第20話 瀬戸美月 映画を見る
瀬戸美月は、1か月ほど悩んでいた。
そして、とうとう早乙女健司にその悩みを告白した。
「健司さん、お願いがあるんです」
「うん、どうした?」
「私・・・ずっと悩んでいて言えなかったことがあるんです」
「え?いったい何?」
「実は・・」
「実は、今公開中のアニメの映画を見に行きたいんです」
ついに言ってしまった。
健司は美月の実家の本棚を見ているので漫画が好きなことは知っている。
それに否定的な言葉はなかった。
でも、恥ずかしかった・・・
それでも、見に行きたかったのだ。
健司は思った。
”あぁ・・・今、流行っているあの映画か・・”
何やら鬼退治の話ということを聞いたことはある。
健司は漫画もTVアニメも見ていないが、物凄く流行っていることは分かっている。
ニュースでもよく聞くし、コンビニなどでタイアップしている商品などもよく見る。
「大丈夫ですよ、週末に一緒に見に行きましょう」
「え・・本当ですか?」
目をキラキラさせながら美月は見つめてくる。
「今更、アニメに抵抗ある世代じゃありませんよ。美月が漫画やアニメが好きなのは知っているから大丈夫だよ」
「ありがとうございます!」
「だから、遠慮なんかしないでほしいな。付き合っているんだから、美月の趣味もちゃんと知りたいよ」
「うぅ・・・うれしいです」
美月は本当に涙ぐんでいた。
「健司さんに嫌われたらどうしようかと・・・ずっと悩んでいたんです・・」
「そんなことで、嫌うはずないじゃないか。大丈夫だよ」
美月を抱きしめる健司。
「ありがとうございます・・・」
健司の胸で涙ぐむ美月。
本当に悩んでいたのだ。
健司は、ありのままの美月を受け入れてくれる。
本当にうれしかった美月であった。
週末の映画館。
健司は、あんなことを言った手前、何も言わずに映画を美月と一緒に見た。
美月が見たかった映画。
それは鬼退治ではなく、魔法少女であったのだ。
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