第13話 瀬戸美月 職場に彼氏がいることが知られる

その日、その会社であっという間に噂が広まった。

総務部の瀬戸美月が男性とデートしているところを目撃された。

その噂は会社中の独身男性に一気に広まった。

残念がる者。嘆き悲しみ早退しようとする者。信じようとしない者。


なにしろ、会社の独身女性の中でベスト3に入る人気の美女。

それでいて、いかなる男性の誘いも断り、それどころか塩対応で有名な高嶺の華。

男性に興味がないとまで噂された、美女。


その瀬戸美月についに彼氏ができた。


皆、その男性が誰かと噂をしあった。

どの部署のどいつだ?誰が抜け駆けしやがったのか?


しかし、会社内では相手と思われる人物が見つからない・・


焦った男性陣は最期の手段を取ることにした。

スパイを送り込むことにしたのだ。


つまりは、女性に頼み込んで聞き出すように依頼したのである。

(報酬として、高価なスイーツを要求されたとか・・)


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そこは、女性たちにとって情報交換の場所であり、牽制し合う場所でもある。

給湯室もあわせ、男性の知らない世界。

それが、女子更衣室である。


「おつかれさまー」

「お疲れ様です。あ、例の書類を届けていただいてありがとうござました」

同期であっても、頭を下げて感謝の意を表す瀬戸美月。

「いやいや、大層なことしてないから大丈夫よ、瀬戸さん」

「いえ、本当に助かりました」


同僚たちは帰宅するために私服に着替えていく。

瀬戸美月も制服から私服に着替え始める。

「そういえば、瀬戸さん。彼氏ができたって聞いたわよ。本当なの?」

さっそく、直球で聞く。

すると、瀬戸美月は優しく微笑んで答えた。

「はい、縁あって交際していただける男性に合うことができました」

はぁ〜・・清楚美人はいいかたも違う。

「そうなんだ、おめでとう!相手はちなみに誰?どの部署の人?」

首を傾げて、困ったように答える。

「いえ、この会社の方ではないですよ」

「そうなんだ、ちなみに同年代なの?歳上なの?」

ニッコリと微笑んで言った。

「年上の方になります」

「いいわね〜、で どうなの?瀬戸さんはその男性のこと好きなの?」

すると恥ずかしそうに頬を染めて、目をそらし答えた。

「・・・はい」

なにこの娘、かわいい。


その女性は、報酬分の情報を得ることができ満足そうにインタビューを終えた。


その情報を得た男性たちは

「そうか・・年上好きだったのか」

「じゃ、俺もいけたんじゃ・・・」

と悔しがったという。


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「健司さん、早く会いたいです〜」

「今日は残業だから・・・明日合う約束してるでしょう、それよりも明日大丈夫なんですか?卒業検定でしょう?」

「うー。頑張ります・・・」

「早く寝たほうがいいんじゃないですか?」

「はあい、明日合格したらご褒美にご飯作ってくれませんか?」

「はいはい、ごちそうを作りますよ」

「やったー、頑張ります!」



そう、瀬戸美月は職場では大きな・・・大きな猫をかぶっているのである。

会社では、高嶺の華。

実態は、ポンコツな天然娘。

その事実は、家族と友人と健司だけが知る事実。



果たして、いつまで秘密にしておくことができるのか。

それは、誰にもわからない。

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