第2話:謎の男
ホォー、ホオー、ホォー、ホォー
フクロウが鳴く夜道を歩くのは結構怖いモノですね。
コセールかムハメドフが刺客を放っているかもしれないと心配していましたが、そこまでは悪辣非道ではなかったようです。
それとも、証拠を残すのが嫌で自重したのでしょうか。
もしかしたら、私を簡単に殺すのではなく野垂れ死にさせたいのかもしれません。
「お嬢さん、こんな夜中にどうしたんだい。
お嬢さんのような令嬢がこんな時間に独り歩きしていたら、悪い男に襲われてしまうよ、直ぐに家に帰った方がいい」
やれやれ、やはりコセールかムハメドフが刺客を放っていたのでしょうか。
それとも無関係な人攫いという事でしょうか。
親切な男性だと思いたいですが、気配がただ者ではありませんから、一般人とう事はありませんよね。
さて、どうしたものでしょうか、ドレス姿で逃げ切れる相手とも思えませんし。
「ああ、俺の事を警戒しているのかい、確かにこんな夜道で男に会ったら、警戒するのが普通だよな、うんうん、それがいい、それでこそ令嬢だ」
ふざけた男ですね、私の事をからかっているのでしょうか。
もう手に入れたも同然の獲物を嬲って楽しんでいるのでしょうか。
舐めてもらっては困ります、これでも護身術の心得くらいはあるのです。
でも、だからこそ、眼の前にいる男が只者でない事も分かっています。
誇りを守るために、この若さで自害しなければいけないのでしょうか。
「あ、今自害しようと思っただろ、駄目だぞ、そう簡単に諦めて死んではいかんよ。
俺はこう見えて親切な男だから、お嬢さんが心配なだけだよ。
この場で襲って欲望を満たそうとか、攫って売春宿に売って金にしようとか、全然考えていないから安心してくれ」
本当にこの男は何者なのでしょうか。
気配には父やコセールやムハメドフのような邪悪さがありません。
ですが、只者ではないと思わせるだけの気配が確かにあります。
本当の強者には、邪悪さを隠すだけの力があるのでしょうか。
「なあ、お嬢さんよ、屋敷で何があったかは分からないがよ、家出なんかやめて帰った方がいいんじゃないか」
さて、ここで背中を見せて屋敷に帰るふりをした方が安全なのか。
それとも家を追放になったと正直に言う方がいいのか。
自暴自棄になるわけではありませんが、この状況でこの男から逃れる方法が何も思いつきません。
犯罪者ギルドのチンピラくらいなら勝てると思い上がっていた、私が愚かでした。
「家出ではないわ、妹と婚約者に嵌められて、父に追放されたのよ。
もう帰る家がないの、だから余計なことは言わないで、道を開けてちょうだい」
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