第25話 瀬戸美月 料理する(ついに)

「健司さん!今日の夕ご飯は私が料理します!」

瀬戸美月は、恋人である早乙女健司についに宣言した。

健司は、素直に驚いた。

「美月、急に料理するってどうしたの?」

「健司さん、実は・・実は私は・・」


ついに明かした。


「料理教室に通っていたんです!」

「ええ!?」


美月が通っていた料理教室。

先日、そこでまともな料理を教えてもらったのである。


平日の仕事帰りに通っていた料理教室。

頑張ったのである。



夕方、買いものも美月が一人で行ってきた。

健司はリビングではらはらしながら待っている。

美月はレシピを印刷した紙を見ながら料理をしている。

まだ、慣れない手つきである。


2時間ほどして、料理が出来上がった。


出来上がった料理を並べる美月。

ご飯。豆腐とわかめの味噌汁。そして肉じゃがである。

「これは・・おいしそうだ」

「えへ・・ありがとうございます」

「では、いただきます!」


基本に忠実な肉じゃが。

ちゃんと野菜に面取りもしている。

ジャガイモを箸で取り、口に入れる。

甘すぎもせず、しょっぱくもなく。

本当においしく出来上がっていた。

「おいしい・・本当においしいよ」

ジャガイモにちゃんと味が染みていて。人参もいい感じ。

肉も柔らかく。本当においしい肉じゃがである。

ご飯もちゃんとおいしく炊けている。

みそ汁も、出汁がしっかりとれている。

基本を忠実に守った、おいしいご飯である。


「健司さん、ありがとうございます。頑張りました」

「美月。ありがとう。おいしいよ」

おもわず、美月を抱きしめる健司。

平日に料理教室に通うなんて、苦労したんだろう。


頑張ってくれた美月に感謝する健司であった。




だが、健司は同時に・・・・あえてキッチンのほうを見ないようにしていた。

なんとなく雰囲気でわかる。

調理道具などが流しに積みあがっている。


食事の後の片づけは、料理のお礼に自分がやろう。

美月を抱きしめながら、健司は心の中で誓うのであった。


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