
ソレル : あとハンサ!
SGM : なんか足りなくない?
アル : PL3人の方が4人より日程調整も楽ですから……。
そういう話なんだろうか。
GM : あなた方は『一人足りない』ことにすぐさま気が付くことでしょう。
ソレル : カルミアを確保してから、あれ? ってなります。
リズ : 「……あれ? シエルさんは?」
GM : 頃合いを見て、アルさんも起こしてあげてくださいね。
リズ : ですね。気まずいですが……ご主人様ー……起きてくださーい……。
アル : 「ん……(起きた)。……リコリスさんは!? ぼくはちゃんとあの人を……!」
リズ : 「ちゃんと……なんです?」(片手にガンを握る)
アル : 「……ぁ。……ぼくは……どうして……」泣き崩れます。
リズ : 「……! ご主人様ー!!」(ぶわっ)
「ごめんなさいごめんなさい痛かったですよね、痛かったですよね!?」
アル : 「ごめんなさい、リズさんも……みなさんも……ごめんなさい……」すがるようにして泣いています。
SGM : 人をぶん殴った後に謝る人、好きです。
アル : いやあの時は裏切り者でしたから……。
リズ : リコリスを殺そうとしたことを、ソレルさんに説明します。
ソレル : 「ええ………」ドン引き
リズ : 「おかしいですよね、どう考えても、全部おかしいですよね」
ソレル : 「うん、おかしいと思う。私そんな声聞こえてないし」
リズ : 「ルフラン神を騙る邪神かなんかがいたとか、ご主人様魅了されたとかなにか……」
ソレル : 「オーウェン先生が言ってた森の邪教みたいな話もあるし、ある線だと思うな」
GM : 森の邪教……ティダン、ライフォスかな?
リズ : 「うーん……シエルさん、何か知らな……って、いないんでした」
ソレル : 「さっき頭を撃ち抜かれたとか物騒なこと言ってたけど?」
リズ : 「はい、推定リコリスさんに頭を撃ち抜かれて死にました。何故かどんどん前衛に近づいて行って」
ソレル : 「あちゃー、戦死した扱いだったらティダン神殿あたりで合祀になってそうな気もするけど」
GM : ……さて。そんなことを話している間。アルさんも、あの作戦で亡くなった仲間であるシエルのことに心を痛めながらも、落ち着いてきたらあたりを見回すことでしょう。……痛めてますよね?(一同笑)
アル : 痛めてますよ!
GM : よかったー。ではあなたは、仲間が揃っていることや現代にかえってきたことから、わずかばかりですが安心するでしょう。心の内にあった焦燥感も、今はありません。
ここで、GMから回復の提案。
リズのヒーリング・バレットやソレルのキュア・ウーンズもあってか、一同の心身も徐々に落ち着きを取り戻してきた。
GM : さて、みなさん。これからやりたいことなどあれば事前に聞いておいてもよいでしょうか?
ソレル : カルミア主観での15年前の話を聞くのと、あとは館に行くくらいかな? アルから話も聞きたいけど。
アル : はい(はい)。
GM : ……シエルさんのことは探そうとしませんか?
リズ : 探そうとはしますが、念入りではないくらいで。
GM : なるほど。では皆さんがそんな話をしていますが……アルさん。
アル : はい?
GM : あなたは、「この人たち何言ってるんだろう……」って思います。
PC一同 : !?
GM : あなたはこうも思います「15年前に亡くなったのはシエルさんだけじゃないのに、どうして他の人は探そうとしないのだろう」と。
アル : はえー……。
ソレル : 頑健とっててよかったー! やっぱHPなんだよ!
ソレル : 「どしたの、そんなぽけーっとした顔してさ」
リズ : 「そうですよ。速くシエルさんを探しましょう?」
アル : 「あの~……なんでお二人ともシエルさんだけ探そうとしているんですか……?」どうして特別扱いを……?
ソレル : 「え、シエルは一緒にパーティ組んでたじゃん」
リズ : 「セルフィさんのお墓とか探すのはおかしいですよね?」
アル : 「そうですけど、この時間軸でここに来たのはここにいる4人だったでしょう……?」
リズ : 「え」
アル : 「ほら、船とか4人で狭いって言ってたじゃないですか」
ソレル : 「え」リズと顔を見合わせよう。
リズ : 「ご主人様、もしかして、シエルさんの記憶がないのでは……?」
ソレル : 「でもシエルって名前は出てきたし……?」
アル : 「シエルさんの記憶はありますよ? 15年前に出会って一緒にパーティーを組んだじゃないですか?」
リズ : 「え、え? ほら、思い出してくださいよ!酒場で!身の丈に合わない依頼受けようとしてたシエルさんですよ!」
アル : 「……? シエルさんがそんなこと……?」
リズ : 「ど、ど、どうしましょう……? どうしたら……」
ソレル : 「むー」
アル : 「えっと……リズさん、ソレルさん……?」何かおかしいことに流石に気づいてきた
GM : というわけでみなさんお待たせしました、今キャンペーンにおけるループ内死亡者に関する処理の公開です。
■ループ内死亡者処理==========
ループ内で死亡した人物は、当然ながら「現代」でも死亡している。現代時間軸からは、跡形もなく消え去っている。
世間としては『15年前にルフラン島に突如として現れ、死亡した人物』として記録・記憶されているが……現代時間軸におけるPCの人生は、15歳未満の人物であれば「そんな人物はそもそもこの世に存在しなかった」とされているし、15歳以上の人物であれば「(年齢-15)歳の時に何らかの要因で死亡している」という風に過去が改変されている。
ループ終了(可能性固定)時にポシビリタスと契約していた人物だけが、過去改変前の現代の記憶を有している。
しかし、もしこの状態で再度ループした場合は、ポシビリタスの能力により「生存していたら、ループ開始時に居たであろう場所」に復活する。
この処理は蘇生ではないため、穢れなどはたまらない。
ただし、穢れがたまらないとはいえ、死亡ペナルティが全くないとは限らない(GM側では死亡回数をカウントしている)。注意すること。
また死亡時はソードワールド2.5の一般ルールに則り、(たとえポシビリタスの契約者であっても)復活者は死亡時から一時間前までの記憶を失うことになる。
====================
ソレル : アル視点のシエル、大分ヤバい奴になってそう(一同笑)
GM : アルさん視点のシエル、ほんと知らない男の名前叫んで狂ってた男という印象しか残ってない可能性が高いですね。
シエルという少年は、この世界に存在していない。
PCたちは、最初から「5人」だった。
GM : そういうことに、なりました。
アル : 5人……カルミアさんも入れて、ってことですか?
リズ : この過去なら、リコリスさんが生きているかもしれません。
ソレル : ……ともかく、館に行ってみようか。
GM : では、あなたがたは海岸洞窟の階段を足早に上って、館への森を駆け抜け……る、その途中。
「……そだ」
「――って――!」
GM : あなた方は、あなた方のものではない「誰か」の、掠れたような声を聴きました。
アル : カルミアさん……ではなさそうですね。
ソレル : どっちから聞こえる?
GM : んー、多分屋敷のほう……かな? 周囲を見渡しても、ほかに人影はありません。ただし、がさ、と明らかな異音がします。
がさがさがさ。
がさがさがさがさ。
大きな音を立てて揺れる茂みからひょっこりと、小さな影が現れる。
GM : それは君たちが現代で見慣れた、しかしそういえば先ほどは見当たらなかった……トラ猫、とらの姿でした。
ソレル : 「ねこ!」
リズ : (そっと銃を隠す)
アル : 「久しぶりですね……!」
GM : ……船で出会って以来、あなた方に静かに付き添っていた、虎猫の「とら」です。とらはあなたたちを認めると目を丸くしていたのですが……。不意にその身を沈め、後ろ足で地を蹴ってくるりと宙を舞います。
愛らしい虎猫の登場でほっと息をつく面々。
そんな中、ふとソレルが呟いた。
ソレル : 「……なんかさ、変なこと言うみたいなんだけど」
「ねこの目、ディナの目の色に似てるよね」
リズ : 「え!?」
ソレルの言葉がそう響いた瞬間――。
「リズ――っ!」
目の前で虎猫が消えたかと思った瞬間。
リズの身体は、あたたかなものに抱きしめられた。
リズ : 「きゃっ……!」
GM : 気が付けば、ナンディナが、泣きそうな顔をしてリズさんの背中から抱き着いています。
ナンディナ : 「どう、して。どうして今まで気づかなかった――!! リズ、……リズ――!!」
アル : そっか、練技!
GM : はい、皆さんもうお察しかもしれませんが……ナンディナです。
《シェイプチェンジ》。
自身の身体を小動物に変化させる練技だ。
虎猫の正体は、練技によって変身したナンディナだったのだ。
リズ : 「え? は? ああ!? ディ、ディナ!? ディナなの!?」
ソレル : 「わお」
アル : 「ディナ……さん……!?」
GM : 彼は呆然とした顔ながらも、もう絶対に離さないと勢いでリズさんの後ろからしがみついている。の、ですが……。
PC一同 : ?
GM : その……服が……。
PC一同 : あっ。
GM : 皆さんがそれに気付いたとほぼ同時に、ナンディナ自身もそれに気が付きます。
それは誰のものだったのか。ひゅっ、と息を飲む声が聞こえ……。
ナンディナ : 「わーーーーーーーーーーー!!!!!!!!????」
ソレル : 毛布を投げつけます。
「いいからそれ羽織ってて!!!!!」
GM : ではソレルさんの声と共に投げ入れられた毛布にもの凄い勢いで手が伸び、そのまま茂みに姿が消えていきます。
リズ : うーん、なんでしょうこの熱い展開は。ディナに恋まではいかないけど慕情の感情を抱いているんですよね。
アル : WAWAWAWAWAWAWAWA。
SGM : 差分は?
シエル : SGMが描いてくださるんですよね?
SGM : すいませんでした。
ソレル : 「ふー、間一髪だったね」腕で額を拭う仕草。
リズ : 「え? 何が起きたんです?」手が離れたのでやっと振り返ろう。
アル : 「えっと……ディナさんが……そこに……その………………裸で……」
リズ : 「裸!?」ちょっと赤くなる。
GM : しばしの後、毛布を羽織ったナンディナが茂みから半泣きの顔を出します。
ナンディナ : 「た、たたたたたた、た、た……っ、大変、お見苦しいところをっ」
GM : 正座で謝罪してきます。
ナンディナ : 「そういう……そういうつもりではなかったんだ、信じてほしい……」
リズ : 「え、え、え、え、えと……。わたし今ちょっとものすごくこんらんしている……」頭から煙が出てます。
アル : 「リズさん!落ち着いてください……!」
ソレル : 「うんうん、色々言いたいことはあるけど」
リズ : 「お、落ち着きますがんばります落ち着きますからちょっとご主人様あたま撫でていいですか」
アル : 「は、はい……?」
ソレル : さっきまでのシリアスはどこへ……。
シエル : ところでみなさん、僕のこと完全に忘れてません?
ソレル : いたっけ。
リズ : だれだっけ。
シエル : サヨナラ!
にわかに盛り上がるPC陣。対するナンディナは、うろたえるリズの顔を正座のままぼんやりと見上げていた。
ナンディナ : 「……リズは、本当に変わりなく……」
GM : 本当に、変わりがない。そういって、彼は静かに頭を垂れます。
ナンディナ : 「……すみません。落ち着きます。落ち着くので……少々お時間をください」
リズ : 「駄目。無理」ディナの頭も撫でて抱きつき返します。
ナンディナ : それは落ち着けない。顔から火が噴出して倒れます()。
ソレル : 「わー!?」
閑話休題。
お互いが落ち着きを取り戻した頃、ナンディナがぽつぽつと話し始めた。
ナンディナ : 「……すみません、何分、急に頭が混乱したと言いますか」
アル : 「とらがディナさんだったなんて……びっくりです……」
ナンディナ : 「……はい。ナンディナであります。皆様、お久しゅう……と今更言うのも変な話ですが、ご挨拶が遅くなりました」
ナンディナ曰く、PCたちの話している言葉を“急速に”理解し始めて、頭の中がいっぱいになってしまったという。
今の今まで、「あの時」のPCたちと現在のPCたちが、頭の中で結びついていなかったという。それが急速に繋がったことで、混乱したらしい。
GM : ナンディナはリズさん……のことはまだまともに見れないので、リズさんの銃を横目で見ています。
リズ : こっちも赤くなってそっぽ向いてるからおあいこですね。
ナンディナ : 「……察するに。あなた方がこちらで話していた『ループ』とやら、の影響ですね?」
GM : 当然ながら、虎猫が耳をそばだてていた情報は、ディナも知っています。
ソレル : 「察しが良くて助かるよ」
リズ : 「それで、なんで私たちと一緒にいたんです?」
ソレル : 「それそれ。私も聞きたかった」
アル : 「カルミアさんの荷物の中から突然出てきましたよね……」
リズ : 「猫だと思って普通に生活しちゃってましたけど……変なとこ見てないですよね?」
ナンディナ : 「……み、みていないっ。誓ってそのような場面は見ていない! きちんと目をつむっておりました! ――いえ、そうではなくて」
ナンディナは居住まいを正すように大きく深呼吸をして、カルミアに視線を移した。
ナンディナ : 「――それは、こちらのお嬢さんが一番お分かりではないでしょうか?」
カルミア : 「……っ」
ソレル : 「んー?」
ナンディナ : 「……いえ。より、誠実に言い直しますと……こちらのお嬢さんがおわかりではないか、と思い、そばをつけて参ったのです」
ナンディナは静かに問いかける。
「あの時」、何が起こったのか。
本当はこの島で何が起こっていたのか。
ナンディナ : 「どうか、下賤の身にもわかりますよう、教えてはくださいませんでしょうか」
そうしてナンディナは小さな声で語り始めた。
リズが目の前で消えたあと、彼があの場所でどうしていたのか。
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