第18話 閑話 早乙女健司 悩む

火曜日 20:30

早乙女健司は、会社を出て駅に向かう。

最近は、以前より帰宅時間が早くなっている。

会社の同僚たちは、何か察しているのか何も言わず帰らせてくれる。


駅へ向かう道の途中、飲食店の固まっているエリアがある。

”そういや、今度の土曜の街番組はこのエリアが放送されるって言ってたな・・”


そう思いながら歩いていると、行きつけの店が・・・

窓からは明るい光と、にぎやかな笑い声。

思わず入りたくなる。



”いかんいかん!”



強い心で誘惑を振り切り、駅に入る。

地下鉄のホームで電車を待つ。

心の中でボヤく。

”一人で自由に飲み屋に入れなくなったなぁ・・・”





まちがいなく、結婚できない男の考え方である。





電車に乗り込み、スマホをチェックする。

『今日の夜ご飯、おでんを作って待ってますよ~』

美月からメッセージが来ていた。

最近は、美月も料理をしようとしてくれている。

まぁ。簡単な料理になってしまうのはしょうがない。

それでも、ご飯を作って待ってくれているのはうれしい。

『ありがとう。いまは電車の中です。もう少し待っていて』

とメッセージを返信する。


”やっぱりガラケーのほうが文字は打ちやすいな・・”

ガラケーなら、画面をいちいち見ないでも入力ができた。

みんなはどうやって入力しているのだろう?



それにしても、美月はいつまで健司の部屋にいるつもりなんだろう?

いや、いてくれるのはうれしいのだけれど・・

健司の部屋は、二人で住むには狭いのだ。


今回の同居の件。

美月の母親の策略にはまっているような気がする。

あまりにも順調に、外堀を埋められている気がする。




”まだ、交際を始めて数か月なんだけどなぁ・・・”



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