6-2:葬儀

 うごめく屍の襲撃から、一夜。冒険者たちは、神殿騎士団による大規模な合同葬儀に参列している。

 昨夜押し寄せた屍鬼どもは、今や物言わぬ屍に戻っている。……彼らは、行方不明になっていた島の住人たちだった。しかし、未だ行方不明のままの住人が、5名。それは、セルフィの筆跡で遺されていた「地下」「生存」「5人」という文字の意味するところ―――生存者の可能性を確かに示していた。


GM : いずれにせよ、屍は丁重に葬るべきだということで、ルフラン島の共同墓地の一角で、葬儀が行われることになりました。その中には、セルフィもいます。

ソレル : 二階級特進……。

アル : やり方とか分からないですけど、教えてもらいながら祈りたいです。

GM : では、レイダー様とかが丁寧に教えてくれたと思います。神に近づこうとする者は等しく敬われるべきなので。

リズ : 静かに祈ります。状況に混乱しつつも。

GM : 波音の響く丘の上、ルフラン島の墓地に、騎士長レイダー・ファランクスの言葉が響いています……。



弱き者に力を。驕れる者に戒めを。死せる者に安らぎを。

強き者に標を。慎む者に許しを。生きる者に活力を。


仰ぎ見よ。

その光は隔てなく我らを照らし、その熱は絶え間なく我らを包む。

土は麦を実らせ、麦は民を養い、民は土を耕す。

昼夜が巡り、月日が巡る。


汝の道には光を。汝の背には熱を。

汝の手には友の手を。友の手には汝の手を。

その双眸は広く。その道行は正しく。その未来は明るく。その一歩は大きく。


──────案ずるな。汝の背には、汝の友たる我がいる。友の手を取り進め、我が友よ。



レイダー : 「……今のはティダン神の聖句、移り変わる日々と友人との変わらぬ絆を説いたものです。始まりの一説をご存じの方も、いらっしゃるかもしれません」

ソレル : 「……」


 背をぴんと伸ばした騎士長は、落ち着いた口調で語り掛ける。死者を悼み、生者を慰めるように。

話すのは神話の一説、ティダン神の友“韋駄天”ラトクレスの逸話だ。神官はそうして神と人、人と人との繋がりを説く。


レイダー : 「離れ離れになろうとも、私たちは繋がっています。この心が、帰るべき場所を覚えている。だから我々は、歩むことが出来るのだと、私はそう信じています」


 そう締めくくり、彼女は手に持った聖書を閉じる。葬儀の終わりを告げるかのように、ぱたんという音が響いて、人々は徐々にその場から離れていく。


シエル : 『離れ離れになろうとも、私たちは繋がっています』か、いい言葉ですね。(一同笑)

GM : ごめん、乾いた笑いがね。なんで笑っちゃうんだろうな、この言葉に。

アル : いやーいい話ですねー?

リズ : イイハナシダッタノカナー?


SGM : 特になければ、三々五々散っていく感じですが……皆さんはどんな様子でしょうか。

アル : 横にいるリズさんの手をぎゅっと握ります。

リズ : 握り返します。爪が立ちそうなほどに。

シエル : 手を握りたい友は隣におらず。

ソレル : 所在なげにしています。

GM : では葬儀が終わりましたので、一度皆さんはイグナチオ家の別邸に戻りましょうか。

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