第4話 東日本大会戦③

 海上で激突する神霊団と怨霊群。

 守る神霊団と攻める怨霊群という構図だ。

 神霊団の足許、水底深くで九頭竜が眠っている。

 その九頭竜に黒色の怨霊が体当たりしては吸収されていく。


鳴神なるかみ!」


 ホソデの腕が白く光り稲妻を放った。

 続いてナガテがくるりと舞った。


「あまつ風


 ナガテが呪誦ずしょうすると無形の刃が広範囲に怨霊を削っていく。


「やるではないか、我らも負けられぬの」


 松原のネビキが感心して数万の一族を見渡す。


「吹けよ松籟しょうらい!」


 無数の松葉が壁となって怨霊をくいとめる。


「さすがは松原翁。空の守りはよしとして問題は……」


 大天狗がつぶやき海面を見おろすと水柱が立ちのぼり、傷ついた水虎やみずちが吹っ飛ばされるところだった。


「さすがにこれだけの牛鬼は止められぬか」


 クモに牛の頭をつけたような牛鬼が次々と押し寄せてくる。


「やらせないわ!」


 ホソデが黒い獣に変じて海に飛び込む。


いか!」


 ホソデから電撃が駆け巡り牛鬼の大群が弾けとぶ。

 しかし多勢に無勢たちまち囲まれてしまう。

 そこへ大天狗が羽団扇を一閃した。

 海が割れ水から転げ落ちた牛鬼にカラス天狗たちが殺到する。


「者ども遅れをとるな!」


 大天狗が叱咤し羽団扇をふるう。

 クレーターのような大穴が空き溢れ出した牛鬼に神々の鉄槌が下される。


「これでなんとかなるか……ぬっ!」


 大天狗の足首に触手が絡みついていた。


「まさか海妖か?」


 気味の悪い軟体生物や巨大な海棲生物がカラス天狗たちに襲いかかってきた。


「万の生贄をやると言ったら喜んで力を貸してくれたぞモウ!」


 牛頭のガモンが海竜の背で高笑いしていた。

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