1-7:物語は動き出す

GM : ……と言いたいところなんですけども。


リズ : 「ううう……、もう駄目です……」

ソレル : 「みんなー!!」


GM : さてはて、ソレルさん。あなたは無事ですね。無事なので、きっとあたりを見回す余裕がある。あるね?

ソレル : あります。

GM : では、貴方は、倒木の近く……川岸のあたりに、 一人の男性が目を丸くして佇んでいることに気が付きます。


-青年-

https://drive.google.com/file/d/1v8PMzGCih5ZaMHuAlm3lKmeah9Xara7W/view?usp=sharing


ソレル : 「そこのあなたー!助けてくれないー!?仲間が流されちゃってー!!」

??? : 「…………………」


佇む男性は、銀髪青目の青年であった。表示される立ち絵に、沸き立つPL達。

その姿は正しく。館でみた肖像画の男性、その人であった。


??? : 「な、るほど?」

??? : 「寡聞にして存じ上げないものの、世の中の若人の間では、嵐の日に川に飛び込むことが流行っていたりするのか……と、戸惑っていたのだが。つまりあれは溺れていると」

ソレル : 「そんなの流行るわけないでしょ!!常識で考えてよ!!!」

??? : 「す、すまない。ちょっと生憎、常識というものにはとんと離れた生活をしていてね!」

ソレル : 「まあいいやー!誰か助け呼べる人いないかなー!?」

??? : 「…………。ここから僕の家までは徒歩10分はかかる、助けは諦めてくれ」

ソレル : 「そんな……」

??? : 「……やるしかないか」そう呟き、青年はあなたの手を取ります。

??? : 「その代わり、僕の言うことを真面目に聞いてくれまいか」

ソレル : 「……へ?」


青年は至極真面目な様子で、ソレルに言葉を投げかける。


??? : 「まず質問!あの3人は君の友人か!?」

ソレル : 「はい! 出会ったばっかりだけど、たしかに私の友人です!」

??? : 「よし!では、今から僕は非常に非常識なことを述べるのだが、君の友人たちの救助に必要不可欠なことだから笑わずに聞いてくれ」

ソレル : 「わかった」

??? : 「今ここで僕と友人になってはくれまいか」

??? : 「いや、正確には、友愛でも親愛でも恋愛でも、愛と名のつくものであれば何でもいいから感じてくれ。いっそ一目惚れとか……なんかそこらへんの、なんかでもいいから!!」

ソレル : 「………、恋愛とかは無理だけどお友達なら……!」

アル : フってますけど……。

??? : 「よし!」そして、友人の友人は友人! あそこにいる3人も僕の友人! そういうことにした!!」

シエル : なんだろう。友愛による防護とか?

ソレル : 「たぶんみんな喜んで歓迎してくれると思う!友達の友達は友達!」

??? : 「よし!!!」と頷いた青年は外套の中に手を突っ込む。


GM : なにかを勢いよく取り出すと、自らの額に当てて、祈るように目をつぶります。雨の音に負けぬよう、朗々と声を張り上げて。

??? : 「巫士の名に置いてここに誓う。彼らは我が陣、わが友愛の及ぶ者!」

??? : 「我が友誼において手を取り給え。我友を御手に救い上げ、その窮地を救いたまえ!我が身を捧げし《秘め神》、ルフランよ!」

GM : ……彼がルフランの名を叫んだ直後。瞬時に、川の中から、アル、リズ、シエルの姿が掻き消えます。

ソレル : 「おー!?」

GM : その代わりに、青年の手の中に彼らの手が現れ……、4人で手をつないでいる状態に。

??? : 「…………あっはっはっは、よかったー、うちの神様適当で!」


リズ : 「な・・・な・・・!?」

ソレル : 「すごいすごい! 奇跡だ奇跡!!」

アル : 「けほっけほっ」と水を吐き出します。

シエル : 「し、死ぬかと思った」

??? : 「今のでいいのか。いやあ、よくなかったら困ってしまうがね!」


リズ : 「ご、ご主人様ー!!なんだかわかりませんが助かりましたよね!?生きてらっしゃいますよね!?」

アル : 「うぅ……なんとか生きてます……リズさんシエルさんも生きててよかったです……。大丈夫ですよ。ぼくはここにいますから」と泣いてるリズの背中をぽんぽんして精一杯なぐさめます。

ソレル : 「ほんとありがとう。みんな無事助かったし、なんてお礼をしたらいいか……」

??? : 「礼はいらないよ。流石の僕も、久しぶりの外出で目の前で人が死ぬのは見たくなかったらからね」

シエル : 「そうだ、カルミアさんはどこに!?」

??? : 「……カルミア? 彼女の知り合いなのかい?」

ソレル : 「うん。彼女の依頼で、この島にお墓参りに来たんだけど……」

??? : 「墓参り? この島に、来た?……こいつは驚いた。この島の外にまだ人間が残っていたとは」

シエル : 「......え?それはどういうことだい?」

GM : そうして顎に手をやり、首をかしげますが……はっと気が付いたように顔を上げます。

??? : 「ああ、いや。こんな雨の中で突っ立ってする話もなかったな。そのままでは冷えるだろう。この近くに人の住む場所はないと聞いているし……まずは、館までご案内するよ」

??? : 「あの子に怒られそうだが。ま、これくらいなら許してくれるだろ」

ソレル : 「ありがとう、何から何まで……。あ、そうだ。名前」

??? : 「ん?」

ソレル : 「友達の命の恩人の名前も知らずにお世話になるのなんて、寂しいなって思ってさ。私はソレル・チェスナット。あなたは?」

??? : 「……ああ、そういえば名乗ってもいなかったか。道々呼ぶ名もわからなくては勝手が悪かろう。丁寧にありがとう。僕はリコリス。……姓はないが……強いて名乗るのであれば、ルフランかな。リコリス・ルフランとでも呼んでくれ」

リコリス : 「他の君たちは?」

シエル : 「僕はシエル・ツィカーデ。しがない神官だよ。僕たちを助けてくれてありがとう」

アル : 「アルです。助けてもらってありがとうございます」命の恩人なので流石に人見知りはしないでぺこり。

リズ : 「リズです。この度は、ありがとうございました」頭下げつつまだ泣き止めない。

リコリス : 「……帰ったら、あたたかいハーブティでも入れてもらおう。きっと心が休まるさ。それに先ほどもソレルにいったが、礼は……」と言いかけて、ふむ、と口をつぐむ。

リコリス : 「とはいっても、そう割り切れるものではないか。好意は貰っておけとも書にあるし……。では礼を言う代わりに、一つ頼まれてはくれまいか」


と前置きし、青年―――リコリスは冒険者たちに向き直る。


リコリス : 「先ほどの勢いで神に誓ってしまったが。生憎、僕は巫士でね。神に嘘をつくというのも具合が悪い」

リコリス : 「だから、友人になってくれ」

ソレル : 「……もちろん!」すっと手を出す。握手の構え。

ソレル : これ一目惚れしてたら恋人になってくれって言われてたってことですか???

リコリス : では、一瞬きょとんとするのですが、はにかんで手を握り返す「よろしく、ソレル」


ソレル : これさ、一目惚れでよかったならそのまま恋人になってたの?

GM : そうだけど(真顔)

ソレル : ふふ、旦那がいて良かった(?)


GM : ではその後リコリスは「おーい、君たちもだぞ!他人事みたいな顔をするなよ!?」と皆さんの方を向いて声を張り上げたところで。今回は一旦幕、としましょうか。お疲れさまでした!

全員 : お疲れさまでした!




こうして冒険者たちは、リコリスと名乗る青年と出会った。


カルミアの失われた記憶。

館の廃墟。

ルーンフォークの死体。

血塗れの肖像画。

秘め神、ルフラン。


解き明かす謎は多く、今だその全容はようとして知れない。

しかして、たとえ時の歯車が巻き戻ろうとも、物語は今動き出した。

冒険者たちはこのキャンペーンを通して、どのような物語を紡いでいくのか。どうかお楽しみにして頂きたい。


それでは、また第二話でお会いしましょう。

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