2-6:館での日々、一週目(Day3~4)
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……おはよう。誰もいない部屋の片隅に、そう囁く。
そうして何回目かの朝が来た。
小鳥の声に、扉の向こうの喧噪に、私は密かに朝を知る。
けれどつとめて布団にくるまり、朝を知らないフリをする。
そうすれば、皆、私のことを見ないでくれるから。
……皆が思うより、私はほんの少しだけ大人だ。
柔らかい枕の感触に夢を見るように、耳に残る柔らかな木々のさざめきに意識を溶かす。それ以外は、何も聞かない。
何も、何も。
そうしてぜんぶやり過ごして、誰も、私に興味なんかなくなったら……。
はじめて、あたしの朝が来る。窓枠を越えた先にある朝。
飛び跳ねるような鼓動を胸の奥にしまいこみ、あたしは、一歩踏み出した。
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アル : 一人称がブレてるのには、何か意味があるんでしょうか……。
リズ : ありそうですね。
■3日目/夜
GM : あなた方がそろそろ寝ようか、と三々五々に散り始めたころ……皆さん、[聞き耳判定/10]をお願いします。……リズさんとシエルさんが成功ですね。
こんこん。
と、エントランスロビーの外扉を叩く、控えめなノック音が聞こえた。あまりに小さくて、聞き逃してしまいそうな程に、控えめな。
ソレル : 寝てます(別室)。
リズ : 「ご主人さま。どなたか外からいらしたようです」とゆさゆさ起こします。
アル : 「ん……ぁ……リズさん……?」ねむいです……。
シエル : 「......そっかそういえばカルミアが今日来るんだったっけ」
リコリス : 「ああ……! ずいぶん遅いと思ったら、今着いたのか」小走りにエントランスロビーに向かい、扉を開けます。
そこにいたのは、桃色の髪のエルフの―――少女だった。
-エルフの少女-
https://drive.google.com/file/d/1Qb4oHVg0jbZJHZcqR8FK99FBIuNNIf55/view?usp=sharing
エルフの少女 : 「ししょー!」
リコリス : 「カルミア。遅かったね」
アル : まぁ、そのままではないでしょうね……。
シエル : 「............どゆこと???」
リズ : 「カル……ミアさん……?」
GM : エルフの少女は、そのままぺいっとリコリスに飛びつき……あなた方を発見すると、「はわ!」という感じでリコリスの背後に隠れます。
アル : 「カルミアさん小さくなってますねー……ふしぎですねー……」眠いので頭ぱやぱやー。
リズ : やり取りを遠くで見て、そーっとソレルの部屋に移動してたたき起こしてきます!
ソレル : 「ちょっとまってて、すぐ下りるから」
カルミア? : 「…………ししょー、この人たちだぁれ?」
リコリス : 「……あれ?」
GM : 階下では、リコリスとカルミアと呼ばれた少女と、シエル・アルが話しているわけなのですが……カルミアと呼ばれた少女は、すごく怯えています。というか、パ二クってます。それをリコリスがなだめているのですが……。
リコリス : 「…………寝ちゃったな」
GM : 5分後。リコリスにしがみつく形で、カルミアが寝息を立て始めてしまいました。
ソレル : 「あら。遅かった」
リコリス : 「……ああ、ソレル。ごめん、カルミアを呼んでたのだけど……もしかして人違いだった?カルミアって名前の子っていうと、彼女しか思いつかなかったんだけど……もしかして、知らないうちに流行りの名前か何かになってるのかな?」困り顔。
ソレル : 「うーん、私たちの知ってるカルミアは、もっと大きかったんだけど……。でも雰囲気とかは結構似てるかも。不思議だね」
シエル : 「そうだね、彼女も僕たちの事覚えてないようだったし」
リコリス : 「……うーん……まあ、とにかく、この様子じゃどうしようもないな。もう夜も遅いし……明日またちゃんと話を聞こうか」
GM : ということで、いったん今日は解散。カルミアと呼ばれた少女は、すぅすぅと寝息を立てています……。
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■4日目/昼
GM : ではシエルさん。その日、貴方はリコリスとサロンにて待ち合わせをしていました。
サロン―――この部屋は、屋敷の中心だ。食堂や厨房にも直結しているそこは、ロビーへの扉も開け放てば常に誰かしかの気配を感じられる場所。
リコリスはここ数日、寝るとき以外は常にここにいるようだ。今日もまたリコリスはここにいるが―――今日はタイミングが悪いのか、丁度周囲の何処にも人の気配がなかった。
そこに、シエルは一歩踏み込むのだが……。
リコリス : 「………………」
リコリスは、一人、サロン奥の壁に向かって立っている。特になにがあるというわけでもない、強いて言えば暖炉があるだけの、ただの壁だ。……しかし、近づくと彼がなにか、小声でなにか喋っているのが聞こえてくる……。
GM : という感じですが、どう声をかけますか?聞き耳するなら、[聞き耳判明/8]です。隠しているわけでもないので。
シエル : (ころころ)……成功。
GM : では、聞こえますね。
聞こえてきたのは、なんてことはない雑談だ。今日は良い天気だとか、今朝のスクランブルエッグが美味しかったとか、寝癖がひどくて直すのが大変だったとか……。取るに足らない、日常会話だ。
───その相手が何処にも見当たらない、という一点を除けば。
リズ : こわい。
GM : ……と、そこで、不意にリコリスが振り返ります。どこか虚ろな目が一瞬だけ見えます……。
シエル : 「リコリスごめん、盗み聞きするつもりはなかったんだ。ただ、今日は君とサロンで神官話する予定だっただろ?」
リコリス : 「……。……シエル!」
GM : リコリスはシエルさんと目があった瞬間、ぱっと顔を綻ばせます。先程までの虚ろな雰囲気は、あっという間に消えてなくなりました。
リコリス : 「なんだよ、遅いじゃないか。待ちくたびれたよ」
ソレル : 不穏だなぁ。
シエル : 「あ、ああ。ちょっとカルミアの兼で考え事しててね」
シエル : とりあえずいつものリコリスに戻ってくれたのか?
リコリス : 「あー……カルミアね。あの子すっかり寝込んでしまってるし、どうしようかな。親御さんも心配されてないといいけど……」
GM : 特に変なところはないです。いつも通りのリコリスです。
リコリス : 「人違いだったなら、なんというか、いろいろすまないことをしたな……」
シエル : 「……いや、正直彼女がだいぶ幼くなっていたことには面食らったけど、おそらく僕たちの知っているカルミアさんで合ってるような気がする」
リコリス : 「……ん?」
シエル : 「……まあ、この件は彼女が起きてからまた話した方がいいかも」
リコリス : 「まあ、それもそうか。本人のいないところで話しても仕方がないしね」
シエル : 「まず、ルフラン様について教えてくれないかい?教義が友愛と蘇生だったっけ?一見節点のないふたつの教義がどうかかわっているのか前から気になっていたんだよね」
リコリス : 「ああ、そうだね。どういう起こりの神様か伝えないと、そこらへんはなかなかわかりにくいかな。そもそも、ルフラン神は魔動機文明時代後期に、その行いからライフォス神から神の座に掬い上げられたと言われている小神で……」
GM : と、聖書を開きながらリコリスは話し始めます。
GM : ───が、こいつ自分で言ってたように、説明がすごーーーーく分かりにくいです。聖書をもってても、話があっちに行ったりこっちに行ったり。
シエル : 聞く相手間違えたかな(笑)。
GM : 自分の知識と相手の知識を分けて考えられてないというか、「いろいろ知りすぎちゃってるがゆえに無駄に話を広げて話を分かりにくくするオタク」的な話し方するんですよ。
その表現も如何なものか。
GM : というわけで[冒険者Lv+知力/11]をどうぞ。成功すれば、上手いこと自分で整理して理解できることでしょう。
リコリス : これを潜り抜ければ、わっかりにくい説明を自分の頭で整理し、理解することができるでしょう!!
シエル : よし、いこう……(ころころ)、成功だ!
GM : では君は見事にリコリスの話を整理し、理解することができました。以下の情報を得られます。
■秘神ルフラン(姫神ルフラン)
秘神と書いてヒメガミと読む。島民には、同じ音で「姫神さま」と呼ばれることが多いらしい。
ルフランは、ルフラン島に祀られている小神。かつての大破局の際、島に侵攻した蛮族軍の将と決闘した姫騎士・ルフランが、神として引き上げられたもの。
「敵将の不意打ちを受けて一度亡くなったが、すぐさま蘇生して正々堂々の決闘を挑み、勝利した」「相手の将を殺さず、対話に臨み、交渉に成功してルフラン島を蛮族不可侵の土地にした」という伝承と「ルフラン島の危機にはルフラン自ら蘇り、脅威を退ける」という伝承から、蘇りと、友愛による防護の神として崇められている。
GM : 実際、ルフラン島はここ300年間、敵意を持つ蛮族の上陸を一度も許したことはないらしいです。
アル : 思ったより姫騎士寄りの武人さんみたいです……。
リコリス : 「……で、なんで『防護と蘇り』だとか『友愛』だとか、いろいろとっちらかって聞こえる教えになってるかというとだね……、全部に共通するものとして『愛した者を諦めない』っていう……まあ、若干ロマンチスト的な文脈があってさ」
ソレル : 好きすぎる。信仰しようかな。
リズ : お似合いですね。
ソレル : やっぱりー?
リコリス : 「明記されているわけではないんだけど。聖書の解釈として、『ルフランは対決した蛮族の将と友愛の情を結んで、それを無にしないために死の淵から立ち上がった』っていう伝承があってね」
シエル : 「蛮族の将と友愛、ねぇ」あ、特に含みはない相槌です。
リコリス : 「ほら。そう解釈すると、ルフランにとって自分が倒れたら、その蛮将は自分の友人を殺したってことになってしまうだろ?だからルフランは死に臨んでも立ち上がった。そういう風に自分たちの間にある愛を否定させないために、潰えさせないために立ち上がった……ってことになってる」
聖書を片手に、リコリスはシエルに説明を続ける。自らが崇める神と、その教義の解釈を。
リコリス : 「だから、教義にある「蘇り」っていうのも、実は手段に過ぎないんだ。本当に根っこのところにあるのは、自らが望んだモノを手に入れるために、死さえ乗り越えて何度でも繰り返すこと。……うーん、うまく言えないや。なんとなく、わかる?」
シエル : 「じっくり話してくれたからね、だいたい掴んできたよ。ありがとね」
シエルはリコリスの説明を聞きながら、横から聖書の記述を覗く。ふと目に止まったのは教義の一説───『汝、愛望む者の手を取れ。手中に収むこと、躊躇うことなかれ』。
シエル : 「……ねえ、リコリス。友達同士になった僕の事も、君は決して外に逃さなかったりするのかい?」と茶目っ気のある感じで発言するよ。すぐに冗談だと分かる感じにね。
GM : 「ふふ」と、リコリスも茶目っ気ある感じで笑い返します。
リコリス : 「……そうだね。そうできたらいいね」
リズ : この人リコリスさんも、気になることが多すぎますねぇ。
シエル : 「……少なくとも、僕らは一か月はこの館にお世話になる。それからのことは分からないけど、それまでは友達同士、仲良くしよ?」
リコリス : 「……そうだね。あのさ、シエル」
シエル : 「なんだい?」
リコリス : 「実をいうと、僕、ルフランの教義の……愛とかなんとか言ってるところ、ちょっと気恥しいんだよね。聖句として書いてあるからそういってるけど……。なんというか、そこが本質じゃない気がしてさ」
「もっとこう、根本的な欲求というか、そういう聞き触りの良い言葉じゃない……」そこまでいって、「ごめん。忘れてくれ」と首を振ります。
シエル : 「......うん、わかった。それなら今度は、僕の宗教について話す番だね!」そういって今度はミルタバルについて彼に話し始める~
GM : では、そうして時間は過ぎていきます……
GM : あ、カルミアですが、あれからずっと眠り続けています。オーウェン曰く、どうにも健康なはずなんですが、疲れなのかそれ以外の理由なのか、目が覚めません。両親にも連絡を取った、ということでリコリスから話を聞いています。……下手に動かすのも、ということで、彼女は「黄の部屋」に寝かされています。
シエル : そのための空き部屋。
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