6-10:神様の言う通り

 リコリスを連れて逃げるアルと、それを追うリズ。地下室へのルートのことを思い出したアルは、東側の廊下を曲がり地下に向かおうとしていた―――。


 GM : それではアルくんが地下への扉に向かうと、緑髪の青年と鉢合わせます。オーウェンですね。

 アル : あっ。

 オーウェン : 「そうか、逃げるのかリコリス」

 リコリス : 「せ、んせ……っ、違う、僕はっ!!」

 オーウェン : 「違わなくていい。まあ、いいんじゃねーか? 逃げろよ」

 リコリス : 「―――え?」

 オーウェン : 「いいぜ、逃げろよ。お前が生きてりゃそれでいい」


 ソレル : 泣いちゃった。やっぱおかんなんだわ……。

 GM : 戦場に似合わぬ優しい声で囁く見知らぬ青年の声に、リコリスの瞳が一瞬揺れます。そこに畳みかけるように……。


 オーウェン : 「『逃げろ』。な?」

 リコリス「……」


 GM : ……さてここでアルさん、[異常感知判定/18]をどうぞ。

 アル : え。た、高いですね……(ころころ)……し、失敗です。

 GM : はい。では、あなたは一瞬「誰だこいつ」と警戒するのですが、「逃げろ」という言葉を聞いた瞬間、リコリスの抵抗が急速に弱まったのを感じました。

 リコリス : 「………………」

 オーウェン : 「頼むぞ、お嬢ちゃん」

 GM : そう言って、彼は食堂の方に去っていきます。


 アル : 「……行きましょう。みんな救える……はずなんです……」

 リコリス : 「―――……。わか、った……」

 GM : それではあなたは、不思議なくらい従順になったリコリスを連れて、階段を駆け下りていく。

 アル : 「急ぎましょう。ここからなら安全に出られる……はずです」地下に入ったくらいで、白装束は脱いじゃいます。

 GM : リコリスは、装束を脱ぎ捨てた君の素顔にぎょっとします。

 リコリス : 「お、女の子だったのか」

 アル : 「いえ、ぼくは男ですけど……って今はそうじゃなくて!」

 リコリス : 「えっ」

 アル : 「後さっきは勝手にリカント語でまくしたててすみませんでした……」

 リコリス : 「あ、えっと、う、うん」

 アル : 「変貌中はリカント語しか喋れないのついつい忘れちゃって……ってそうでもなくて!」ちょっと恥ずかしそうに「今は逃げましょう。どこか静かな場所に!」


 そうして戸惑いながらも地下通路に侵入すると、そこは凄惨たる有り様であった。

 赤い絵の具を引きずったような跡が点在し、鼻をつく鉄さびの臭いがその正体を如実に物語っていた。


 GM : それをみると、リコリスはぎょっとした顔で青ざめます。

 リコリス : 「ま、さか……」

 GM : そして、カルミアが言った通り、通路途中に簡単なバリケードが存在します。破壊するなら、[冒険者Lv+筋力/13]です。


 アル : 主動作で獣変貌して壊します(ころころ)……達成値19!

 GM : ではバリケードは粉砕されました。横でリコリスが「ひょえ…」ってなった。

 アル : 「大丈夫です!行きましょう!」


 GM : 君たちが地下通路を駆け抜けると、彼岸花の花畑にたどり着きます。

 アル : 「……」セルフィさんのことを思い出してる

 GM : 今のアルさんはここからしばらく離れたところに、神殿騎士たちが待機していることを知っています。ただし距離があるので、大きな声を出したりしなければ気づかれないでしょう。

 アル : 「……少し離れたところに神殿の人がいるんですけど、見つかるとちょっとまずいかもです……。静かにしてれば大丈夫です」

 リコリス : こくこく。頷いた。死にたくはない。

 アル : 「それでさっき話そうとしてたことなんですけど―――」

 リズ : ではそこに走りこんできます。「ご主人様……!」

 アル : 「リズさん……!」

 GM : 記憶無い二人が生き残って合流してるの、不思議な感じがしますね。


 しばし、お互いの無事を喜び合う二人。だがリズの表情は硬く、その声は少しだけ震えているかのようだった。


 リズ : 「どうしてこんなことをなさったんですか!? 私は……私はナンディナを見捨てました。納得できる説明を聞かせてください!」


 アル : ……GM、これって(こそこそ)

 GM : ええ。ではですね(こそこそ)


 秘匿チャットでやりとりを交わす、アルPLとGM。慣れた風に幾度かのやりとりを交わした後、アルが口を開いた。




 アル : 「―――ルフラン様の声が、聞こえたんです」




 リコリス : 「……え?」

 リズ : 「はあ!?」

 アル : 「ぼくも最初は何なのか分からなかったんですけど……1週間くらい前に気づいたんです。ルフラン様がぼくに呼び掛けてるって」

 リコリス : 「ま、待ってくれ。君もルフラン教徒なのか!?」

 アル : 「いえ、ぼくは違くて……だからなんでソレルさん―――ぼくのパーティーのフルラン神官の人じゃなくてぼくかって不思議なんですけど……。でも、これはルフラン様の声なんです。でないと説明つかないんです……」


 ソレル : 我が神、布教に熱心と見えます。

 SGM : 神ですからね。

 シエル : (裏で絶叫している)


 リズ : 「そんな……」ぶんぶん頭を振って「いえ、ご主人様がそうおっしゃるならそうなのでしょう。何と言われたのですか」

 リコリス : 「…………」

 アル : 「今のこの状況は試練だって。ルフラン様はお怒りになってるらしいです……。理由はお分かりですよね? リコリスさん」


 GM : その言葉に、リコリスはびくりと肩を震わせる。

 ソレル : 理由はもちろんお分かりですね!(一同笑)

 シエル : アルくんちゃん急に怖いけど。


 アル : 「リコリスさん。貴女はルフラン様への信仰に疑問を持っていますね? それが、ルフラン様の怒りの原因なんです」

 GM : リコリスは押し黙ります。否定はしません。

 ソレル : このアルくんちゃん、神憑きみたいで愛おしいね。

 リズ : わかります。


 アル : 「貴女が今すぐ陣の屋に戻り、3回目の巫女として15年間祈りを捧げれば試練は終わります。試練によって奪われたもの―――ぼくたちの仲間も、貴女の友達も、みんな元通りになります……お願いです。試練を―――この惨状を終わらせてください……!」


 GM : それを聞くとリコリスのただでさえ青ざめていた顔色が、蒼を通り越して真っ白になっていきます。

 シエル : 与太話だと思っていたのに……。

 ソレル : まあでも残酷だよね。


 アル : 「でないと、でないとぼくは……貴女を……」

 リコリス : 「――いや、だ。できない。それだけは、それだけは、できない……っ」


 じりじりとリコリスににじり寄るアル。対するリコリスは子どもがぐずるように首を振りながら、ゆっくりと後ずさる。


 アル : 「どうしてですか!友達を、みんなを救いたくないんですか!!」声を荒げる

 リコリス : 「いやだ、いやだいやだいやだ、もう、もう嫌、一人はもう、嫌……ッ!! サリュ、ライティア、先生……ごめ、ごめんなさい。ぼくは……」

 アル : 「お願いです! 貴女が行ってくれないと……貴女を、殺さないと……」フレイルを手に取ります。


 リコリス : 「……ぇ」

 リズ : 「ご主人様!?」

 アル : 「お願いです……お願いです……どうか……どうか……」

 リズ : これは……おろおろしながら二人の様子を見ていることしかできないです。

 GM : ではリコリスは一歩、二歩と後退し、身体を反転させて全力で逃げ出しますが――え、この子、足、おっそ……(一同笑)。 全力移動24mしかない。

 アル : 全力移動、54mです。追いかけます。

 GM : はい。捕まります。リコリスはもう怖くて泣いてますが、陣の屋に戻るとは言いません。


 リズ : 「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいご主人様! なんでこの……リコリス? さんを殺さないといけない話になるんですか!?」流石に泣いてる女の子にはちょっと同情します。

 アル : 「役目を果たさない者裏切り者は処刑せよ、と。ルフラン様は仰せです……」

 リズ : 「それをなんでご主人様がするんですか!?」

 アル : 「ぼくがルフラン様の声を聞いたから……ぼくが、やらないと……みんなが幸せになれないんです!」

 リズ : 「駄目です! ご主人様は神官ではありません。……あんなものの言いなりになって、手を汚さないでください!」


 GM : わかりました。ではここからは、PvPで決着をつけましょう。

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