3-13:四週間目、Day8~魔法飛び交う非日常~

■8日目(パーティ予定日当日)


GM : さて。本日はパーティ予定日でございましたが、飾り付けなどは特にございません。穏やかないつも通りの朝です。リコリスは何も知らないので、一番いつも通り。

リコリス : 「おはよう」

シエル : 当然のように一緒に出てきます(一同笑)

GM : なんでそこわざわざアピールするんですか?????

アル : さくやはおたのしみでしたね……。

ソレル : 横目に眺めてます。なんか見慣れてしまったね……。

リズ : 努めていつもの顔。


いつも通りの朝。朝食が、少しだけ、少しだけ豪華だったかもしれない、いつも通りの朝。

いつも通りの朝が過ぎ。

いつも通りの昼が過ぎ。

いつも通り、日が暮れる。

そうしていると……。


ライティア : 「リコリス!!!」ばぁん!「これ!」

リコリス : 「!? なに!?」


GM : いつも通りの時間に起きてきたライティアがリコリスの後ろから飛びついて、青色のマフラーをその首に巻きます。リズさんと編んだ、ちょっとぶきっちょなマフラー。けれど最初の毛糸の塊よりは、かなりマフラーに見えるマフラー。

ライティア : 「おめでとうですの」

リコリス : 「え? え、なに?」


リズ : あーこれ、胸にじんわり来ますね。

ライティア : 「おめでとうはおめでとうですの!!!」ちらっとリズさんを見ます。

リズ : にこっと頷きます。

ライティア : どや!

アル : かわいい。

シエル : かわいい。

リコリス : 「おめで………えっと……えっもしかして、誕生日、プレゼントとか……」

ライティア : 「……ですの」

リコリス : 「いや、ライティア、そういう風習知らないって」

ライティア : 「あなたたちがそういう風習あるって学んだんですの!! 褒めてもよろしくってよ!!」


アル : やっぱりライティアさん、少なくとも人族ではなさそうですね……。

リズ : これライティア様との好感度あげてなかったら、毛糸球を渡すシーンになっちゃってたのでしょうか。(一同笑)

GM : さてライティアが胸を張ったとき、ロビーの方からぱたぱたと騒がしい足音がします。


カルミア : 「ししょー! お誕生日おめでとうなの!!」ばぁん!

リコリス : 「カルミア!?」

カルミア : 「お誕生日パーティね、するって聞いたの。だからね、だからクッキー作ってきたの! 食べてね!」

GM : と嬉しそうにリコリスに飛びついた後、カルミアははっと周りを見渡してリコリスの背後に隠れます。ぴゃっ。……ソレルさんにだけちっちゃく手を振ってます。

ソレル : 「どうしたの、こわくないよー」手を振る。

カルミア : 「ソレルちゃん」(もっと手を振る)

ソレル : 「ソレルちゃんだよー!」両手で手を振る。

カルミア : もっと手を振った!!!

アル : かわいい。

シエル : 良さ。

リズ : かわいいが2乗。


GM : リコリスですが、顔を真っ赤にしています。嬉しそう。

リコリス : 「……え……や…………。ごめん、言葉が出てこなくて。いやまさかその、この年で、誕生日とか……祝われるとは……。こ、こどもじゃないし、その」

ライティア : 「まだ子供みたいなものでしょう。素直に祝われるがよいんですわ」

リコリス : 「……ほ、ほら、シエルたちとかぽかんとしてるし、身内の話はこれ以上……」


シエル : 「なんだよ、せっかくの誕生日だっていうのに僕らは蚊帳の外かー?……おめでとう、リコリス!」

リズ : 「そうですよ。素直に祝われてはいかがですか?」

ソレル : 「いくつになっても誕生日は誕生日、だよ!」

アル : 「お誕生日おめでとうございます、リコリスさん」

リコリス : 「あ、ありがとう……」はにかみながらもお礼を言います。

アル : 「状況が状況ですし盛大にとはいきませんけど、今日は目いいっぱいお祝いしましょう!」

オーウェン : 「……ま、祝うくらいならいいだろ。ほら、サリュもなんか言ってやんな」

サリュ : 「……はい。リコリス様、おめでとうございます」


予定していたような盛大なパーティとはいかなくとも。

そこには、暖かな空気が流れ始めていた―――その時。


―――ガシャン!


突然、何処かでガラスの割れる音が響いた。それも、複数箇所から。


オーウェン : 「……!? おいサリュ、武器持ってこい!」

サリュ : 「……はい!」

ライティア : 「……無粋」

ソレル : 「……カルミアちゃん、どこか隠れてて」

カルミア : 「え、え、え?」

リズ : 「全員、戦闘準備ですね」

アル : 「は、はい!」


迅速に、戦闘態勢を整える冒険者たち。余談だが、実際のセッションでもGMの粋な計らいでガラスの割れた音が差し込まれたことも記述しておく。いやほんとびっくりしたぞ……。


GM : 君たちがいたのはサロンの方ですが、音の出どころはサンルームの方です。

シエル : 「これは、サンルームの方か!?」

ソレル : 戦闘ありそうな予感がしてたので、ハンサは彫像化しておきました。いつでもいけるよ!

オーウェン : 「この野郎、どこのどいつだ……」

GM : 皆さんがサンルームに向かうと、以前出会ったディアボロカデットが数体の取り巻きと共に侵入しています。

「ええと。バルバロス側から来ました、ホオズキと申します」


シエル : 「どうもこんにちは。できれば二日早く会いたかったけどね」

リズ : 「今日は随分とやる気に満ち溢れているようで?」

シエル : 「お前のせいでせっかくの皆の準備も台無しになったよ、責任取ってくれるよな」

ソレル : 札を剥がしてハンサを出しておくね。

アル : どさくさに紛れて獣変貌しておきます。

ホオズキ : 「……おや、まあ、そんな気はしてたんだけど」


ディアボロカデットーーーホオズキは汎用蛮族語で呟いた後、魔神語で話しかける。

ホオズキ : 「■■■■、■■■■■■■■?」

オーウェン : 「……!」

ソレル : 「なんて言ってるの!?」

リズ : 「わかるなら通訳してください!」

オーウェン : 「……俺たちみんな皆殺しだってよ!!」

シエル : 次で取得する言語が決まってよかった。


GM : さて、オーウェンはそう怒鳴った後、飛びずさってサリュとリコリスを守るポーズです。サリュはリコリスを守るポーズ。ライティアも後ずさり、窓から離れます。カルミアはサリュの後ろに。……では、戦闘です!


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戦闘である。敵はディアボロカデットの他に、フーグルアサルターやフーグルマンサーが3体。

ここで、特殊ルールが説明される。ライティアとオーウェンからの支援ダメージだ。PC側手番の始めにライティアから威力50+固定値、オーウェンから威力40+固定値のダメージが与えられる。威力表の高さから見ても、二人がどれ程強力な存在であるかが伺える。

一方、リコリスとサリュはお互いがお互いをけん制し合い、背後20mからの参戦となる。

サリュ : 「……いけません、リコリス様!」

リコリス : 「……僕だけ後ろにいるわけにはいかないだろ!!」

ともみ合っている。

先制も無事に取得し、PC先攻でクライマックス戦闘が始まった。


■1R目:PC側

早速オーウェンとライティアから支援ダメージが飛び、フーグル達を瀕死にまで追い込む。


リズ : 流石に強いですね。

リコリス : 魔法は距離があっても使える、《セイクリッドウェポン》!……なんだけど、前に出ていい、サリュ?

サリュ : 「だめです」

リコリス : 「パラミス届かないんだけど」

サリュ : 「お下がりください」

リズ : 当然の反応ですね……。

リコリス : くすん。


続くシエルが《セイクリッドシールド》を唱え、支援は万全となる。支援ダメージの累積もあり、前に出たアルの攻撃で更にもう1体のフーグルが倒れる。

続くハンサの攻撃でもう1体を沈め、残る1体はソレルが挑発。その1体も、リズの《エフェクトバレット》が回り、大ダメージを受ける。


■1R目/エネミー側


GM : え、どうしようみんな思ったより強いね、もうちょっとフーグルアサルターちゃん出してよかったな。

ソレル : 支援ダメージが強いからね。

シエル : 別に増やしてもいいよ?経験値が増えるし。

GM : いったな? 2体増やしたわ。


急に増えるエネミー。最早なんだかよくわからないが、ディアボロカデットは万全を期して変身を使用。そして自傷ダメージを受けながらも任意対象に呪いダメージ与える、《呪い傷の連鎖》を使用する!

GM : 対象は前衛の3人!(ころころ)……ぶっ、ピンゾロ!? 帰れお前!!! 自傷しただけじゃん!!!

ソレル : 転職考えたらどう?

GM : 転職したい……。なんでこんなとこにこなくちゃ……。


ここで、完全に流れは冒険者たちの方に向いた。支援ダメージのお陰もあって続く2R目にはフーグルを片付け、危なげなくディアボロカデットを討伐することができた。


サリュ : 「……ふう。皆さまお疲れさまでした」

リコリス : 「戦ってもよさそうだったじゃん!!!!!!」

サリュ : 「だめです。前線に出てくださった皆様に感謝してください」


ソレル : 「ふー、勝ててよかった」

リズ : 「やりましたね!」

アル : 「みなさん無事でよかったです!」

シエル : 「先生とライティアさんの支援のおかげだったよ」

リズ : 「本当です。こんなにお強かったんですね」

オーウェン : 「……まあ、先生だしな」


GM : ホオズキと名乗ったディアボロカデットは、死に際に何かつぶやいていたのですが……。

ライティア : 「……汚らわしいこと」

GM : ライティアが指を鳴らすと彼はぼうっと燃え上がって、焦げて、そのままこと切れます。

サリュ : 「片付けておきますね」


カルミア : 「……あ……」(ふるっ)

ソレル : 「おーよしよし、怖かったよね、もう大丈夫だから」カルミアちゃんの肩をもって支えます。

カルミア : 「うう、うえええぇ……」(泣き出す)

ソレル : そのまま背中をさすってよう。

リズ : 「……お部屋が荒れてしまいましたね。片づけてまいります」

シエル : 「あとサンルームに出来た大穴埋めないとね」

リズ : 「そしてそのあとは……飾り付け、出来ますか?」

アル : 「ですね!」

リコリス : 「え?」

アル : 「ほらほらサリュさん」と促しましょう。

サリュ : 「え。あー、えっと、ですね……」そわそわ。

オーウェン : 「……ああ、なるほど。まあいいんじゃねえの?」(小声)


サリュに背中を押され、リコリスと対峙するサリュ。暫し何かを憂う視線をさ迷わせ、意を決したように口火を切る。


サリュ : 「……リコリス様。お誕生日、おめでとうございます」

リコリス : 「う、うん」このタイミングでなんだ?って思ってる。

サリュ : 「……おめでとうございます」

リコリス : 「あ、ありがとう」

サリュ : 「実は、その。パーティの準備を、しておりまして……。もう遅い時間ですが、もしよろしければ、と……」

リコリス : 「え」

GM : そう聞くと、リコリスはぽかんとした後、ばっと顔を赤くします。

リコリス : 「そんなことまで用意してくれてたの? そりゃ、ちょっと恥ずかしいけど。嬉しいよ、ありがとう」


サリュ : 「……で、では! すぐにご用意いたします!」と、ばたばたと去っていきます。

アル : 「あ、ぼくも手伝います!」と、とてとて一緒についていきましょう。

ソレル : 「カルミアちゃん、リコリスのお誕生日パーティやるって! 一緒に飾り付け、する?」

カルミア : 「! するの!!」ぴょんぴょん。

ソレル : よしよし、じゃあソレルちゃんと一緒にいこっか。

カルミア : ソレルちゃんと一緒に行くー(こくこく)。

リズ : 「では、さくっとガラスを処分してまいります」

オーウェン : 「悪いな、リズ。俺も手伝うよ」

シエル : 「まあ、とりあえず一件落着なのかな。」

ライティア : 「………………そうね」シエルの後ろでぼそっと。

シエル : 「ライティアさんどうしたのですか?一緒に祝ってあげないと」

ライティア : 「べ、つ、に! もともと祝うつもりでしてよ!!!」


ほんの少しだけ、遅くはなったが。いつもの夕方が大変な非日常になった後……、楽しい非日常が、ようやくやってきた。

冒険者たちは、それぞれパーティの準備に走り出す……。

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