第4話

パチリ。




 目を開けると見慣れた天井。そして、カーテンの隙間から差し込む光。


 そのまま手探りで枕元に置いた時計を手に取る。時刻を見ると、アラームを設定している時間よりも30分早い時刻が示されていた。


 いつもなら、アラームの音で飛び起きるのに……。何だろう。すごくスッキリしている。




 それに……何か懐かしい夢を見ていたような気がする。とても温かくて、心地よいそんな夢だった。


 内容までははっきりと思い出せないが、この穏やかな目覚めが、良い夢を物語っているように思う。








「おはようございます」








 そんなことを考えながら、天井をボーッと見つめていた時目の前に現れた彼女。




「ああ、おはよう」




 特に驚くこともせず、普通に挨拶を返した俺に、彼女ミユの方が少し驚いているようだった。






「挨拶、返してくれるんですね?」




「そうだね」






 俺のその言葉に、ミユは本当に嬉しそうな笑みを浮かべる。そして、鼻歌を歌いながら、キッチンの方へと消えていった。


 体を起こし、うーんと伸びをしたところで俺はあることに気がつく。そして、立ち上がると、先程彼女が消えていったキッチンへと向かう。




 彼女は俺に気がつくと、首を傾げた。






「祐太さん?どうしたんですか?」






「いやっ……さっきの鼻歌」






「鼻歌……?」






 彼女は、更に首を傾げる。




 その様子を見ながら、俺も悩んでいた。何だろう。ミユがふいに口ずさんだあの鼻歌、どこかで聞いたことがある。普段なら、そこまで気にしないのだが、今回は、あの鼻歌が彼女の謎を解く1つの鍵になるような気がしてならない。




 どこで聞いたんだろう?


 そのことを思い出す頃には、もしかすると彼女の正体を暴いているのかもしれない。




 そう考えると……少し寂しい気持ちになる自分がいた。






 彼女が突然この家に現れてから、既に一週間が過ぎていた。


 段々とこの状況を受け入れ始めた俺は、ただ単純にこの生活を楽しんでいた。彼女と過ごす日々は、それなりに充実していたからだ。




 他愛もない話をして笑い合って、時には軽い言い合いもして……こんな日々が続けば良いのになんて考えてしまった。




 でも、ミユは2週間しか俺の側にいることはない。そして、彼女の正体を暴くことが出来なかったその時は……。今は、別にその結果になってしまっても仕方がないと思える。


 それくらい彼女の存在が、俺の中で大きくなり始めていた。






 そんなことを考えていると、再び耳に入ってきたメロディー。




 彼女は、目を閉じてあの鼻歌を歌っていた。


 どこか切ない、優しいメロディー。






「ミユ、それって……」






「大好きな歌なんです」






 彼女はそう言うと、ニコッと笑みを浮かべる。




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