第11話 瀬戸美月 彼氏の携帯をスマホに変えさせる
「健司さんお風呂空きました~」
風呂上がりで、パジャマ姿の美月。
今日も、健司のところに泊まりに来ている。
「じゃあ、俺も入ってくるよ」
ソファから立ち上がる健司。読んでいたパンフレットをソファの横のマガジンBOXにいれる。
「一緒に入りましょうか?」
「え?・・いや、遠慮するよ」
あはは・・と慌ててバスルームに行く健司。
先日、健司は美月の父親の菊夫と飲みに行っている。
酔っぱらった菊夫に”うちの娘を傷物にしたらただじゃおかんぞ~”と言われたばかりである。
「ちぇ~」
リビングに残った美月は不満げに頬を膨らませるのであった。
ふと、マガジンBOXを見る。
パンフレット・・・携帯電話会社かららしい。
気になって、手に取った。
健司の携帯は、折り畳みのガラケー。
”なぜ今どきガラケー?”
といつも思っていたのだったが・・・
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風呂から出てリビングに行くと、美月が真剣にパンフレットを読んでいた。
顔を上げる美月。
信じられないといった顔をしている。
「健司さん。まだPHSだったんですか・・??」
手に持つパンフレットに大きく書かれてる文字。
”PHS終了まであと100日。スマホに変える最後のチャンス!”
「変えるのが面倒だったってのもあるけど、安いんだよ。
あと、小さいからポケットに入れても邪魔じゃないし。」
健司の携帯は、確かにかなり小さかった。
「でも、もうすぐ終わるんですよ」
「そうだよなぁ、そろそろ変えないとダメなんだろうけど」
「この際、スマホにしましょうよ!!」
「スマホねぇ・・ガラケーはメール打つのに楽なんだけど」
「今どきはみんなスマホですよ、SNSとかもありますし」
「そうだなぁ・・・」
渋る健司を説得し、明日は携帯ショップに行くことになった。
(あらかじめWebで予約した)
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「PHSからの機種変更だと、これらのオプションが無料になります。
また、これらの機種が今なら本体価格無料となっています」
店員から数台のスマホを画面で提示される。
”え~!オプションも本体も今どき無料?変えなきゃ損じゃない”と美月は思った。
「健司さん、もう変えちゃいましょうよ、このうちならどれかいいです?」
「これかなぁ」
と迷いなく指さす。
「へえ、どうしてですか?」
「え・・と、国産だから?」
「今どき、国産だからって同じですよ?」
「まぁ、でもね?」
店員が在庫を確認して戻ってくる。
「ブラックとホワイトとブルーがありますが、いかがしましょうか?」
「ブルーにしましょう!ね、健司さん」
美月のスマホもブルー(水色)なのだ。お揃いを狙ってである。
「じゃあ、ブルーにしようかな・・」
「では、ブルーでお願いします!」
美月が店員に言う。
「契約プランはどれになさいますか?プランはこういった種類が・・」
「これで」
健司は迷いなく、プランを指さす。
「はい、かしこまりました。少々お待ちください」
こうして、あっという間に機種変更は完了した。
健司はついにスマホデビューしたのである。
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近くのカフェに入り、美月は健司のスマホを借りている。
「これとこれ・・このアプリも入れちゃいますね。」
「うん、任せるよ」
「それと、これが一番重要なアプリ・・このSNSでメッセージのやり取りができるんです。これは絶対必要です。・・・私を登録して・・
これで、健司さんのスマホの最初の友達登録は私です!」
「なるほど、今後はこれでやり取りすればいいのかな?」
「そうですよ、試しに送りますね」
嬉々として使い方を健司に説明する。
「それにしても、PHSから電話帳をスマホに移行できないって不便でしたね」
携帯ショップでもアドレスの移動ができないらしい。
「まぁ、何とかするさ」
健司はこともなげに言う。
「でも、これから健司さんもついにスマホデビューです”
使い方を色々教えてあげますね!
何しろ、スマホを使うのは私の方が先輩ですから」
ニコニコと満面の笑顔でスマホを掲げる美月であった。
健司は、その笑顔を見ると何も言えなかった。
健司の仕事はSE。つまりソフトウェア開発。
プライベートな電話はPHSではあったが、仕事ではスマホ用のソフトウェアやシステムを開発したりしている。
スマホの機種も、契約のプランも・・・スマホの使い方も、実はかなり詳しいのだ。
PHSからスマホへのアドレス帳の転送は、店員にはわからなかったようだが健司は簡単にできてしまう。
”・・・でも、いまさら言えない・・・”
美月の得意げな笑顔に対して、秘密にしておくと決めた健司であった。
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