2-10:奔る出目、奔らない出目

GM : ミドルもそうですが、クライマックスでもリコリスが参戦しま―――あ!ボスも動かさなきゃじゃん!


ダンジョンパートはシステムを作ったのがSGMだったのもあり、SGMがエネミー側を担当していた。しかし、基本的に戦闘はGMがエネミー側を担当する流れになっていたのだ。だが―――。


SGM : ならこっちでエネミー動かしますよ。どうせ暇ですし。

GM : よし!SGMいてよかった!


SGMの有効活用。この後、リコリスや一部他NPCがいる戦闘ではエネミーの運用はSGMが担当することになる。




気を取り直して、戦闘である。敵は一体。

ソレルが何とか知名度を抜き、敵はLv5ドラゴンインファントであると判明した。属性は雷。ライダーの騎獣としても親しまれているモンスターだが、未だ3レベル程度の彼らにとっては、十二分な脅威と言える。無事先制判定も成功し、PC先攻で戦闘が始まった。


■1ラウンド目

リコリスはなんとパラライズミストをもっている。すごい。パラライズミストは、敵の回避を低下させる賦術である。強い。あまりにも強い。そしてシエルとの神官2枚体制で《フィールド・レジスト》と《フィールド・プロテクション》が唱えられ、攻防とも万全と言えた。

早速、パラミスを得たアルとソレルが攻撃を行うが……、なんとそのことごとくをドラゴンインファントは回避した。

いかなパラミスといえど、出目には勝てない。SGMの出目が妙に良かった結果である。リズの攻撃は流石に命中したが、やや不安げな滑り出しであった。


SGM : ふはは。挑発されていないので……(ころころ)アルを攻撃!

アル : 当たります。い、痛い……。

GM : このSGMにインファントちゃん回したの大丈夫かな?殴り殺されるんでは?


■2ラウンド目

【切り返し】を宣言したアルはなんとか命中させるも、ソレルの挑発攻撃はまたしても回避されてしまう。


GM : 出目10めっちゃ見えるね?


リズ : 「ご主人さま!あれは強敵とみました!殺される前に殺すしかありません!!」剣の恩寵を使用します!

シエル : 「初めての魔剣の迷宮で竜討伐だなんて、ちょっとワクワクするな!」こっちも、《フォース》の行使に剣の恩寵を使うよ!


SGM : ぐっ、流石に喰らいます。強いな剣の恩寵……。


リコリス : 「さて、此方も負けてられないな……!」シエルと同じく、剣の恩寵を《フォース》に!


先に動いた冒険者たちに続けとばかりに、神聖魔法の詠唱を始めるリコリスだが───。


リコリス : う、出目3!?

SGM : おっと、それは恩寵込みでも抵抗しますね。

リコリス : 「あっ」悲しそうな顔する

ソレル : 「どんまい……」

リコリス : 「こー、かっこつけた時に限ってさぁ!」

アル : リコリスさん、運命変転使いませんか?

シエル : 今回はいいんじゃない?

リコリス : まぁ……いいかなぁって。

リズ : 分かりました。


SGM : では、ドラゴンインファントの手番ですね。今回も挑発はされてないので……(ころころ)、ではソレルへ。出目は10です。

ソレル : さっきから出目強いよSGM(ころころ)……、悪くない出目なのに、回避失敗!


圧倒的回避力を誇る代わりに、HPは心もとないソレル。この攻撃で、HPは文字通り半減してしまった。


■3ラウンド目

即座にシエルが前衛に回復を飛ばし、何とか持ち直す。リコリスはもう一度、《フォース》を唱えるが……。


リコリス : 「今度こそ…!」……って、今度は威力表でピンゾロ!?


しかしこの場面、エネミーの精神抵抗は失敗していた。当然、先ほど使わなかった【運命変転】を使用すると誰もが思っていたが───。


リコリス : 「……っ」


悔しそうに歯噛みするリコリス。運命に愛された人間であれば有している筈の種族特徴を、何故かリコリスは使えなかった。


アル : どういうことでしょう……?

ソレル : 何か理由があるんだろうけど……。

リズ : それを初戦闘でお目見えとは、ドラマチックですね。


全くである。GM、出目悪すぎでは?


リコリス : 「……っ、すまない。あとは頼む!!」パラミスAを投げて終わり!


この場面を最後に、PC陣が徐々に持ち直してくる。アル、リズ、ソレルの攻撃も当たるようになり、調子のよかったSGMの出目も低空をさ迷い始めてきた。そして……。


リコリス : よし、《フォース》を唱えよう。

シエル : あ、先に撃っていい?

リコリス : もちろん、どうぞ。

シエル : ラストアタックをリコリスに譲りたいんだよね……あ。

リコリス : お。


抵抗失敗。シエルの一撃により、ドラゴンインファントはその身体を横たえた。

戦闘終了である。


ソレル : ぴったしー!

リズ : おちましたねー。

アル : な、ないすー!()

シエル : 違う、そうじゃないんだ……。リコリスとわちゃわちゃしたかったんだよ、僕は……。


リズ : 「シエルナイス!」

アル : 「わふん!(よかったです、シエルさん!)」

ソレル : 「よかったよかった。みんな無事だね!」

リコリス : 「……すごいな」くしゃっと笑う。


シエル : 「そっちこそ、初めての冒険とは到底思えなかったよ、リコリス」

リコリス : 「……うん。ありがとうシエル。ええと」と言いつつ、手を中空に差し出す。ハイタッチのポーズ。

シエル : 一瞬きょとんとした後「ふふふ、勝利の後はこれがないとね!」ちょっとヒリヒリするぐらいの強さでハイタッチ。


GM : では迷宮にぱぁんと、小気味よいハイタッチの音が鳴り響きました……。

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