第21話 瀬戸美月 彼氏の両親に紹介される

日曜日。

早乙女家に、長男の健司が彼女を連れてくる。

いつのまにか、彼女が出来ていたらしい。

もう、アラフォーの長男が結婚するのは諦めていた。

それが、彼女を紹介しに来るということは結婚の可能性があるということ。

母親の香織は、落ち着かない様子でお茶菓子の準備をしたりしている。

「そろそろ来る頃か・・」

ソファに座っていながらも、落ち着きのない父親の良太。

「それにしても、どんな相手か聞いたのか?」

「まだ聞いてないわ、突然だったんですもの」

「そうか・・」


そんな時、車の止まる音。

そして玄関が開いた。

「ただいま、今着きました」

長男の声である。

玄関に向かう。

玄関には、長男とブラウスにスカートのおしゃれな女性。

「本日はお招きいただきありがとうございます。瀬戸 美月と申します。」


頭を下げて挨拶する女性。

”あら、礼儀正しいわね”

「いらっしゃい、お待ちしてましたわよ」

と母親が声をかける。


その女性が顔を上げる。

両親ともに、想定外の事態に思考が停止した。


思っていたより、年齢がかなり下だったのだ。



ただでさえ、美月は若く見られることがある。

どうみても、20代前半。

可愛らしい、お嬢さんである。


健司は思った。

”まぁ、そうなるよな〜”



母親のほうが先に、思考が働き出す。

「あ・・・げ 玄関ではなんですからお上がりください。」

「では、お邪魔いたします。これ、お土産です。お口に合えばいいのですが。」

手土産を渡す美月。


リビングに通された美月は、ソファに座った。隣には恥ずかしそうな健司。

「はじめまして、健司の母の香織です。こちらは父親の良太です」

「はじめまして、健司さんと交際させていただいている瀬戸 美月です。よろしくおねがいします。今日は突然の訪問で申し訳ありません」


ーーーー


実は、今回の訪問はもともとは美月の紹介が目的ではなかった。

実家のパソコンが調子が悪くなり、プリンターで印刷できなくなったので見に来いとの連絡があったのだ。

健司は仕方なく実家に帰ろうと思ったのだが、ついでに美月も紹介しようと思いついたのだ。美月も非常に乗り気であった。

何しろ、瀬戸家には何度も行っている。

健司は両親には交際していることさえ告げていなかったのだ。


ーーーー


「で、パソコンの調子が悪いって?パソコンはどこ?」

健司はもともとの目的を終わらせようと、父親に聞いた。

「あ・・あぁこっちだ」

2階にある父親の部屋にいってしまう。


後に残ったのは母親の香織と美月。

「あの、瀬戸さん?お若いんですね。失礼ですがいくつなのかしら?」

若干引きつった笑顔で香織は聞いた。

「はい、私のことは美月で大丈夫ですよ。今は24歳です」

香織は、あらためて言葉で聞いた年齢に衝撃を受ける。


健司に結婚の可能性があると思って期待していた。

しかしながら、これだけ年齢が離れているとどうなのであろう?

本人たちは良くても美月のご両親は反対するのではないだろうか?

「健司と付き合って、どれくらいになるのかしら?」

「まだ、数カ月です。でも、とても良くしてもらっています」

「美月さんのご両親は交際のことをご存知なのですか?」

「はい、健司さんを紹介したらすっかり仲良くなって。両親ともに健司さんのことが気に入っているんですよ」

香織は狐につままれたような思いになった。


その時、2階から健司と良太が降りてきた。

「お待たせしたね。もう直ったよ」

健司は美月の隣に座る。

美月は健司にほほえみ、お疲れ様という。

どう見ても、相思相愛のカップルだ。

年齢差を除けば。


「それで、一応言っておくけど。実は今は一緒に暮らしてるんだ」

「え?なんですって」

「俺の部屋に美月も一緒に住んでるんだよ」

唖然とする両親。

「あ・・・あの、美月さんのご両親はなんと言っているのかしら?」

まさか、ご両親がアラフォーの男と同棲を許可するはずがないと思いながら母親は聞いた。


「それが、どちらかというと母親に勧められて一緒に暮らすようになったので問題ないです」

ニッコリと笑顔で告げる美月。

それを聞いて両親は唖然としている。


”そりゃそうだよなぁ”

健司は両親の表情を見て思った。



普通は、親のほうから同棲を勧めてくるなんてありえない。

自分の両親の反応を見て、瀬戸家はやっぱり変わった家庭なんだなと思う健司だった。

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