第8話:激突
「おい、こら、偉そうにしやがって、お前の養父は士族ではないか。
士族ごときに伯爵令息の俺様が恐れるとおもっているのか」
昼休みには何事もなかったので、無事に帰る事ができると思ったのですが、ムハメドフは急いで私の養父を調べさせたようです。
準男爵のウェイフ殿は貴族ではなく士族です。
ムハメドフから見れば平民同様に踏みつけにしても構わない存在です。
王国法でもそれに近い身分差がつけられていますが、名誉棄損に対する決闘権だけは保証しています。
王家に敵意を持つ大貴族が、王家直属の士族を潰せなくする予防策です。
「あら、本当に何も知らないのですか?
朝にも言いましたが、貴族と士族の身分差があろうと、名誉棄損には士族でも貴族に決闘を申し込む権利が保障されているのですよ」
私が自信満々の表情で言うと、ムハメドフが恐れをなして一歩下がりました。
ですがそんな自分の憶病を恥じたのか、直ぐに怒りの表情を浮かべました。
わざとそうし向けた私は、正直しめたと思いました。
殴られることを覚悟して、一撃で気絶しないように注意しました。
ムハメドフと取り巻きしかいない教室で気絶してしまったら、何をされるか分かったものではありませんからね。
「じゃかましいわ」
ムハメドフは平手ではなく拳で私を殴りつけました。
殴られる直前に逆方法に飛んで、少しでもダメージを少なくしようとしました。
自分から飛んだので、ダメージを減らすことができましたが、それでも殴られた頬はとても痛いですし、みるみる腫れてきているのが分かります。
必死の想いで立ち上がって、ムハメドフ達を睨みつけてやります。
「やれ、士族ごとき金と権力で黙らせてやる、この場で嬲り者にしてやれ」
私を学園の教室で輪姦しようとするなんて、野蛮にもほどがあります。
王太子が陰供に護らせてくれているとは思いますが、学園内、教室の中だけは安全だと思い込んでいるかもしれません。
誇りを守るためなら、ここで死ぬしかないかもしれません。
私が自害すれが、あの王太子なら激怒してくれるでしょう。
命と引き換えにムハメドフ達に復讐できるのならそれもいいかもしれません。
バッチーン
ムハメドフの頬に白手袋が叩きつけられました、決闘の申し込みです。
ムハメドフは自分に何が起こったのか全く理解していません。
私も事情を知らなかれば戸惑っていたでしょう。
ムハメドフ達が誰も入れないようにカギをかけた教室に、音も立てずに入る事のできる強者、それは王太子の武術指南役で国王陛下の隠し子、ウェイフ卿。
「最悪の想定通りに動くとは、あまりにも愚劣だね。
その白手袋の意味は分かるね、ムハメドフ卿。
王太子殿下の剣術指南役の娘を輪姦しようとしたんだ、伯爵令息ごときの権力で逃げられると思うなよ」
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