初詣
「巫女さんは良いものだ」
「鼻の下が伸びすぎて地面に付きそうな勢いですよ、センパイ」
「見ているだけで心が浄化されるようだ」
「でしたらセンパイ、ここにいる巫女装束の後輩を見たら昇天しちゃうんじゃないですか」
「そーだなー、昇天じゃなくて掌底を食らわせちゃうかなー?」
「ええー? なんで~?」
「初詣に巫女の格好して来るやつがあるか! ややこしすぎて神社に迷惑なことこの上ないわっ!」
「斬新だと思いません? 巫女コスで初詣って」
「この作品『王道』って謳ってるんだが」
「センパイ、メタ発言は謹んでください」
「お前随分長く祈ってたけど、何をお願いしてたんだ?」
「ええー、恥ずかしいですよ~。センパイこそ真剣に何をお願いしてたんですか~」
「い、いや、良いだろ別に」
「ではここでビデオ判定。時間を巻き戻してみましょう」
――境内にて。
(世界が平和になりますように……)
(巫女っとアイドルになれますように……)
「なんだよ巫女っとアイドルって!?」
「センパイだって世界平和って! ……世界平和って!」
「な、なんだよ。おかしくはないだろ」
「ええそりゃあもう! センパイの愚直さにキュンキュン来てますけど! それはそれとして! たった五円ぽっちで世界が平和になるなら今頃世界は平和のパレードです。オンザパレードです」
「そこまで言うなら五円に相応しい願い事ってなんだよ」
「そりゃあもちろん人のご縁ですよ。センパイはこんな健気で可愛くて先輩思いの後輩を持てることに感謝するべきです」
「なるほど、人の縁か。つまりお前と出会ったのも運命のお導きってわけだ」
「ええ、そうです――って、セ、センパイ?」
「全ては神の思し召しさ。巫女なんだろ、お前の神様は何て囁いているんだ?」
「ああっ、センパイ……そんな……」
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「――夢か。えっ、つまりこれが初夢? ということはセンパイと一緒に行く初詣でこれが正夢に……? キャーッ! 巫女コス準備しなくっちゃ! これは寝てらんない! センパイ、待っていてくださいねっ!」
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「――夢か。なんつー初夢だ。今日一緒に初詣に行くって約束しちまったからな……これが正夢に……? いやいやマズい。ていうかあいつ本当に巫女装束で来たりしないよな?」
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「センパイ、おみくじ引きましょう!」
「えーっと……平?」
「あははっ、何ですかそれっ。平凡ってことですか?」
「こんなの引いた時点で平凡じゃないけどな。お前は?」
「大大凶」
「強く生きろよ」
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