6-8:開戦の狼煙
コンコン……
コンコン……
断続的に見えない壁を叩いていたナンディナが、ふと声を上げる。
確かめれば、道を阻んでいた見えない壁は跡形もなく消失していた。
時刻は午前2時。カルミアが申告した通りの時間だ。
ナンディナ : 「……正直なところ、半ば疑っていたのですが……(咳払い)」
GM : ああ、そうだ。これ以降、騎士団員たちはあまり会話をしないよう厳命されています。あなた方は冒険者なので、「気にしすぎなくてもいいですよ」とは言われていますが。
シエル : へー仲間同士の会話ダメだって。
アル : なんで改めて言うんですかシエルさん??
GM : 単純に、相手に動きを気取られないように、という意図と……「個」をなくしているのに声で分かっては意味がない、ということのようです。
これ以降、騎士団にはレイダーからの【オラクル】を使用して指示が与えられることになる。プリースト技能を持たない者には「恋人の受音器」が与えられ、呼び笛をもつレイダーあるいはナンディナが指示を飛ばす方針だ。レイダー-ナンディナ間では通話のピアスを介しているため、緊急時の連絡も可能なようだ。
ソレル : 「そういえば、相手にする人たちの人相ってわかってるの?」
ナンディナ : 「はい。簡単にではありますが、イグナチオのご息女の証言からある程度は分かっています。ただ……」
ソレル : 「ただ?」
ナンディナ : 「今のところ、人相を共有しているのは、レイダー様とディナだけです。その……事前に人相を周知しますと、前のめりに『やって』しまう可能性がありますので」
ソレル : 「それはもちろん。なるほどね」
シエル : 「そのご息女は今も街の病室に?」
ナンディナ : 「はい。とはいえ、流石に今日は本邸に移動頂いておりますが」
シエル : 「そうですか……」
ナンディナ : 「さて、レイダー様。出陣いたしますか?」
レイダー : 「(頷く)……では、行きましょう」
そうして、騎士団と冒険者たちは結界を越え、“未知”の領域に足を踏み入れる。
「東方部隊は、カルミア嬢から情報のあった儀礼場の捜索へ!」
「そのほか第一部隊より順に、目的地点を囲むように陣を敷いてください」
「発見物があった場合は至急報告を!」
ナンディナが手早く指示を飛ばした後は無言で、音もなく、徐々に強くなる雪風の中を進軍していく。徐々に降り積もる白雪は足跡を覆い隠し、風は進軍の音をかき消し……。
やがて、かすかに明かりが漏れる屋敷を発見した時には、本格的な積雪が始まっていた。
時計を見れば、現在時刻は午前5時前。
万全を期して、森の中まで日光が完全に差し込む午前8時までこのまま待機となる。
ソレル : (ハンサ、あったかいな……)
アル : (寒いです……)
リズ : (きゅっとくっつく)
アル : (あったかい……えへへ……)
リズ : (合法的にくっつける……えへへ……)
GM : え、じゃあ[生命抵抗/15]しようかと思ってたんですけどみんなくっついててあったかそうだからやめようって思った。
シエル : (……この日はやっぱ冷え込むな)
GM : んだけどシエルさんぼっちだからシエルさんだけ振って?(一同笑)
シエル : わーい、ぼっち~。(ころころ)……成功~。
GM : では何もなかったですね!
レイダー : ディナはこちらにどうぞ。
ナンディナ : ……レイダー様。お気持ちは嬉しいのですが、金属鎧は冷たいかと。
レイダー : ……留め具は弛めますので、鎧の中にどうぞ。
ナンディナ : わぁい。
GM : ……さて、そんなわけで待機していると、かすかに森の奥から陽光が差し込んでくるのを感じます……日の出です。
柔らかな陽光が周囲を照らし始めると、騎士団と冒険者は雪中の茂みに深く深く身を伏せる。このまま待機、と考えていた刹那―――。
「雪だ!」
リズ : ああー! せつないー。
アル : これは……。
「ねえサリュ、雪だよ!! ねえ、朝食前に少し外に行こうよ?」
弾むような、誰かの声が響き渡る。
見れば、屋敷の扉がかすかに開き、中に誰かがいるのが遠目に見え……。
―――一瞬、ピンク色の何かが横切ったような気がした。
ナンディナ : 「――……?」
GM : それきり扉は閉まり、開きません。
アル : (今のって……)
GM : 一瞬突然の会敵か? とひやりとした君たちですが、それ以降は特につつがなく時間が過ぎていきます。
シエル : ……カルミアちゃんの髪色って何色ですか?
リズ : ピンクでしたよね?
ソレル : 双子とかかもしれない()
アル : 順当に考えれば、抜け出したんでしょうか……。
リズ : ドッペルゲンガーか、ですね。
冒険者が思考を巡らせている間に、日光がさんさんと降り注いでいく。時計を見れば、時刻は午前8時。
頷くレイダーの視線を受け、ナンディナは呼び笛を短く2回吹き鳴らす。無音の号令に従い、騎士団の面々が音もなく動き出した。
屋敷全体を包囲するように陣形が組まれる中、レイダーとナンディナの両名は、正面玄関からの突入を敢行する。
GM : スカウト技能をもつ何名かが先行し、鍵開けを試みるのですが……ハンドサインで、何かを伝えてきます。
ナンディナ : 「……鍵が、開いてる?」(ぼそっ)
レイダー : 「……誘い込むというなら、そのまま押し通ります。作戦を続行します」
騎士長の決断に応え、一同は館の入り口に滑り込む。見渡すに、エントランスロビーだろう。奥の方では、数人が離しているような声が聞こえてくる。
GM : 聞き耳どうぞ。……達成値は最大12ですね。なら、以下のような内容が漏れ聞こえてきます。
「――と、そのつもりで生まれたこの身――、――先生、――願い――」
「――だよ、なんでそう――、――てない!」
「――には時間がない。もう、――地下――」
その間にも、騎士団は陣形を整え、次々と伏兵を配置していく。人の気配がする東側を避け、エントランスロビーから続く廊下から西側、階段付近を抑えたところて……。
コォン、と、空気を撫でるような不気味な音が木霊する。
そして微かに漂う、甘い香り。
「……ああ、ようやく来たの? 待ちくたびれたわ―――」
瞬きをはさんだ刹那。
冒険者たちの目の前には、金色の髪を揺らした一人の少女の姿が佇んでいた。
赤い瞳に、病的なまでに白い肌。
見覚えのない者には、強烈な畏怖を感じさせる姿。
見覚えのある者には、微かな郷愁を感じさせる姿。
アル : 「吸血鬼……」
リズ : 「あれが、吸血鬼ですか?」睨み据えながらガンをぎゅっと握りしめます。
ソレル : 「さぁ? 私は余り仲良くなかったから……」
ライティア : 「―――汚らわしい害獣が、よくもまあぞろぞろと。……でも、ええ、少し遅かったのではなくて? 家畜として飼っていたアレ、もうあと2匹くらいしか残ってなくてよ?」
彼女はころころと鈴を転がすように笑った後、煩わしそうに片手で髪をかきあげた。
「悪いけれど、今少し忙しいの――」
「―――あの子たちに気が付かれないうちに、始末させていただくわ」
GM : 次の瞬間、彼女の姿はかき消え。後方から呻くような声が聞こえてきます。振り返れば、三角頭巾を被っていたはずの「誰か」の首が頭巾ごと床に転がり、血だまりを作っています。
ナンディナ : 「……レイダー様!」
レイダー : ディナと冒険者には「奥に行け」とハンドサインを出しつつ、自分は前に出ます。同時に、オラクルで何事か指示を出す。
騎士団の二人が即座に対応する。そして、その中で動く者が、もう一人。
シエル : ノスフェラトゥ語で話しかけます。
GM : ……GMはすごく胃をきりきりさせながら、「やめとけ……」って思ってます。
シエル : 「ライティアさん、時間がないので端的に言います、リコリスだけでも僕は助けにきた。地下の迷宮はどうなってる?」
GM : ……本当に、そう言うんですね?
シエル : はい。
GM : ……分かりました。では、ライティアは一瞬動きを止め……ぐりん、と。シエルの方を向きます。そして……。
ライティア : 「…………たが……豚が、その名前を口に、するな……ッ!!!!」
GM : (ころころ)……行使判定、達成値29です。
人族を家畜程度にしか思っていないヴァンパイアが、突如として見知らぬ人間にその名を呼ばれた。その事実に激昂したライティアは、シエルに向けて無造作に魔力をぶつける。……未だ発展途上の冒険者では、当然抵抗できる筈もなく……。
GM : (ころころ)……では、30点の魔法ダメージをどうぞ。
シエル : 「.かはっ……」魔法をもろに喰らって吹き飛ばされます。
GM : とりあえず遠隔攻撃だからえぐい後遺症とかはないよ、感謝しな。
シエル : あざますー。
レイダー : ……挙動が怪しかった冒険者がノスフェラトゥ語で吸血鬼に話しかけたと思ったら、思い切り攻撃されているのですが……(困惑)。というか、地下の迷宮とは一体……。
リズ : レイダー様www
ソレル : あいつが黒だってことだけ覚えといて後忘れましょう?
レイダー : あーいえ、内通者は最初に口封じしますよね。理解しました。
シエル : たしかにー。
リズ : そのとおりですねー。
GM : さて、そんな中。ぴたりと、奥の声が聞こえなくなります。次いで、ばたばたばたばたと、荒い足音が近づいてきます。
ナンディナ : 「しまっ……」
レイダー : 完全に向こうの台本通りですねこれは……。
ソレル : 覆面の下ではぁ~~~~~~~~~~~~~ってしてます。
そうこうしている内に、廊下に人影が一つ飛び出してくる。
その人影は神妙な面持ちで即座に懐から2丁の拳銃を構え、東側の廊下の影に向かって声を掛けた。
-男装のルーンフォーク-
https://drive.google.com/file/d/195yrR97xf2ejRbISc1B_Ss_1W8HJcGNE/view?usp=sharing
サリュ : 「―――リコリス様、お早く。まだ間に合います」
アル(PL) : やっぱり男装執事じゃないか!!!!!
実はこの少し前に、アルPLがリコリス女性説を受けて「それならサリュも男装女性になっているのでは?」という説を唱え始めていたのだ。あまりPCと乖離した発言もどうかと思い、割愛しておいたのだが……。この後3頁に渡りPLが叫び続けていたので、その愛を称え掲載致します。
アル(PL) : 男装!執事!!じゃ!!!ない!!!!か!!!!!
シエル : 感極まってる人いるけど。
ソレル : シエルは反省して?
シエル : へーい。
リズ : wwwww
ソレル : それはそうと、サリュの立ち絵の背中の毛先の塗りが最高に好きなのでシェアします。
サリュ : 「どうも、お客様方。それでは、お帰りください」
SGM : と言った直後に発砲し、後方のモブ2人を撃ち抜きます。
GM : それでは、後方からばたばたという足音がして、銀髪の女性が出てきて声を上げます、
-銀髪の女性-
https://drive.google.com/file/d/121P5knHSaOcnR-HswIU1wkv3xCL-tyT5/view?usp=sharing
??? : 「――嫌だ、やめろ、サリュ!」
シエル : 「……は?」
全員 : かわいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!
シエル : いや、最高かよ。
リズ : いやっふううううう銀髪最高!!!!!
シエル : 「……え、いや……は?」
リズ : (おいお前昔の男について延々語って聞かせなかったか? の顔)
ソレル : 流石に驚いてます。
GM : その女性はエントランスロビーにずらりと立ち並ぶ白い「なにか」の影を見て、一瞬たじろぐのですが……。
??? : 「……お前は僕に、友人を捨てて逃げろと!? この僕にか!?」
サリュ : 「……その通りです。私は、貴女のための存在。当然のことです」
アル(PL) : 僕っ娘かよぉ!
シエル : この服の顔部分脱いでもいいですか?
GM : え、いいよ。ディナ達びっくりすると思うけど。
シエル : もうだーいぶ引き返せないところまで来てる気がするので、毒を喰らわば皿までってやつですよ。
サリュ : 「―――お客様方、おもてなしは私が致します。お転婆な我が主人のことは、どうかお気になさらぬよう……」
??? : 「なにが当然だ! その話はもともと僕だって納得してな――!」
シエル : 「なんで、リコリスが、女性なんだ……?」
??? : 「…………!?」
GM : 銀髪の女性は一瞬たじろぎますが……、
SGM : サリュはかばうように前に出て、シエルを警戒しています。
サリュ : 「リコリス様。危険です」
シエル : 「やっぱり、リコリス……なのか?」外套を一瞬脱ぎます。
アル : やりやがりましたね。
ソレル : 立ち絵が若干笑ってるのがムカつく。(一同笑)
リコリス : 「危険なのは承、…………!?」
GM : リコリスは一瞬大きく目を見開いて、怯えたように後ずさりします。
リコリス : 「な、なんで僕の名を……」
サリュ : 「……近寄るな」
シエル : 「あ、違うんだ、これには深いわけが……」
サリュ : 問答無用で発砲します。
GM : 放たれたサリュの弾丸は一直線に冒険者たちを射抜こうとしますが……飛び出してきたナンディナの手甲が、その凶弾を弾きました。
ナンディナ : 「……敵を煽るのはいい加減にしてください!!!」
GM : 割と焦っている声で、もうそのまま叫びます。
ソレル : よく言った!!!!
リズ : まったくもって。
アル : その通りでございます。
ナンディナ : 半ギレですよもう。
シエル : なにも言い返せねえ。
SGM : その一瞬の隙をついて、レイダーが数人の騎士を伴って前に出ます。
レイダー : 「―――聖歌隊、前へ」
数人の騎士が太陽を称える讃美歌を歌い、その声を背にレイダーは神へと奇跡を嘆願する。神の大いなる力を以て、この戦いに勝利するために。
「『我が標。我が輝ける太陽よ。我らが道行き、どうかご照覧あれ』」
レイダーがそう唱えた瞬間、騎士団の懐がおもむろに、太陽の如く輝き始める。
GM : ……君たちは待機に入る直前、ナンディナから「あなたに、調和と太陽の加護がありますように」と、ティダンの聖印を渡されていたことを思い出します。身に着けても、捨てちゃってもいい。
リズ : 「またこれを身に纏う日が来るとは、思いませんでしたね」すぐ首に下げます
アル : 「吸血鬼って太陽が苦手なんですよね?ちょっとは効くといいな……」身に着けます
シエル : 「......今は持っておこうかな」所持しておく。
ソレル : うーん、私の神はルフランだけだから、置いてく。
GM : わかりました。皆さんがそんな出来事を思い出したのは、ローブの中で聖印が熱を持ち輝き始めたのを感じたからです。お察しの通り、【ディバインウォー】です。
【バトルソング】と【ディバインウォー】、どちらも高レベルプリーストの扱うことのできる支援魔法だ。前者は命中とダメージを、後者は戦士系レベルを底上げする。強力な魔法である。
ソレル : (もってくればよかったな)
レイダー : 「―――」無言で盾を構えます。
サリュ : 「来なさい、襲撃者共。我が主には、指一本触れさせません」
GM : それでは、開戦です!
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