2-7:館での日々、一週目(Day5~6)

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……おはよう。誰もいない部屋の片隅に、そう囁く。

そうして何回目かの朝が来た。


朝が、来た。朝が来たのだ。


理解が出来ずに呆然とする。瞬き数回の間に、脳裏に焼きつく残像を反芻する。

あれはただの夢だったのか?


胸を衝くような吐き気がして、えずく。吐き出した胃液には何も混じりはなく、酸だけが喉を焼いていく。


炎が網膜に焼き付いている。瞼の裏に瞬く閃光に、ぐらりと眩暈がする。

赤、赤、赤。揺らめく様な赤色に、あの日の赫色が重なって――


ああ。それでも、朝が来たのだ。

ならばせめて立ち上がろう。震える足を叱咤して、ゆっくりと、懐かしい景色の中起き上がる。


窓を開き、わななく唇をかみ締めて、私は、祈るように一歩を踏み出した。


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■5日目/夜


GM : さて。リコリスに呼ばれて、君たちはサロンに集まっているところでした。話題としては、やはりカルミアのこと。彼女が思ったよりも目が覚めないので色々と動揺している様子。


リコリス : 「……あそこで呼んだのが悪かったのだろうか」呼びつけた本人としてはやっぱり思うところがあるのか、少し疲れた顔をしています。

ソレル : 「タイミングは関係ないんじゃないかな」

リコリス : 「……だと、いいのだけれど。いやよくはないのだけど……」

ソレル : 「私たちが知ってたカルミアとリコリスが知ってたカルミアがたまたまちょっと違ってたって話だし。なんで起きないのかはよくわからないけど、あの状況で私がリコリスの立場だったとしてもカルミアは呼んでたと思うし。リコリスが気に病むことはないよ!」

リコリス : 「……うん……」


GM : では、その言葉におぼろげながらもリコリスが頷いたとき……突然、ばたんと扉が跳ね開けられる音がしました。


鬼の少女 : 「……兄さん!」


GM : 同時に、叫ぶような声が聞こえてきます。


アル : どなたさまです??????


振り返ると、そこにいたのは独りの少女であった。扉を開けたままの姿勢で、凍りつくように目を見張り、まっすぐにこちらを凝視している。

振り乱された黒髪の下から、蒼い空の色の瞳が覗いている。それは、リコリスやサリュと全く同じ色であった。


シエル : 素敵な角ですね。


リコリス : 「……シラン?どうした?」


GM : リコリスが声をかけると、シランと呼ばれた少女は、びくりと肩をはね上げます。怯えた獣のように視線を周囲に走らせて、噛みつくように言葉を発しました。


シラン : 「お前ら、誰だ。何処から現れた?」……どうやらあなた方、冒険者に向けた言葉のようです。

アル : 「ひっ……!」リズの後ろにかくれます。

シラン : 「…………」

ソレル : 「私はソレル。私達、みんな冒険者で……」

リズ : 「……リコリス様にお招きいただき、逗留しております」

シラン : 「………………冒険者。知らない……」

リコリス : 「シランごめん、伝えてなかった。少しばたばたしていて……彼らの言う通り、ここしばらくここに滞在してもらっている。オーウェン先生にも許可は貰ってるよ」

シラン : 「…………」無表情にじーっとこちらを眺めていた「シラン」という名の少女ですが。


GM : ───ぼろぼろっと、突然目から雫をこぼしました。

リコリス : 「えっ」

ソレル : 「どうしたの? 怖くないよ~?」

シエル : 「え、なんか僕たちやらかした?」おろおろ

シラン : 「…………カルミアを連れて帰る」

シラン : 「帰る!」

GM : そういって、彼女はカルミアをおんぶして担ぎ上げると……。

シラン : 「……イグナチオのおばさんたちに頼まれただけだから。それだけ……」

GM : そういって、そのまま飛ぶように走り去ってしまいました。


リズ : 困ったようにリコリスを見ますが……。

リコリス : 「…………」

アル : 「ど、どうしましょう……」涙目でおろおろ

GM: リコリスもなんか「え?」って顔で困惑してます。

ソレル : 「……行っちゃったけど。誰だったんだろ」

シエル : 「え~と、今の子はリコリスの妹さんで合ってる?」

リコリス : 「……いや。ごめん。いつもはああいう子じゃないんだけど……で、シランがイグナチオの方たちにいろいろ頼み事されるのもいつも通りなんだけど……だけど……そうか。まだ説明してなかった」

GM : と、シエルの言葉にはっと顔を上げて

リコリス : 「シランは、僕の双子の妹。村の方に住んでるから、あまり行き来がなくて。紹介する機会がなくてごめん。……というか、今日も来るとは思わなかったんだけどな」


なんだったんだろう……。

力なく呟くリコリス。その言葉の通り、今の出来事について説明できるものは誰もおらず。話題になっていたカルミア本人も連れ去られ。

その場はなんとなく、うやむやのまま解散となった。




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■6日目/昼


GM : では、ソレルさん。貴方は一人で森に食料調達に出ています。

ソレル : 一人と一匹!

GM : 一人と一匹!

ハンサ : ひひーん


GM : では、一人と一匹は命中力判定で狩り、探索判定で木の実摘みができます。どっちやります?


ソレル : 分が良さそうな命中の方で振るね。(ころころ)……出目が良い、達成値18。


リズ : 気合十分。やはり旦那さんと一緒だとはかどるのでしょうか。

ソレル : 見えないバフがですね、こう……。

GM : 18だぁー???……では、2d6を3回振ってくださいますか。これ、パックリーダーの戦利品扱いです。臨時収入。

ソレル : (ころころ)……、6、9、11だね。250G。「みんな昨日のことで落ち込んでるし、やっぱりおいしいごはんを……」

GM : ではあなたは食料に十分な肉を手に入れたのですが……それと同時に。

ソレル : 「ん?」

GM : 茂みからなんか、ひょこっと角が出てます。先に5日目のイベントやっちゃったのでご存じなんですが……シランですね。

ソレル : 「あ」見たことあるやつだ!「シラン、だっけ? どしたのこんな森の中で」茂みに向かって語りかけます。

シラン : 「……!」では、しばらく沈黙が続いたのですが……、ひょこっと顔が出てきて

シラン : 「カルミアを見なかったか」と聞いてきます。

ソレル : 「え、シランが連れてったじゃん。見てないよ、ハンサは見た?」

ハンサ : ふるふる

ソレル : 「ハンサも見てないって」

シラン : 「…………そうか」

ソレル : 「……もしかして、落とし物した?」

シラン : 「いや、違う。あの子は……」ふるふる、と首をふって「なんでもない」

「そもそもお前らはなんなのかを説明されるまでは私から語ることは基本的に何もない」

ソレル : 「でも、カルミアいないんでしょ? 一緒に探すくらいはするって」

シラン : 「…………敵か味方かもわからん奴と一緒に探せると思うか?」ふいっと背を向けます。

ソレル : 「あーもー、リコリスとちがってなんというか……。一人で探すより二人と一匹でしょ!! 説明してほしいことなら説明するからー、話聞きなって」

シラン : 「……じゃあ、何回目?」

ソレル : 「???」

ソレル : そんなタイムショックみたいなこと言われても。


今、何問目?


ソレル : 「ルフラン島に来るのは1回目!」

シラン : 「……じゃ」走って消えます。


GM : そしてシランが去っていった後、ソレルさんの背後から、あったかいなんか柔らかいものが突っ込んできます。

ソレル : 「ふえっ!?」振り返ろう。ハンサじゃなさそうだけど。


ソレルが振り返った先にいたのは、桃色の髪を二つに纏めた少女───カルミアであった。


カルミア : 「あっ……」

ソレル : 「あ。落とし物みっけ」

カルミア : 「おとし……?」

ソレル : 「ううん、こっちの話。カルミア、起きたんだね、よかった」

カルミア : 「あ、あ、あの。あの、えっと。お、起きた……」

ソレル : 小さいのは気にせず撫でたりしよう。母性をくすぐられるから。


始めは不安そうに警戒していたカルミアであったが、ソレルの母性に触れ、徐々に表情が柔らかくなっていく。


ソレル : 「よしよし。森の中一人で怖くなかった?」

カルミア : 「あの、あの」こくこくとうなずきながら、ずいっと何か差し出してきます。……カードのようです。

ソレル : 「これは?」 カードを手に取る。

GM : では、ここで1d6を振って下さい。引いたカードが何かを決定します。


何気なく引いたカードに書かれていたのは……。

「2:ついついやってしまう癖の話」


ソレル : 「これは……!」


そう、第一話でカルミアが取り出していた、お喋りお題カードである。カルミアは期待を込めた顔で、ソレルを見上げている。


ソレル : 「そうね、私がやっちゃう癖は……。初対面の人でもすごく馴れ馴れしく話しちゃうことかな」

カルミア : 「…………」ム!という顔。

ソレル : 「私は森で育ったから周りみんな知り合いだったし、ハンサと話すのにもいらないし」

カルミア : 「はんさ……」

ソレル : 「だから敬語使うの苦手で。困っちゃうこともあるんだよね」

カルミア : 「……う、うらやましいの」

ソレル : 「依頼主からちょっと嫌な顔されたりね。まあみんな優しくて許してくれるんだけど……、うらやましい?」

カルミア : 「敬語苦手なの、一緒なの。でも、馴れ……なれ、なれなれしく、できない」

ソレル : 「そうなんだ!一緒だね。馴れ馴れしくできない……引っ込み思案になっちゃうってことかな」

カルミア : こくこく「ししょーに……おしゃべり、教えてもらってるの。でも、うまくできないから……」

ソレル : 「ししょー、ね……。カルミアはさ、友達と話す時は上手に話せるかな?」

カルミア : 「ともだち……、いない」


泣いた。


ソレル : 「そっか……。じゃあさ、私が友達になるよ。だから、いっぱいおしゃべりの練習しよ?」

カルミア : 「……!?」衝撃を受けた顔

ソレル : 「それで上手におしゃべりできるようになったら、みんな私だと思って話したらいいんだよ。そしたら私みたいに馴れ馴れしくなるよ」

カルミア : 「なれなれ……」

ソレル : 「って、それじゃなんだか本末転倒か……」

カルミア : 「…………なれなれしく、するの。いいの?」

ソレル : 「いいの。カルミアは女の子だし、かわいいし、みんな許してくれるよ、きっと。許してくれない人がいたら、私に教えて。いっしょに文句言ってあげるから」


GM : ではカルミアぴこぴことうなずきながら、カルミアはまた嬉しそうにカードを差し出してきます。


カルミア : 「ともだちになれるカード、するの。するの!」

ソレル : 「うん。しよっか」と言いつつ辺りを見回して「……おうち、帰らなくて大丈夫?」

カルミア : 「かえんない。あそぶの」


GM : ……そんな感じで、しばらく付き合わされたかと思います。

ソレル : 一緒に遊んだ。

リズ : はーかわいい。

シエル : カルミアちゃんかわいいけど。

アル : わかります。ソレルさんもだいぶかわいい。

GM : それな。

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