2-9:時の迷宮~カットだカット!~
壁の魔法陣に触れた途端、冒険者たちの肌に、冷たい空気が張り付いてくる。
みればその部屋は青白い煉瓦造りのようで、その殺風景な空間は、まるで地下墓地かなにかのように感じられた。
しかし、壁のそこかしこ―――煉瓦の隙間から開店する歯車が覗いており、この迷宮がただの遺構などではないことを静かに示している。
冒険者たちは、そんな玄室の中へと降り立った……。
最初に謝罪をしておきたい。筆者はこのダンジョンパートのリプレイ化を早々に諦めた。冗長な上に、分かりづらかったからである。故にここでは簡単なルール説明のみにとどめ、ぼんやりとした雰囲気だけでも感じ取って頂ければ幸いだ。
今回はSGMが用意した迷宮ランダム生成システム、その名も「ガバの不思議のダンジョン」を使用する。
あらかじめ用意しておいた玄室や通路、魔物データをダイスで決定し、リアルタイムでダンジョンを生成していく方式である。不思議のダンジョンの名の通り、そこの床にはアイテムや、危険なトラップも落ちている。勿論、これらもすべてランダムである。
このシステムには、もう一つ大きな特徴がある。それはランダム生成であるが故に、玄室同士の座標が重なってしまう可能性があることだ。そうなった場合は重なった玄室や通路のマス目を数え、同数のGP―――ガバポイントが得られる。このガバポイントは冒険者たちの好きなタイミングで各種消費アイテム(弾丸とか)やHPMPリソースとして利用できる他、シナリオ終了時には一定のレートでトレジャーポイントと交換することが出来る。
このガバポイント・システムはかなり有用であり、SGMがルールミスをするたびに「ガバで受ける」を宣言し1GPを提供することでPL達に許してもらうシステムでもあるのだ。実際、10GPくらいは筆者のミスで発生している。ごめんね。
そして迷宮探索であるが、冒険者たちはすいすい進んでいった。出目が冒険者たちに対して妙に有利で、危険なトラップのことごとくがエネミー側にあったり、また冒険者たちの判断も的確であった。途中トラップの効果でアルがドラコネットになったりもしたが、最終的に冒険者たちは100GPもの大量のポイントを荒稼ぎして、迷宮の最奥へと進んでいった。GM陣は頭を抱えていた。コンセプト通りである。
迷宮の奥は、巨大な歯車が絡まり合っていた。巨大な機構を成すかのように組まれた、階段のように連なる歯車を渡り―――冒険者たちは、小さな舞台のような場所にやってきた。
誰もいない舞台上。冒険者たちは一瞬―――黒髪の女性がこちらを振りむいたような―――光景を幻視するも、その姿は瞬きの内にかき消えた。
舞台の真ん中には、針のように細く、夜のように黒い、1振りの魔剣が突き立っていた……。
リコリス : 「……え?」
ソレル : 「どしたのリコリス」
シエル : 「もしかしてあの魔剣知ってる?」
アル : (リコリスに向かって首をかしげる)
リコリス : 「いや、ええと……どう言ったらいいか」
リコリスが戸惑うように、胸ポケットの中の何か――冒険者たちはすでに、そこにはルフランの聖印が入っていることを知っている――を掴むと同時。
舞台の上の歯車が、急速に回り始める。
舞台に落ちるは、一筋の稲妻。その雷は、たちまち巨大な竜のかたちを取り―――竜は、巨大化と収縮を繰り返している……。
GM : さて、ここで[見識判定/10]をどうぞ。……シエルさんだけ成功ですね。ではあなたは、この竜が単純に拡大縮小を繰り返してるわけではないことが分かります。寧ろ、卵から孵り、成長し、老化し、死亡する……その様を急速に繰り返しているかのように見えます。
ソレル : 卵が先かドラゴンが先か?
アル : 元は歯車なんですよね……。
シエル : 「あれ、もしかして一瞬のうちに成長と退化を繰り返しているのか?今までの罠も大概だったけど……ははは、これはぶっとんでやがる!!」
リコリス : 「……針の魔剣……」
かち、かち。
かち、かち。
時計の針の、時を刻む音。その音が一際大きく鳴り響いた瞬間、竜の動きが止まる。
……幸いなことに、その姿は幼体のようだ。
ソレル : ルーレットがいいとこで止まった。
アル : ドラゴン成長ガチャって感じですね……。
シエル : これ、もし仮にもう一度ここくることがあったら、育った姿なんだろうなあ……。
リズ : 怖い怖い。
GM : 稲妻を吐く赤子の竜が、あなた方に襲い掛かってきます!戦闘です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます