オープニングシーン・04「老兵、動く」

   登場:八乙女龍馬


GM:お待たせしました、支部長のオープニングです。


八乙女龍馬:おう、出番だな。(侵食ダイスを振って)……10上昇していきなり45%だ。


一角ジュード:なんなんだおまえら。


一衣舞佳:(笑)


鬼頭哲太:ここまで侵食ダイス10、10、10。


GM:TSの影響で若者組判定されたかー。


一角ジュード:10出しすぎだろ! サイコロ交換しろ!


GM:支部の道場で霧谷さんから調査依頼を受けるシーンのつもりですが、モブのサラマンダー訓練生に稽古を付けるシーンから始める感じでいきましょうか。


八乙女龍馬:頼むぜ。


◆ ◆ ◆


 ――T市内の閑静な住宅街。

 その東方面のはずれには、漆喰の塀で囲われた広い庭を持つ、大きな日本家屋が存在する。屋敷門の横に掛けられているのは「八乙女流」の看板――古流武術の道場らしい。随分と昔から存在する道場のようだが、大人数の門下生がゾロゾロと出入りするような様子は見受けられない。


 よく屋敷を出入りしているのは、黒スーツにサングラスの男たち……。極? もしかして極なの?


 もっとも、ご近所にそんな事を気にするような住人は「存在しない」

 この道場の周囲一帯は、元は“委員会”の所有地――――現UGN・T市第2支部の管理用地なのだから


◆ ◆ ◆


GM:木板張りの道場内で、2人のオーヴァードが畳3枚分の距離を置いて向かい合う。


 片方は、最近オーヴァードとして覚醒したてのUGN訓練生。真新しい胴着を着た金髪の不良少年。相対するのは、T市第二支部の支部長――――八乙女 龍馬。


不良少年:「おう、八乙女センセイよ教官に、この道場でオーヴァード戦の訓練を受けろって言われてきたんだけどよ……“本気(マジ)”にやっちゃっても大丈夫なのか?」少し不安げだ


八乙女龍馬:「おー、本気でこい本気でこい」


 そうやって不安に思うのも仕方がないことなのだろう。それくらい目の前の男は何と言うか弱弱しかった。

 目は白く濁りはじめ、越は曲がり、手足は枯れ木のよう。鼻をつく甘い匂いは腐臭か……。そんな臭いがするということは、彼はレネゲイドウィルスすらも衰え始めているということに他ならない。


八乙女龍馬:「見たとこまだ“新人(シャバゾウ)”だろオメー? 多少の実戦(マニュアル)経験したところでな」「まだまだするべきことは沢山――」


 「―――あるんだぞっと。」


 そう思っていたところで意識が一瞬途切れ、訓練生は空を飛んでいた。

 支部の屋根が『下に』見える。


不良少年:「…………。―――――――は?」


 文字通り、目にもとまらぬ早業――これが洗練されたハヌマーン・シンドローム!


不良少年:「がっはぁ!?(なにが、起こりやがったんだぁ……!?)」ズダァンッ!


鬼頭哲太:不良少年が車田落ちしてる……。


不良少年:「く、首が飛んだかと思った……っつーか、視界が、意識が一瞬抜け出てた」「なんか裏技でも使ったのかよ、センセイ……イテテ」


八乙女龍馬:「裏技ってもんじゃねえ、単なる技術だ。オルクスの力を使わなくてもレネゲイドってのはこのくらいまでならできるのさ」「まあ、I(アイ)もいい加減トシだしこの体じゃあ1分動ければいい方だが、腕や足がどう動くくらいはしっといて損はねえぜ?」


不良少年:「手足の動きって……こっちは動かす前にぶん投げられたわ!」


 「意味わかんねぇ―……こんなので本当に訓練になるのか…?」


 そう訓練生がぼやいているところで、道場の壁に取り付けられたモニターが点灯。

 画面右上に「LIVE:KIRITANI」の表示……UGN日本支部の支部長室からの直通回線だ。

 モニターの向こうには穏やかな笑顔を浮かべた男、UGN日本の支部長――霧谷雄吾の姿が映る。


霧谷雄吾:『――御年87歳にして、なお精彩を増す技術。お見事です』『熱への耐性を持たずに、サラマンダーシンドロームを相手取ったレネゲイドコントロール訓練をこなす……ここまでの技術の持ち主は、UGN全体を見てもあまりいないでしょうね』


八乙女龍馬:「よー、霧谷さん?お前さん騙したなオイ?」 画面を見て多少不機嫌だ。「サラマンダーの部下が欲しいって言ったがよ、俺は水とお湯を自在に出せる奴を要求したはずだぜ?」 そう言いながら指をクイッと上げて訓練生をもう一回転ばせとこう。


不良少年:「ああああーっ!?」


 この支部の訓練を受けたチルドレンの声を集めてみました。

 「なんかワカラン殺しされた」「リザレクトの制御は……うまくなったかな」


霧谷雄吾:『騙した、とは? UGN日本支部は約束通り、サラマンダーシンドロームのチルドレンを訓練に派遣しています』


八乙女龍馬:「まあ、訓練位はしてやるけどよ……I(アイ)の事情知ってんだろうが?死活問題なんですがねえ~~~?」やっぱりもう一回ブン投げとこう。


不良少年:「ぎゃあああああ!? 俺も日本支部に騙された被害者ぐはあァー!?」


霧谷雄吾:モニター向こうには、変わらぬ柔和な笑み 『彼らは、水とお湯を出すことはできますよ』


 『データ上、あなたのもとに送られたサラマンダー・シンドロームの持ち主は皆、熱も冷気を操れる適正を有している』

 『そして、あなたはそのコントロールを教えることができる能力を有している』

 『少々時間はかかりますが。なにも嘘は付いていません』


八乙女龍馬:「I(アイ)がそういう方向に鍛え上げるノウハウを持ってるわけねえだろうが! 炎を出す奴なら炎を早く精密に出せる位はしてやるがな! それを氷にするのは専門外だ!」


霧谷雄吾:『できます。なぜならチルドレンたちと同じ年齢に若返ったあなたの可能性も無限大なのですから』 できます。やってね。


一衣舞佳:霧谷さん、やり手だなぁ。これ、後進の育成と教官役の発掘を同時にやってるのか。


霧谷雄吾:そんな感じ。UGNはとにかく人手が足りない。『UGN本部としても、あなたには前線で無理せず、後進の育成を務めてもらいたいというのが本音ですが……』 前線に出して貴重な知識を失いたくないし大切にはしているよ。


一衣舞佳:現場で出世するほど前線から遠ざかるっていう皮肉だ……。


八乙女龍馬:「せめて、どっちの温度も操作できるか、水を出せる奴を連れてこい! 『泉の件』もあるから教える位はやってやるからよ!」


一角ジュード:サラマンダーが水出すの、氷を解かすわけだからワンクッションいるんだよな。


霧谷雄吾:『体質改善に関する代案は、私の方から研究部門(アール・ラボ)に掛け合ってみましょう』


八乙女龍馬:「ったく……それとお前! 受け身位はとれ!バロールやオルクスの初見殺しはこの比じゃねえんだぞ! 異常を感じたらすぐ動け!」


不良少年:「ひえええええええっ!?(氷出せるようにならないとオレ、死ぬかも…)」


霧谷雄吾:『氷も出せるはずなんですけどねぇ……。ところで、話は変わるのですが――――今から一ヵ月前。A県山中で“ドラッグレーサー”と交戦したという巨大ジャームの件』


  『T市支部から上がってきていたレネゲイド事件の報告書と、回収されたジャーム体組織の解析結果が出ました』


八乙女龍馬:「あん?それを聞かせるってことは……何か分かったか?」


GM:モニターに、ウィルスの電子顕微鏡拡大図が表示される。


霧谷雄吾:『巨大ジャームの体組織サンプルを調べたところ……「既存のレネゲイドとは異なるウィルス」の持ち主であることが判明しました』


八乙女龍馬:「特殊なレネゲイド……I(アイ)の同類ってことか。厄ネタじゃねぇか」


霧谷雄吾:『それに加えて―――――』


GM:モニターに、A県T市の地図が表示される。地図の各所には「赤い×」が付いている。龍馬には一目で分かる。この×印はレネゲイド事件が発生した現場だ。


 『これは複数支部のデータを統合し精査した、この一か月間のより詳細なハザードマップです』


GM:小さな×マークが……列を成すアリのように「山中から港エリア」にかけて伸びている。最新の日付では、×マークの発生店は、湾岸エリアの埋め立て地に集中しています。


八乙女龍馬:ふむ……。


霧谷雄吾:『……巨大ジャームは、生存している可能性があります』


八乙女龍馬:「ふん……ハナっから分かってたことだろ。自滅したとはいえあそこまで綺麗に死体が残らねえわけがねえからな」


 「で、湾岸エリアか。そこまで絞れりゃI(アイ)の方からツテをたどることもできるが……目標は巨大生物だろ?」

 「I(アイ)は戦闘向きじゃねえ。“ドラッグレーサー”は当然の事、あと二人ほど後詰めが欲しいぞ?」


 ノイマンの頭脳を働かせる――数値(データ)を入力、必要な戦闘力を算出してゆく。不明なデータと誤差は、長い戦闘経験から得た直感で埋めればいい。



霧谷雄吾: 『そうですね。抑えにはドラッグレーサー。加えて狙撃犯から1人。そしてオフェンスが1人必要でしょう。できればサラマンダー・シンドロームかキュマイラ・シンドローム……。仕掛人(シャンブルス)と零点下(ゼロアンダー)、この2名を優先して動かすことは可能でしょうか?』


八乙女龍馬:「シャンブルスは分かるが……ゼロアンダー? アイツは確か後方担当じゃなかったのか? オフェンスもできると?」 知り合った経緯が経緯なのでよく知らないんだな。資料を寄越せとジャスチャーするよ。


霧谷雄吾:『あなたの第二支部のデーターベースに存在するはずです』 さては前任者、引継ぎに失敗したな。


 『……湾岸エリアにはT市のライフラインを担う火力発電所やデルフ石油の関連施設が集中しています』


 『大きな被害が発生した場合、都市機能がストップしかねません』

 『今回の作戦は、複数支部の合同で進める予定です』

 『第2支部の皆さんには、周辺の警備体制の強化。レネゲイド反応の出どころの調査をお願いします』


八乙女龍馬:「了解。ゼロアンダーが使えると判断したらすぐにとりかかる」 そう言いながら訓練生の方を見て……さて、と。


 「そういうことだ。しばらくつきっきりで見る予定だったが悪いな」

 「さっきのような攻撃を受けることができるシュミレーションルームを借りとく」

 「そこ、訓練してくれ」


八乙女龍馬:「まあ機械だからちょっと手加減はヘタだが……若いし、大丈夫だよな?」


不良少年:「お、押忍!(爺さんよりはマシかな……)」


八乙女龍馬:手じゃなくて針とか鞭が飛んでくるけど、若いし大丈夫だよな。


GM:ダメそう!!


◆ ◆ ◆


GM:……こんな感じで、シーンエンドです。


一衣舞佳:このおじいちゃんに辞表出したら、空中舞うどころじゃ済まなそうなんだけど。


八乙女龍馬:舞佳、超貴重な人材ですよ。何せこっちが水筒と水さえ用意すれば現状をどうにかできそうな才能の持ち主だ。そうすりゃI(アイ)も、もう一度前線に……。


一角ジュード:「支部長! 最近は……持ち歩き式のケトルなんかもあるぜ!!!」


GM:上層部としては龍馬が前線に立てない事より、その経験や知識が失われる事の方が痛いんで。霧谷さんへのシナリオロイスはどう取りますか?


八乙女龍馬:「P:連帯感/N:食傷」で連帯感を表に。毎度、面倒な仕事を回しやがる。


GM:OK。ではオープニングシーンはこれで終了です。


◆ ◆ ◆


一衣舞佳:しかし、「アンニュイな退職希望の前衛」、「何故かやたら強いオペレーターの兄ちゃん」、「ノウハウ活かして隠居させたい老兵」、「睡眠不足っぽいメモ魔の狙撃手」、かなり癖のあるチームアップなのでは。


鬼頭哲太:事情を知らないモブエージェントからはどう映ってるんでしょうね。


一角ジュード:俺は多分、支部のみんなには「声がデカいオぺーレーターの兄ちゃん」だと認識されている。普段(ロボの)出番が無い。


八乙女龍馬:I(アイ)も前線に出てぇんだが、こうして新人の教官に押し込められてる。


鬼頭哲太:僕はどうなんでしょう。


GM:哲太くんは癖のない能力だし即席のチームアップにも向いた能力のチルドレンだから、引く手数多だと思いますよ。別の支部の仕事にもたまに駆り出されたりしてるはず。


一衣舞佳:キュマイラ/サラマンダーはどうですか!!!!


GM:精密性の低そうなサラマン……横には並びたくないな。単身前線を張らされたり、爆弾みたいに投入されたりみたいな運用法?


八乙女龍馬:前衛なのに目立った活躍なしってことはアレだ。舞佳が熱や冷気でジャームをけん制してるところを、狙撃班が仕留めてんだろ。


鬼頭哲太:クマとかイノシシを追い立てる狩猟犬。


一衣舞佳:絶対私じゃなくてもいい役割……。


GM:都市の中心から外れたサブの遊撃・予備隊支部に集まった変人奇人か。特車二課だな。


一角ジュード:か、閑職……!


鬼頭哲太:逆にこんなメンツで前線に行くから、とんでもないポテンシャルを秘めていると思われているのでは。特攻野郎Aチームとかアルマゲドンみたいな。


一衣舞佳:チームで唯一、私だけ特殊な才能を持ってない。いいよなぁ……みんな、能力を活かした自分の“居場所”があってさァ……!


GM:戦えるオーヴァードというだけでUGNとしては得がたい人材なんですよ。UGNの人手不足はかなり深刻な問題として設定されてますし。


一角ジュード:具体的には、覚醒したての高校生を保護したその日のうちに即戦力として現場に送り込むくらいには手が足りないな!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 UGNに所属し前線で活動するエージェントの大部分は一般人エージェントです。オーヴァードのエージェントでも、イージーエフェクトくらいしか使えないなんてことはザラ。「擬態能力使えます!」「望遠鏡並みの視力、以上!」とか。作りたてキャラでも、PCレベルで活躍できるオーヴァードは全体の一握りです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


一角ジュード:一般高校生に「人手足りないんですよ。悪のオーヴァードと殺し合いしてくれませんか?」って持ちかける組織、まぁヤバいな。


一衣舞佳:ブラックバイトか……。


鬼頭哲太:やりがい搾取とかする。


GM:いやでも、各国の支部が人類の危機にギリギリ対応してる状態なんで……なりふり構ってられないんですよ。ミュータント同士協力しましょうよ。


一角ジュード/UGN幹部:「君が戦わなかったら君の大切な日常が危険に晒されるんだよなぁ……悪のオーヴァードが日常を脅かすんだよなぁ……いやこれは全然関係ない話であり選択は君にゆだねられているが……」


一衣舞佳:(泣きながら辞表を破り捨てる)


GM:本編後半までとっときなさい!! そんな感じで……同じ職場の仲間同士、思うところはあるでしょう。PC間でもロイスを結んでください。


鬼頭哲太:PC①→②→③→④→①の順に取ればいいんですね。グルッと一周。


GM:そうそう。


一衣舞佳:ジュードさん仕事熱心そうだし、ポジティブは「誠意」かな。ただまっすぐすぎて、自分とは違うと思いそうだからネガティブは「隔意」。表は「誠意」にしよう。


一角ジュード:ジュードは支部長に「P:尊敬/N:憐憫」で取るぜ。すごい人だけど、厄介な体質に悩まされててかわいそうだなぁって思う。「尊敬」が表で。


八乙女龍馬:哲太はまぁ「有為」だよな。「P:有為/N:不安」かな。優秀な人材だけど覇気が足りなすぎだし大丈夫かなって。


鬼頭哲太:一衣舞佳さんには「P:連帯感/N:無関心」で取ります。同年代のエージェントなので……「連帯感」が表です。


GM:把握。ミドルフェイズに移りましょうか。

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