第24話 瀬戸美月 実家から荷物を持って帰ろうとする

「健司さん、いらっしゃい」


今日は、美月と健司は瀬戸家にやってきた。

表向きの理由は、美月の冬の衣服を取りに来ること。

裏の理由としては、美月がゲーム機を持って帰ることだった。


「じゃあ、私は荷物をまとめてきますね」

美月は自分の部屋に行ってしまう。

「健司さん、今日はご飯を食べていきますよね?」

「あ、ご迷惑ではないでしょうか?」

「いえいえ、ぜひ食べていってくださいな」

「じゃあ、申し訳ないですから手伝いますよ」

「そう?じゃあお願いしようかしら」


料理を手伝う健司。

その手際を見て、さくらは感心した。

料理の腕前は良さそう。だが、肝心なのはそこではなかった。

料理をしながら片付けをする手際が良いのだ。

野菜などの材料を切る。

切り終えると同時に包丁やまな板を洗う。

材料を炒めて、煮込みに入る。

すぐに、使い終わった調理道具を洗う。

その手際はスムーズで普段から料理をしていることは明らかだ。

”まさに、見事ね”

それに比べて・・・わが娘ときたら・・・


その頃、瀬戸美月は・・・

”ダンボールにゲーム機を詰めて・・ソフトはどうしよう?全部は持っていけないから・・

 あぁ・・どれにするか迷う・・”

ちなみに美月は、持っていく衣服をもう選んである。

そもそも、美月は年頃の女性にしては持っている衣服は少ない。

選びようがないのだ。



やがて、食事となった。

「この料理、健司さんも手伝ってくれたのよ」

さくらは家族に言う。

食卓を囲んだ、瀬戸家の面々。

菊夫・さくら・ひなた  そして美月と健司。

「この煮物、美味しい!」

瀬戸ひなたが言う。

「それ、健司さんが作ったのよ」

「ほんと?健司さんすごいんですね」

「いえ、レパートリーはそんなに無いんですよ」

謙遜する健司。

「健司さんの料理ってほんとに美味しんだから!」

なぜか自慢げな美月。

瀬戸家の一同、健司の料理の腕前に満足したのだった。


「じゃあ、私はもうちょっと荷物を整理するので」

食後に美月は自室に戻る。


リビングでは健司と一緒にお茶を飲む一家。

「そうだ、いいことを思いついたわ」

さくらが言った。

注目する一同。


「健司さん、この家に一緒に住むのはどう?」


本心では、

”健司さんがいたら、家事が楽になるかもしれない”

と打算だった。

すぐさま、菊夫が言う。


「あぁ。それはいいアイデアもしれないね。さすがお母さん」


”健司さんの車に乗せてもらえるかも。あわよくば運転させてもらえるかもしれない”

という打算だった。


「いいじゃない?」

とひなたが言う。


”美味しいご飯が食べられそう、それに高収入の義兄ってお小遣い貰えそう”

という打算だった。


健司に注目する一同。

そのさなか、健司が思うのは唯一つ。

”え〜、まだ結婚するって決まっていないんだけど。まだ付き合って4ヶ月たってないんですけど。なんで結婚することになっちゃってるの?”

焦る健司。

大体、付き合いだして4ヶ月足らず。

もし結婚したら、芸能人もびっくりのスピード結婚だ。

”美月・・・早く戻ってきて”

切に願うのだった。


「おまたせー。荷物まとまとまりました」

美月がようやく戻ってきた。

「あらあら、じゃあお茶を入れてくるわね」

さくらはキッチンに戻っていった。

「なんの話をしていたの?」

菊夫が言う。

「健司さんに、一緒にすまないか提案してたところだよ?」


「え〜それは、嫌だなあ」


”口うるさい母親から離れていたい”

という打算だった。


”そもそも、結婚することが当たり前のように話を進めないでほしい”

頭を抱える健司であった。


ーーーー


健司と美月は、健司の部屋に帰ってきた。

ダンボールを荷物として運び入れている。

「じゃあ、まず荷物を出しますね」

美月は、ダンボールに入っているものを出していく。

すぐに、悲壮な顔になる。

「ない・・ない・・えぇ・・?」

「どうしたの?」

確かに入れたはずのゲーム機がないんです。

「ええ?入れ忘れじゃないの?」

本当に無いことを確認。

「じゃあ・・」

後考えられるのは、入れ忘れだろうか。

もしくは・・・


「さくらさんが、抜き取ったんじゃない?」

「えぇ?」


美月が桜さんに電話する。

「あらあ、そろそろ電話がかかってくると思ってたわ」

「おかあさん、入れたはずの荷物がないんだけど」

「あらあ、おかしいわね。私はゲーム機以外は出してないわよ」

「そのゲーム機よ!ちゃんと残ってる?」

「それはいいけど・・美月ちゃん。まだゲームをしているって、健司さんに知られてもいいの?」

「う・・・この間許可はもらったわ・・」

「それでも、ゲームなんて必要ないでしょ?」

さくらの策略は・・ゲーム機を自宅に確保していれば美月も帰って来るしか無いだろう。というものであった。


「じゃあ、もし欲しかったら健司さんから送ってほしいと連絡してもらってね」

”ええ??”

流石に健司にはお願いしにくい。


今回、美月はゲーム機を持ち帰ることは出来なかった。


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