妹に婚約者を奪われ家から追放されましたが、王子様が迎えに来てくれました。
克全
第1話:婚約破棄追放
「ジャネット、見ての通りだ。
アマニ伯爵家から婚約解消だと通告があった。
お前の役立たずにはホトホト呆れた。
私が婚約を整えてやったのに、相手に嫌われて台無しにしおって。
コセールがムハメドフ殿の心を射止めてくれたからよかったものの、そうでなければ大問題になっていたところだ。
お前のような役立たずはもう家に置いておけん。
当主権限で追放するから、どこでも好きな所に行くがいい」
前から馬鹿だとは思っていましたが、ここまで底抜けの馬鹿だとは思っていませんでした、でも今更手遅れなので何を言っても仕方ありません。
妹のコセールが、私の婚約者だったムハメドフにしなだれかかり、手を恋人繋ぎしている時点で、伯爵令嬢にあるまじき婚前交渉を疑うべきでしょう。
いえ、それ以前に、姉の私のモノを何でも欲しがったコセールの性格を思い出せば、私に問題があるのではなく、コセールが私の婚約者を略奪したと直ぐに理解できるはずです。
「はい、分かりました。
身の回りの品を片付けて出て行かせていただきます」
でも、これでようやくこの家から出て行けますし、好きでもない男との結婚からも逃れることができます。
これからどうやって生活するかという問題はありますが、何とかなるでしょう。
しばらくは友達の家に厄介になって、じっくりと今後の事を考えましょう。
「あら、家名にこれほどの傷をつけて、身の回りの品を持ち出そうなんて、あまりにムシがよすぎますわジャネット御姉様。
父上、ここは何も持たせずの家から追い出すべきだと思いますの」
おのれコセール、婚約者を奪っただけでは満足できずに、私の持ち物全てを奪う心算ですね。
「差し出がましいようですが、私もそう思いますよ、マカリ伯爵」
ムハメドフ、私が婚前交渉を断ったのを恨んでいるのですね。
それにしても、やる事が陰湿過ぎます。
こんな奴と結婚しなくてすんで本当によかったです。
「そうだな、ムハメドフ殿とコセールの言う通りだ。
ジャネット、家から何一つ持ち出す事は許さん。
今着ているモノと持っているモノだけは温情で与えてやる、そのままでていけ」
「それと父上、直ぐに全ての貴族にマカリ伯爵家からジャネットを追放した事を知らせなければ、ジャネットが追放になったのを隠してどこかの貴族家に入り込むかもしれませんわ。
そんな事になった父上が大恥をかいてしまいます」
本当に情け容赦のない女ですね、コセール。
これで下手に友達の家にお世話になったら、友達までコセールに眼をつけられてしまうかもしれません。
しかたありません、しばらくは橋の下で夜露を凌ぎましょう。
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