バレンタインデー

「あらセンパイ、御機嫌よう。本日はお日柄も良く」

「なんだ気持ち悪い」


「その……えっと、今日が何の日か……(もじもじ」

「バレンタインデーだろ」


「あれ~? もうそんな日でしたかー」

「なんでお前が男子中学生みたいな反応してるんだよ」


「あの、センパイは甘いものとか、コーハイちゃんとか好き……ですか」

「甘いものは好きだな」


「え、どっちも? そんなセンパイのために頑張りました!」

「人の話聞けよ」


「じゃっじゃーん! 1/1スケールのコーハイちゃんチョコ! 型取りして細部まで再現しました!」

「電話ボックスみたいな箱があるなと思ったら……」


「さて。ではどうぞ頂いちゃってください! お好きなところから、ガブッと!」

「ええー……」


「頭から食べるアナタは正直で真面目な人。たまにはハメを外しちゃうのもアリかも?」

「心理テストかよ」


「唇から食べるアナタは情熱的。だけど目の前にいる本物にその情熱を注いでみては?」

「いや、そんなとこから食べんわ」


「二の腕から食べるアナタはプロセスを大事にするタイプ。次はこっそり指チュパ、ですね?」

「ですね? じゃねーよ」


「胸から食べるアナタはむっつりスケベ。あーあ、手の平がチョコで汚れちゃった」

「いや、触ってないから。嘘実況はやめて」


「おしりから食べるアナタに朗報、実は安産型。子供は男の子と女の子一人ずつがいいな」

「何の話!?」


「ちなみにそのスカート、着脱式になってるんですよ。スカートめくりも可能です」

「やらねーよ。それ聞いてどんな気持ちになりゃいいんだ」


「うわっ、やらしーなー。とか」

「そう思ってほしいならせめて冒頭くらいの恥じらいを見せろ」


「では改めてセンパイ、どこから貪り食いますか」

「いや、チョコでも齧りついて傷つけるのは流石に抵抗があるな」


「くぅ~、わっかりました! センパイを困らせるこいつはポイーッで」

「溶鉱炉に沈んでいく! 親指立ててるけど無理だ、絶対戻ってこれないっ!」



「というわけで普通の手作りチョコです。はい」

「……変なものとか入れてないよな」


「愛情マシマシです。にんにくマシマシの方がお好みでした?」

「無し無しで」


「いやー、それにしても来月が楽しみですね~」

「は?」


「だってホワイトデーですよ、三倍返しですよ! 三人のセンパイ型クッキーが……」

「やだよ。ほれ」


「え?」

「お返しの先渡しだ」


「ハロウィンの恐怖再び! って、これ、用意してくれてたってことは」

「あーチョコうめー」

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