ミドルシーン・06「それぞれの想い・2」

   登場:一衣舞佳、任意


GM:これで、今調べられる範囲では全ての情報項目が開示されました。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●これまでに判明している、神出鬼没の怪獣の正体に関する情報。


・デルフの作業員の中には、FHの作業員として怪獣研究に関わっていた者がいた。

・FH作業員は1か月前(ジュードのOPで)、怪獣P.T.の《衝動侵食》に巻き込まれ、侵食率が高まっている。

・デルフ石油の一部作業員が怪獣ジャーム化しているらしい。

・詩子も1か月前の怪獣事件現場、目撃してるよね?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 残りの“見えている手掛かり”は「名簿に記録されていたFH作業員に会いに行く」ことです。


GM:「元FH作業員を探す宣言」をすれば、トリガーイベントが発生します。舞佳に別のシーン希望があるなら、それでも。


一衣舞佳:そうか、FHを追いかけなきゃいけないのか。お金(財産点)余ってるし、購入判定してもいっかな~、とか思ってたんだけど。他の事って何ができるのでしょう。


鬼頭哲太:他PCやヒロインとの交流とか……。支部長に辞表渡したり、ジュードパイセンに人生相談したりできます。


一衣舞佳:あっ、辞表も忘れてた。詩子とは絡もうとは思っていたけど。……そういえば、詩子とコミュすることにメタ的なメリットって何かあるのかしら。シナリオロイスでもう取得してるし。


一角ジュード:ないよ。侵食率は払えよな!


一衣舞佳:ぐぅうううう、今の侵食率61%。


GM:まだ安全圏ですよ。ほら、支部長なんて次の登場で制限80%エフェクト使えちゃいそう。


たつま(女):I(アイ)、もう登場はしたくねえ……(74%)。


一衣舞佳:うわーーーーどっちにしようなーーーー。詩子がFHならいっぺんにできるのに。


鬼頭哲太:サイコパスやん。


一角ジュード:真面目な話、浸食率調整のためにシーンを増やしたり、「うるせぇそんなもんしらねぇ俺はロールをするんだ」でシーンを増やしたりできる。ロイス自体は対面してなくても好きな時に取得できるしな。


一衣舞佳:あぁ、つまり「キャラ交流遊びをしていいよ」と?


GM:はい、TRPGは自由な遊びですからね。道から外れて辞職する自由。ジャームになる自由が保証されていますよぉ。


 ※みんなの同意のもと、シナリオが継続可能な範囲で。


一角ジュード:ちなみにキャラ交流だけなら行動権使うわけでもないので、そのまま購入判定チャレンジとかしても大丈夫だぜ。


一衣舞佳:じゃあ、はぐれた詩子を探しに行こうかな。詩子と交流しつつ、他のNPC・PCに対してロイス取得を目指したいです。特に登場PCがいなければ、叔母である加納さんに対して取得しよう。


GM:OK、舞佳は詩子がいそうな場所を捜し歩くことになる。


 詩子のいそうな場所――たしか14時からタイフォン2号の運転席見学会をやっているという話だった。


一衣舞佳:しかし、調査も詩子のことだし事件そのものにほとんど絡んでいってないな……。途中で自販機があれば、詩子の好きそうなジュースでも買っておきたい。


GM:ランダムでメロンソーダ、コーラ、0カロリーコーラ、カルピス、栄養ドリンク、イチゴミルクから決めようかな。いや……ここは栄養ドリンク固定。彼女は栄養ドリンクが好きだ。


 加納さんも飲んでるから。


一衣舞佳:ポチっとな。ドリンクを手に詩子を捜しにゆく。


◆ ◆ ◆


 そうして歩いていると、重機の運転席見学会の列を発見する。

 時刻は現在15:00、すでに列の大部分が履けた後だ。

 ビルの高さ8階分に相当する仮設の梯子を上ってゆくと、タイフォンの運転席に到着する。


 潜水艦を思わせる機密式の運転室で、数人の見物客が写真を取っている。

 詩子は……いた。運転席の窓辺の方に。折角の操縦席見学だというのに、詩子は窓の外ばっかり見ている。完全に上の空だ


四方木詩子:「………」 舞佳に気づいた様子もない。いや、気づいてて無視しているか


一衣舞佳:「お疲れ。」 背後から近づいて、冷えた小瓶を首元にぴたっと当てる。


四方木詩子:「うひゃいっ!? ……つめたぁ」


 少し不貞腐れた表情をしながらも、舞佳の差し出した栄養ドリンクを受け取った。


四方木詩子:「長かったね、トイレ」


一衣舞佳:「あー、うん。ちょっと混んでた」


四方木詩子:「間に合ってよかったね」 少し拗ねたようなポーズを見せるが、それほど怒っているときの詩子ではない事はわかる。


 「多いよね。学校の行事とか、そうやって途中で抜けてっちゃうこと」

 「去年は一緒に遊べる機会が少なかったから、今年の夏は一緒に過ごせればと思ったんだけどな。あーあ」

 「……ほんと。舞佳も美鳥さんも、みーんな、『コレ』だものね」


GM:怒っているわけではない。が、少し寂し気な笑みを浮かべる。


一衣舞佳:「……ゴメン。私が隣にいると、私に構って、楽しめないんじゃないかって思って。ほら、ここ……操縦席? なんて、スゴイじゃない」


四方木詩子:「舞佳と一緒に楽しみたかったんだってば……。ま、アタシはいつも通り、聞き分けよく『トイレ長かった』で納得してあげる」「そうだね。海の中でも作業するから完全気密性なんだって。最大17時間は酸素供給なしで潜れるとか……」 いつもの彼女の重機語りだが、いつもよりは少し切れが悪い。


一衣舞佳:「……そう聞くと、ちょっと怖いな。深海に閉じ込められるみたいで。……詩子?」


四方木詩子:「……あのさ。アタシが重機を好きになったのってね、美鳥さんの影響だったんだ」


 「10年くらい前かな。お父さんお母さんもいたころ」

 「美鳥さんの仕事場、緑丸清掃を見学させてもらってね」

 「美鳥さん、その頃は17歳くらい? 今の私たちと同じくらいの年齢だったんだけど、テキパキ現場で指示を出してまわってて」

 「それと、ビル掃除クレーンの運転席を見せてもらったり、こっそり乗せてもらったり」

 「それが、とても楽しかったし。美鳥さんがカッコよかったから。私も将来、美鳥さんの会社で働くんだーなんて言ってたんだけど……」


四方木詩子:「今じゃちゃんとした大学に進めーとか、どんどん別の進路に遠ざけられていっちゃって」 ふぅ、とため息をつく。


一衣舞佳:……緑丸清掃の入社、実質UGN管理下だしなぁ。


GM:表向けの業務として、普通の清掃業もやってると思うけど……レネゲイドには近くなりますね。


 「――力に、なりたかったんだ」


四方木詩子:「みんな、私のことを気遣ってくれちゃってるけど――皆が傷ついてるのが分ってるのに力になれないの。ちょっとつらいッス」「……なんてね」


一衣舞佳:「……違うよ。詩子、違う。私も、美鳥さんも、詩子からちゃんと、力もらってるよ」


 「それは、詩子の思うような形とか、方法じゃないかもしれないけれど……」

 「詩子に励まされたり、愚痴を言ったり、くだらないことで笑ったり……」

 「そういう力って、すごく大切なんだよ」


一衣舞佳:「美鳥さんも、詩子のことを遠ざけたいとか、自分のところで働いてほしくない、というのではなくって……。危ない仕事をさせたくないとか、見聞を広めてほしいとか、そういう意味で進路を勧めてるんじゃないかな」


四方木詩子:「…………。分かるよ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

たつま(女):これひょっとしてI(アイ)が女性体で加納さんに馴れ馴れしく接触したから、更に詩子さんが加速した……?


GM:……いや、うん。全く違うとは言い切れないかなぁ。


一衣舞佳:「私と同年代の女の子のことは頼っているのに、私は……?」みたいな?


たつま(女):ち、ちがうんだ! 俺は君に少し暴走して欲しかったけどそういう方向じゃないんだ!


鬼頭哲太:責任を取って辞職されます?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


四方木詩子:「でもね。最近、すごく不安になるんだ。2人や、みんなが、私の知らない遠い場所に行っちゃって。そのまま帰ってこなくなっちゃうんじゃないかって。どうしようもない事情で、お別れすることになった時。その場に居合わせられない。それって……すごくかなしいじゃない」


一衣舞佳:「……そうね」


四方木詩子:「きっと、『孤独』な気持ちになってしまうと思う。最初から1人でいれれば、平気だったのにってくらいに」 舞佳から目をそらし、窓の外に視線をやる。


 タイフォンの足元では、緑丸清掃の制服を着たスタッフたちが会場整理の仕事をしている。


四方木詩子:「私、もう少しここ見てる。後で合流しよう」


一衣舞佳:「……うん」


 一人にしてほしい、という言外の思いに、何もできずに頷いた。


 「―――後で合流したら……舞佳の友達、紹介してよね」


四方木詩子:「……いや~~~~~、クラスで全然周囲とつるまない舞佳の友達か。興味あるなぁ~、アタシ!」


一衣舞佳:「……? ……ごめん、誰のこと……?」


四方木詩子:「『哲太くん』、だっけ?さっきの」にへらー


一衣舞佳:「……! あぁ!」 表情がわずかに華やぐ。


四方木詩子:「そうか……1年下の学年かぁー。気づかなかったな」うちの学校にいたかな?どこ学?どこで知り合ったのかな?」


一衣舞佳:「違う違う、バイト仲間」


四方木詩子:「きっちり、インタビューするからね!」


一衣舞佳:「聞け!」 チョップ!


四方木詩子:「いったァッ!?」


鬼頭哲太:僕も彼ピッピと思われて、暴走加速に加担していたんですね。


たつま(女):おい、どうするよジュード。若いのが恋愛経験豊富だぜ。I(アイ)たちなんか浮いた話有るか?


一角ジュード:ないぜ!!!! 妹分はいるけど……そのぐらいだぜ!!!!


一衣舞佳:「変に勘ぐったら、哲太君にも悪いでしょ。ただでさえ……。…………ただの、職場の、バイトの子! 以上!」


GM:ぎこちないながらも、少しだけいつもの調子を取り戻した2人のやり取り。気づけば君たちは、周囲の見学客の視線を集め始めている。


一衣舞佳:注目を浴びるのは好きではないので、足早にその場を去る……。


四方木詩子:「(また、あとで、きくぜ)」のゼスチャー。


一衣舞佳:「(おくちちゃっく)」のジェスチャー。


四方木詩子:「待ってるから……ちゃんと戻ってきて説明してよ。――約束だからね」


一衣舞佳:「……うん」


 君は守るべき日常、帰るべき道標を再確認した。


◆ ◆ ◆


GM:……という具合で締めようと思います。


一衣舞佳:ウィッス!


GM:シーンエンド。


◆ ◆ ◆


一衣舞佳:楽しかった……。でもリアルタイム進行のTRPGってガンガン時間食いますね……。悪ィな、みんなの30分、私の交流が食っちまった。次は恋愛ロールを買うといい。


一角ジュード:PC1のオッサーーーーーーーン!!!


GM:青春屋! ロイスの取得などがあればどうぞ。


一衣舞佳:加納美鳥に対して、ロイスを取得します。詩子の保護者ということで、ポジティブは「信頼」。彼女に寂しい思いをさせているので、ネガティブは「不信感」。表はポジティブで。


GM:OK。


たつま(女):だが、この青春はなんというか爛れてないか? どんだけ複雑な四角関係なんだ?


一角ジュード:やはり俺も職場のお兄さんとしてエントリーするべきだったか……。


鬼頭哲太:僕も侵食60%台に乗せるために出てもよかったな……(ややこしなるわ)。


GM:「アタシの趣味を知っていて、テスターのお兄さんのことを黙っていたのね……!」 この裏切り者(ダブルクロス)!


 そんなところで今回はここで一時中断、次回に続きます。

 ……胡乱な予告の割には、真っ当にダブルクロスになってる気がしますね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る