成人式

「振り袖は良いものだ」

「鼻の下が伸びすぎて地面に付きそうな勢いですよ、センパイ」


「見ているだけで心が浄化されるようだ」

「でしたらセンパイ、ここにいる振袖姿の後輩を見たら昇天しちゃうんじゃないですか――って、このやり取り前回もやりましたよね」


「そーだなー、昇天じゃなくて掌底を食らわせちゃうかなー?」

「あれー? やっぱり聞き覚えがあるような~?」


「だからややこしい格好するなって言ってんだろ! 成人式に出るわけでもないのに振袖着て歩くなっての!」

「そういうセンパイは二度目の成人式ですか」


「いや待って、一度目だってまだなんですけど。永遠の十八歳なんですけど!」

「まるで17才教みたいな言い方しないでくださいよ。居ますよね、すごく老け顔の人」


「お酒を買うのに絶対年齢確認される必要のないやつとかな、重宝がられたよ」

「センパイ、今は年齢確認必須の時代です。嘘ってそういうところからバレるんですよ」


「……そもそも未成年だから。お酒飲めないから」

「何を今更『忘れてた!』みたいな顔してるんですか。良いじゃないですか、年の差カップル」


「親子ほど離れてるじゃん。ていうかシチュエーション的には教師と生徒だよねそれ」

「周回プレイですよ。人生イージーモード。高校転生二周目みたいな」


「実際は留年した時点で人生ハードモードだけどな。定時制か通信で頑張れ」

「ちなみにコーハイちゃんの設定は二周どころか三度目の成人式です」


「還暦かよ! てかお前の方が年上で後輩ってわけわかんねーな」

「ちなみに見た目は10代なので合法ロリです。セフセフ」



「ところで年上女房の方がうまくいくって言うよな」

「ちょっと待ってください、戸籍書き換えますから」


「公文書偽造で捕まるな。いや、やっぱり最強は幼馴染だと思うんだ」

「近所の優しいお姉さんとか守ってあげた気弱な女の子とか」


「でも実際に異性の幼馴染と仲良く成長するってそうそう無いよな」

「『ほらほら、早くしないと遅刻しちゃうよ』なんてラノベだけですからね」


「別に異性じゃなくても良いんだけどさ。幼馴染と成人式に参加して、初めてお酒を飲み交わすなんて最高のシチュエーションだと思うんだ」

「リアルな話、お酒の失敗って最初に飲んだ時が一番多いんで、やらかしちゃっても大丈夫な人と飲むのをオススメします」


「まるで何かやらかしたような言い方だな。限界をわからずにやらかしちゃったか」

「むしろザルでした。底抜けの」





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