オープニングシーン・03「お仕事、お疲れ様です」

     登場:鬼頭哲太


GM:お次は哲太君のオープニングです。チルドレンのお仕事風景。いつもの現場。清掃局の加納お姉さんとの交流を描くシーンです。


◆ ◆ ◆


 ――時刻は深夜。場所はT市湾岸の工場地帯。

 今から数十分前、キミの携帯端末にUGNから連絡が入った。

 『湾岸エリアの製油工場内にジャーム出現。応援を求む』


GM:UGNチルドレンの日常――キミは装備を整え、現場に駆け付けたところだ。通報のあった工場前には、緑丸清掃のワゴン車が停められている。「清掃作業中」と書かれた仕切りが立てられ、工場内の様子を覆い隠していた。


鬼頭哲太:「……くぁ……じょ、状況はどうですか……?」 眠い目をこすりながら確認を取る。


GM:君の呼びかけを受けて、停められていたワゴン車からフォーマルスーツの女性が顔を出す。


 「哲太クン、こんな時間にお疲れ様。非常口の方に回ってちょうだい」


 彼女の名前は加納美鳥(かのう・みどり)。

 緑丸清掃の女社長で、レネゲイド事件の後処理を担当する部門の局長を務める才媛。チルドレンの仕事でお世話になっている顔なじみだ。


加納美鳥:「戦闘はもう終わってるのだけれどね。ジャームは既に行方をくらましたみたい。せっかく装備を整えて来てくれたのにごめんね」


鬼頭哲太:「いえ、加納さんこそお疲れ様です……。行方を……そうですかぁ……」


加納美鳥:「えぇ、ほんと今日の現場はお疲れ様だわ!」


鬼頭哲太:「早く終わらせて寝ましょうねぇ……」


一衣舞佳:夜勤現場だ…!


加納美鳥:「早く終わらせて、か………。今回は、徹夜仕事になりそうよ」


鬼頭哲太:「えぇー……加納さん全然休んでないじゃないですかぁ……寝ましょう?」


加納美鳥:「私もすぐ寝たいけど。工場内の被害を見ちゃうとねぇ」現場の警戒と測量、ちょっと手伝ってもらえる? 清掃局のスタッフだけだと手が回らなくって」


鬼頭哲太:「分かりました……ちょっとだけ……頭すっきりさせるのでぇ……」


 加納から現場撮影用のカメラを受け取りながら、左の手を見やる。

 寝る前に書いたメモ書きが書き込まれる手の甲をひっくり返し、視線は手首へ。


 「……。分かりました」


 目の焦点が定まった。


GM:おぉ、UGNチルドレンらしい仕事前のルーティーン。


一衣舞佳:仕事モードに入るためのルーティン、メモの内容が伏せられていて不穏さを残しつつも「やり手の技術職」って感じでクール。


鬼頭哲太:「こうしないと頭にもやがかかったみたいで。なんでやらないといけないかは覚えてないですけど」


加納美鳥:「独自のレネゲイドコントロール法かしらね? 狙撃班に向いた才能だと思うけど……。行きましょか」



 ――案内された工場内は、『怪獣』が暴れまわったかのような惨状が広がる。

 ひしゃげた金属パイプ、粉砕された機械、なぎ倒された金属タンク。

 床には直径10mにもなろうかという大穴が空いていた。基礎から崩落しており、深さも不明だ。


加納美鳥:「一部、壊れた機械から出火した後もあるけど、大部分は力で圧し潰されている……。爆発事故じゃない。レネゲイド事件ね。数十分前、駆け付けたエージェントがワーディング反応を観測しているの」


鬼頭哲太:「キュマイラあたりですかね?」


加納美鳥:「かもしれないわね。爪で裂いたような跡もあるし……今から私たちは『ガス漏れ』とか『老朽化による事故』に仕立て上げなきゃいけないのだけどね」


八乙女龍馬:またガス会社が犠牲になるのか。


 現代異能物のお約束。


加納美鳥:「はぁーっ……。今回は特別気が重いわ! UGNのスポンサー企業、デルフ石油の工場なんだもの。修繕に、補償にで、現場もオフィスも戦場よ。こうして私も現場に出てくることになっちゃったし!」


鬼頭哲太:「……大変ですね。いつも僕たちの尻ぬぐいばっかりで」


GM:「あなたは、いつもうまくやってくれてるわよ」 溜息を短く吐くと、きゅっと眉を引き締め、キビキビと指示を飛ばし始める。


 「1班と2班は作業者の安否確認。3班は情報封鎖」

 「バックアップチームは第一支部に連絡。モルフェウス・シンドロームの人員を確保して」

 「哲太クンは……工場内の機材の被害箇所を中心に、撮影お願いね」

 処理班の作業員たちは、慣れた様子で工場内に散ってゆく。


鬼頭哲太:「分かりました」 カメラを手にぺたぺたと工場の中に入っていく。


 しばらく、ゆるーい夜勤風景が続きます。


加納美鳥:「やっぱり時間かかりそうねー。哲太君、夜食何食べる? 奢ってあげるわ」


鬼頭哲太:深夜の湾岸の工場地帯に届く出前、ありますかね。


GM:イリーガルのハヌマーン配達員が音速で出前お届けしてくれるとか。UGNカヴァー組織、オーヴァー・イーツ(嘘)。


一衣舞佳:届いたラーメンが粉々になってそう。


GM:サラマンダーのエフェクトで、店を出た時よりもアツアツの状態で料理を提供!!


一衣舞佳:冷やし中華、温めました。


鬼頭哲太:この時間、お店やってるか怪しいですし。「コンビニで売ってるトルティーヤがいいです。一緒に食べましょう」


加納美鳥:「後で一緒に買い出しね。休憩時間に気分転換に車出しましょっか」


 ――作業を始めて、1時間後。

 哲太が写真を撮影している横で、加納は壊れた機材をリストアップしながら補償の計算を行っている。


 「……哲太クンは、最近どう? チルドレンとして実戦に出るようになって、ずいぶん経つと思うけど」「任務には慣れてきたかしら……なんて」


加納美鳥:「私たち大人が取らなくちゃいけない責任を、あなたたち子どもにに押し付けておいて、傲慢な質問になっちゃったけど」


鬼頭哲太:「……なんとかなってます。僕は後ろから撃つだけなので前衛の人よりはマシですし」


GM:前衛よりはマシ。UGNのチルドレンとして戦うのは日常であり当然という風な哲太に、加納は何か口にしかけたが、少し黙ってしまう。


 (――そもそも、あなた達は前衛に立つような責任なんか背負わなくてもいいのよ)


加納美鳥:「私は、もういい大人だからね」「哲太くんたちには貴重な10代で、もっと夏のレジャーに出かけたり、高校生らしいことをして欲しいのよ」


鬼頭哲太:「……でも、夏のレジャーとか行く相手いないです」


GM:「スケジュール空いたら緑丸清掃(ウチ)の慰安旅行、付いてくる?」


鬼頭哲太:「……慰安旅行、行きたいです」


 『カシャリ』と、カメラのシャッターを切って。


鬼頭哲太:「僕は加納さんにもっと楽をしてもらいたいと思ってます。そのために頑張ります」


加納美鳥:「…………。んん~~~~、健気ね!素直な子!」「いいのよ!無理は大人の仕事!でも、ありがとうねぇ~~」 哲太の首に腕をまわして、ワシワシと頭を撫でる。


鬼頭哲太:「大人でも限度が……わぷっ」 撫でられたまま撮ろうとして写真がブレる。


加納美鳥:「新鮮だわー。ウチのとこの子なんか最近はすっかりスレちゃって。対応が塩なんだもの」


鬼頭哲太:「ウチのとこの子って加納さん結婚されてましたっけ」


加納美鳥:「えっ?違う違う」「もー、私の事、子供産んだように見えてるの?」背中をバシバシ叩く。 「姪っ子と、同居しているのよ」


鬼頭哲太:「あたっあたっ。あぁ、なるほど……」


一衣舞佳:この加納さん、何もない床を行ったり来たりするルンバをじっと見つめながら、ぼんやり缶ビール飲んでそう。


GM:二次創作で見かけるミサトさんみたいになっちまった。


加納美鳥:「最近はちゃんと家に帰って、顔を合わせれてないけどね……」「ほんと、保護者失格」


鬼頭哲太:「……失格じゃないですよ」


加納美鳥:「ありがと。哲太クンのお陰で少し元気出たわ。早く仕事終わらせて、スタッフ全員家に送り返してやらないとね」


鬼頭哲太:「僕も頑張って加納さんを帰らせますね」


加納美鳥:「よし、まかせた!それなら、二階の方も撮影しておいで!」


鬼頭哲太:「分かりましたじゃあ二階に……あ、そうだ加納さん」


加納美鳥:「なぁに?」


 「僕頑張ります。僕、戦場汚しません。早く、綺麗に倒せます」

 「だから」「もし、スケジュールあったら……夏らしいところ連れて行ってください。姪っ子さんも一緒に」


鬼頭哲太:「それじゃあ、二階行ってきます」


GM:二階に上がってゆく哲太を、無言で見送る。手帳で口元を隠したまま、考え事。


 「……。将来有望ね」

 「………16、かぁ~~~~~~」


 清掃局によるレネゲイド事件の後処理は朝まで続き、始業時間には工場は機能の大部分を取り戻した。

 事件目撃者は、UGNが運営する医療機関で記憶処理を受け、清掃は完了。

 物的被害・大。作業員2名が行方不明――報告書には、そう記されている。


◆ ◆ ◆


GM:ここでシーン締めです。加納さんへのシナリオロイスをどうぞ。


鬼頭哲太:これ、シナリオロイス通りでなくて大丈夫なんですよね? 「〇P:慕情/N:憐憫」で。


GM:ンン~、“甘い(スウィーツ)”。


一衣舞佳:気だるげな擦れたショタと、くたびれた面倒見のいいおね。これが老舗の名店が出すおねショタですよ。ネットを使えば、これがご家庭で楽しめる。好い時代になった。


GM:かがくのちからってすげー!


一角ジュード:そういや哲太君、侵蝕率ダイス振ってないな。


鬼頭哲太:あ、忘れてましたねすみません。振ります(ころころ)……出目10振って侵蝕率47%に。馬鹿! いちゃついてあがってんじゃあないよ。


一角ジュード:若者、侵蝕率がよく伸びる。これが若さか……。


GM:30を過ぎると基礎侵蝕が下がりだし、昔ほど身体がレネゲイドを受け付けなくなる。


鬼頭哲太:脂っこいものダメになるみたいに言われても……。


一衣舞佳:(通販風に)「このホモドルルンリンクを飲めば年齢を感じさせない侵蝕率が手に入るんですよぉ」


一角ジュード:ジェネシフトでもしてろ! まぁ実際若いほうが、浸食率は変動激しそうではある。どうしたって精神的に不安定だし。


GM:不安定なサラマンダー女子高生とか、ますます野に放つ理由がありませんねぇ。


一衣舞佳:ヒェッ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る